第306話 妹の持ってきた問題……

俺「で?バンドがどうしたって?」


妹「うん……学校に申請した時、女子だけのバンドって意味でガールズバンドってジャンルにしたんだけど」

まぁ、そうだろうな


俺「それで?」


妹「ゲストメンバーを呼びますって追加で申請したら、女子以外は認めないって言われちゃって……」

まぁ、ガールズバンドって申請したなら

そうだろうな


俺「それで、ゲストは女子ですって言っちゃったのか?」

なんて無駄なことを……


妹「私じゃなくて、他の子なんだけど……それで申請しちゃったから、おにぃが女子として出る事になっちゃったの……」


俺「今からでも遅くないから、ちゃんと説明してきなさい」

そんな事俺に言ってもどうしようもないだろ?


妹「もう、遅いの……。今から変更すると、出場権も無くなっちゃうから」

ずいぶんと融通が利かないなぁ


俺「残念だったな」

諦めろ


妹「折角練習したのに……」

泣きそうな声だしても無駄だぞ?

俺は女にはなれないからな


南城「それって……」

可哀そうだって言うんでしょ?

でも、嘘は良くないからな


南城「もしかしたら、問題なくできるかも……」

うん?

南城さんが代わりに出るのは無理だよ?

名前持ちだから、さすがにね……

あ、でもゲストの詳細は言ってないかもしれないのか!

そしたら別人に代理を頼めば解決じゃん!


妹「え?」

よかったな

解決したぞ


南城「A君に、あの衣装を着てもらえばいいんだよ!」

そうそう……は?


俺「ちょっと待って南城さん!?」


南城「しっかり化粧してれば絶対にバレないよ!」

バレるバレないかじゃなくて!

なんで俺が女装しなきゃならないの!?


俺「いやいやいや!俺じゃなくてもいいじゃん!他の人に代理を頼めば万事解決じゃん!?」

なんで俺!?


妹「それはできないよ……私の家族だって言っちゃってあるから」

なんでそんな余計な事をっ……


南城「それじゃ、やっぱりA君に『あ~ちゃん』なってもらうしかないね!」

あ~ちゃんって言わないで!


妹「あ~ちゃん?」

聞くな!


堀北「ええ、とっても可愛いのよ!」

可愛くない!


南城「A君の芸名だよ。昨日の体育祭では大活躍だったんだよ?」

いや、あれは俺が活躍したわけじゃないから!


妹「それ、詳しく聞かせてください!」

急に元気になりやがったな!?


南城「えっとね、まずはコレ見て」

スマホを妹に見せる

恐らくと言うか、ほぼ確実にDさんがあの時送った画像だな!?


妹「え……これ、おにぃ……なの?」

……違う人の画像だったらなぁ


堀北「凄いわよね……私たちだって、最初は信じられなかったわ」

そのまま信じないでほしかったな……


南城「化粧なら春香できるよね?」

なんか、俺が女装する流れになってない!?


堀北「そうね、少し練習させてくれればできると思うわ」

練習なんてしないでいいと思うよ!?

そんなのマスターしても無駄になるだけだよ!?


南城「衣装は、あの衣装があるから大丈夫でしょ……」

おーい、南城さ~ん?

俺、やるなんて言ってないんだけどー……


妹「あ、でも……あの衣装は流石に凄すぎな気が……」

確かに凄い衣装だよな

でもアレって、名前無しが作ったんだぞ?

ほんと、変な名前無しもいたもんだよなぁ


南城「う~ん……それじゃ、私達でどうにかしてみない?」

なんか、恐ろしいこと言い出したな……


妹「私たちって……先輩と私?」


南城「そう!彼に似合う衣装を用意するの!」

無理だと思うなぁ……

妹もそこそこ器用だけど、さすがに2週間以内に衣装を仕上げるのは無謀だな


妹「そんなの、無理ですよ……服作ったことなんてないのに!あ、もしかして千秋先輩って裁縫得意だったりしますか!?」

そんな話は聞いたことないな


南城「え?どっちかって言うと、苦手かな」

どっちかって言うと?

イメージでは、全くできないって思ってた……


堀北「千秋?裁縫なんて出来たの?」


南城「そりゃ、少しはできるよ?」


堀北「それじゃ問題です。縫い終わった糸が抜けない様にするのを何結びって言う?」


南城「えっと……固結び?」

玉結びだな


妹「えぇ……」

そこまで引くと可哀そうだぞ……

人間誰しも得手不得手があるんだから


南城「う~……ちょっと見栄張っただけなのに……」

見栄張って、苦手って時点で裁縫は出来ないってことだよな

まぁ、できる様になりたいなら練習あるのみだよ

そしたら出来る様になるから


妹「私達に変な見栄張ってもしょうがないじゃないですか……」


南城「彼にはデキル女って思われたいじゃん!!」

大丈夫だよ

南城さんの運動神経は凄い尊敬してる

それ以外は、まぁ、ノーコメントで


妹「おにぃは、そんな小さな事気にしませんよ!」

小さい事かどうかは分からないけど


俺「うん、あんまり気にしないな」

出来ない事が無い方が、怖いしな

四季島とか、パッと見なんでもできる様に見えるから怖かったし


南城「違うの!私の気持ちの問題なの!……やっぱお母さんに教えてもらおうかな……」

まぁ、できると困る事減るから安心だよね

ボタンが取れたとか裾がほつれたとか、すぐ直せるスキルは有用だよね


俺「もう俺が女装する事が決定してるみたいだから言うけどさ」

一言くらいは口出させてもらわないと


俺「普通に売ってる服を組み合わせればいいんじゃない?」

もしくはコスプレ衣装でも買うか


南城「そっか!それなら私も手伝えるね!!」

うん……まぁ、頑張ってね


妹「その、おにぃ……?」

もう、南城さん達がやる気満々だからな


俺「今更遅いぞ。お前が何と言おうと、そこの二人がやる気出した時点で手遅れだ」


妹「はは……ごめん」

謝るくらいなら、南城さん達がいる所でイベントを起こさないでくれ


俺「はぁ……、今度埋め合わせしてもらうからな?」


妹「うん!」





はぁ、また女装するのかぁ

しかも次は、既製品を着るから……完全に女装か


体育祭のは、女装というよりも

“そういう衣装”って事で抵抗は少なかったけど


今度は、どんな格好させられるのかなぁ……

不安だ

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