第148話 再訪・文芸部

気絶したふりをして、じっとしていると

どこかのスピーカーから四季島のお父さんが話しかけてきた


健太郎「そろそろ起きてると思うが、どうだろうか?」

反応してやるものか!!

無視を決め込む


俺「…………」


健太郎「ふむ、まだ起きていないようだな。しょうがない、少々過激だが電気ショックで起きてもらおう」

で、電気ショック!?


ウイーーーーーーンと機械音がする……

薄目を開けて周囲を確認する

天井から金属製の棒状の物が降りてきた⁉

え゛っ!?

あれが電気ショック?

いやいやいや、どう見ても俺を串刺しにする気だろ⁉

あんなもんに刺されたら確実に死ぬ!!


俺「と、止めろ!!」


健太郎「やはり起きていたね。狸寝入りなんてして、何がしたいんだか」


俺「いいから止めろよ⁉」

未だ下がり続ける金属棒に命の危機を感じる


健太郎「はぁ~……」

ガコンと停止し、また機械音を出しながら上へ戻っていく


俺「し、死ぬかと思った……」


健太郎「さて、しっかり目覚めたみたいだね。今どんな状況か分かるかい?」


俺「拘束されてる……」


健太郎「ああ、そうだね。なんでか分かるかい?」


俺「俺が貴重なサンプルだからだろ」


健太郎「違うよ。今の君は名前持ちからの影響と自身の見た目の変化で、精神構造が変化しつつあるんだ。君がそのまま名前持ちになるつもりがあるなら、こんな事をしないで済むんだけどね。君は名前無しに戻りたいと、そう言っていたからこうして隔離させてもらっているよ」


俺「言ってる意味が分からないんだけど……?」


健太郎「簡単に言うと、今の君は病気なんだ。その治療をこれからここで集中的にするよ」


俺「病気?病人に対してこの仕打ちはどうなのさ」


健太郎「肉体的には健康そのものだからね、問題ないよ」


俺「これは解かないってこと?」


健太郎「いや、君が少しは落ち着いてくれたら外すよ。まだ落ち着いていないみたいだがね」

俺は落ち着いてるさ

こんな仕打ちをされたにしては、な


俺「それで、どれくらいこうしてればいいんだ?」

体が固まって辛いんだけど……?


健太郎「ふむ、もう少し眠っていてもらおうか」

どこからか入ってきた数人の白衣を着た男たちが、酸素マスクみたいなモノを俺に装着する

送り込まれてくるのは、普通の酸素ではない……?

少し甘いような匂いのする気体が送られてくる……

吸っていると、だんだん気分が良くなっていく

ふわふわした感じが、する?


あれ……?

なんか眠く、なって、きた?




……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………






















気がつくと、そこは見覚えのある場所だった


文芸部の部室前だ


あれ?

何でここにいるんだっけ?


部活に来たんだっけ、か?


まぁ、いっか

折角前まで来たんだし、入ろ


ガチャリ、ギギィー

古びた木製のドアを開けて中へ入る

すると、中にはどこかで見た気がする女子がいた


俺「えっと……」


「えっ⁉あっれ~⁉なんで来ちゃったの⁉もう来ないと思ってたのに!!」

今の感じ……

俺の事知ってる感じだったよな?


俺「えっ?あれ?俺、どっかで会った?」


「あ~、そっか!やっぱり覚えてないんだね。それにしても、君随分の薄くなったね?どうしたちゃったの?」

覚えてないってことは、やっぱり初対面ではないのか

でも、なんで俺はこの人の事を忘れちゃったんだ?

それに、薄くって何?


「じゃ、改めて自己紹介しよっか。私の名前は佐々木乱子!文芸部の幽霊部員です!」

ささき、らんこ……?

幽霊部員、なのに部室に来てるの?


俺「えっと、俺は」


佐々木「知ってるよ。男子生徒Aくん!」

やっぱり俺のこと知ってるんだ⁉


俺「佐々木さんと俺って、前に合ったことあるの?」

全然覚えてない、というか記憶にないな……


佐々木「うん。前に君がここに来たのは、いつだったかな……まぁ、前に1回だけだけど来ちゃったことあるよ」

来ちゃったって言ってるけど、来ちゃダメなのかな?


俺「ごめん。ぜんぜん覚えてないんだけど」


佐々木「まぁ、そうだろうね。ここを出ると忘れちゃうからね」

ん?どういう事⁉


俺「えっと、俺気が付いたらここに来てたんだけど……」


佐々木「あ~、またかぁ……それじゃ、まずは思い出すことから始めよっか」

明るく宣言する佐々木さんという名前持ちの女子は

優しい眼差しを俺に向けた

その眼差しに既視感を感じが、やはり何も思い出せそうになかった……

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