第155話 起きたら妹が……

覚えてること……覚えてること……


俺「えっと、部室が……部室じゃなかった……?」

そんな事言ってた気がするな


主任「それは、哲学的なことかしら?」

いや、そんな難しいことは言ってなかったな


俺「違うと……思います。確証はないですけど……」


主任「そう……どういう事なのかしら……」

夢の話だし、知らん


俺「あとは、魂がどうのこうの言ってたかな……」


主任「魂?今度はスピリチュアルね」


俺「そう言われても……」

曖昧な記憶だし、そもそも夢だし


主任「そうよね。他に何か覚えてないかしら?」

他……他……?


俺「これ以上は、もう……」

覚えてないなぁ


主任「そう。じゃあ、最後に一つ質問いいかしら?」

最後?

もう夢の話は終わりってことか?


俺「なんですか?」


主任「あの世とこの世の間、ってあると思う?」

あの世があるか、とかじゃなくて間?

そんなもの……


俺「あります」

ん⁉

なんで俺断言してんの?

いや、普通に考えてあり得ないだろ……


主任「断言するのね……ありがとう、話せてよかったわ」

立ち上がってスタスタ部屋を出て行く


俺「ちょ、待っ」


主任「あ、そうそう。もうここで出来る事はないみたいだから、明日には退院できるわよ。それじゃ、バイバイ」

出て行く直前にそう言って去っていく主任さん……

退院できるってのは嬉しいけど!

そうじゃなくて、最後の質問意味って何⁉

それと、さっきのはつい口をついて出ただけで

そもそもあの世なんて信じてないんだけど⁉


声にする前に視界から消えてしまう……

はぁ……まぁ、いっか


明日には退院かぁ


退院、かぁ……


どうしよう……今度は家に帰りたくないんだけど……

妹になんて声かければいいんだよ……

この手紙だって、もしかして読まれる事想定してないんじゃね?

俺が行方不明になってるの知って書いたんじゃ……

だとしたら、逆に手紙なんて読んでないって言い張るか?

それは、それであり……かな?

でも、あの震えた手で書いただろう字を見ちゃうと……

いくら妹だからって、それは流石に酷いか

封筒は開けちゃったのは隠せそうにないし……


はぁ~~~~~~~~~~~……


どうすっかなぁ


そういえば今何時だろ……

この部屋には時計もないのか

窓……もないのか?

ここ、何処なんだ?

ただの病室って感じじゃないみたいだな

隔離用の部屋、なのかな?

他に誰もいないし、ベッドも俺が寝てたのだけだし


ほんと……なんなんだろうな……


まぁ、いっか

とりあえず、誰か来るまで寝てよ……























ふと、誰かの気配を感じて目を覚ます


寝ぼけまなこの視界に映ったのは、よく知った人だった


俺「……よう、おはよ」


妹「え⁉あ、うん……おにぃ、おはよ」

普通に挨拶をできたが、状況が普通じゃなかった


俺「なんで俺に乗っかってるの?重いぞ」

寝ている俺に馬乗りになって顔を覗き込む妹に苦情を入れる


妹「お、重くないもい!全然体重かけてないでしょ⁉」

掛布団の上で四つん這いになられたら、押さえつけられて重さを感じるんだが……?


俺「とりあえず、どけ……話はそれからだ」

何が悲しくて起き抜けそうそう、妹に物理的にマウント取られなきゃならないんだよ


妹「ヤダ……絶対どかない」

何でだよ⁉


俺「身動きできない俺に何かする気か?」

コイツなら変な悪戯とかしてきそうだ


妹「な、ななな、ナニもしないもん!!おにぃのバカ!変態!」

なぜそこまで言われなきゃならないんだ⁉

バカならまだしも変態は濡れ衣すぎるぞ⁉


俺「おい、いい加減にしないと怒るぞ?」

いいからどけよ……

近いんだよ


妹「……んだ?」

近いからってぼそぼそ喋ったら聞き取りにくいっての


俺「ん?何て言ったんだ?」

よく聞こえなかったぞ?


妹「だから、……読んだ?」

呼んだ?

いや呼んでねーよ……違うか


俺「手紙なら読んだぞ。お前がそんな風に思ってたなんて知らなかった。だけど」


妹「読んだんだ……答えはもう決まってる……そうなんだよね?」


俺「ああ、もちろんだ」


妹「そっか……うん、分かった……」

やっと俺の上から退いた妹は、俺の返事を聞かずに走って部屋を出て行った

ちゃんと聞くんじゃなかったのかよ……


言わせろよ

ちゃんと断らせろ


そう思いつつも、断る言葉を言わないで済んだ事に

少しだけ安堵していた


結果は同じだけど、自分の言葉で妹を泣かすのは

やっぱりいい気はしないからな……

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