第147話 それが本性?

四季島のお父さんに着いて行く

無言で歩く後ろ姿はスーツを着こなした大人の威圧感を放ってる……

多少の気まずさを感じながら廊下を進んでいく


案内されたのは応接室だった


健太郎「まぁ、かけなさい」

言われるままに座る

フカフカのソファーに体が沈む


健太郎「さて、まずは状況を整理しよう」


俺「はい」

整理って言っても殆ど何も分からないんだけど……


健太郎「まずは、謝罪からしようか。私の所にいたスパイが君の情報をあの組織に流していたのは確認済みだよ。処分が遅くなってしまったせいで、君が危険な目に遭ったね、本当に申し訳ない」

深々と頭を下げてくれる四季島のお父さん


俺「いえ、こうして助けてもらえたので。ありがとうございました」

俺も頭を下げる


健太郎「ギリギリ間に合ってよかったよ。貴重なサンプルを敵対組織に奪われるわけにはいかないからね」


俺「あの……サンプルって」

もしかして俺のこと?


健太郎「もちろん君の事だよ。君は貴重なサンプルなんだ、少しは自覚してくれないかね?」

自覚ったって……


俺「じゃあ、俺の代わりって」


健太郎「君の妹さんだよ。太一から聞いているよ、君の妹さんも同じ境遇だと」


俺「もし妹に手を出したら……絶対許しませんよ?」


健太郎「そうは言っても、君は所詮名前無しだろ?君に何ができるっていうんだい?」

これがこの人の本性、なのか……?

だから四季島は、一人暮らしをしてまで距離をとっていた?


俺「本気で言ってるんですか?」


健太郎「もちろん本気だとも」

なら、俺のとる行動は一つだ

隠し持っていた拳銃を向ける


俺「いい人だと思っていたのに……残念です」

引金に指をかける


健太郎「それで私を撃つのかい?」


俺「妹を、家族を守る為なら」


健太郎「やはり、そうか。君の人格はどうやら変質しつつあるみたいだ。少しの間眠って冷静になりなさい」

鋭い眼光を向けられ少しだけ、怯む

大丈夫、俺は俺のままだ

何も変わってなんか……

そういえばBが変に気にしてたな

俺じゃないみたいだって……

ほんの少しだけ、意識が逸れる

その瞬間、背後から布で口を押さえられた⁉


俺「ん~~~~!!!」

気付かなかった!!

いつの間に背後に⁉

くそ……意識が……遠退く……


止めろ……俺は……まだ……

意識が途切れる寸前、少しだけ会話が聞こえた


健太郎「やはり、症状が悪化しているようだ。太一、お前から見てどうだ?」


四季島「はい。確実に今までのコイツとは違う選択をしてます」


健太郎「お嬢さん方はどうかね?」


南城「……ちょっと怖かったです」


堀北「変わっていると思います。彼は人を平気で傷付ける様な事はしません」


健太郎「そうか。……やはり隔離しなければならないね。残念だが、お嬢さん方も面会は出来ないよ。いいね?」


南城「はい……」

堀北「わかりました」

何を話して……る?


健太郎「では、彼を隔離室へ移送する」

かく、り……?

この場面を最後に俺の意識は完全に闇に包まれた
























目が覚めると、真っ白な空間だった

起き上がろうとすると、ギシとベッドが軋む音がした

どうやら俺はまた拘束されたみたいだ

それも、今までの中で一番頑丈に完璧に拘束されている

なんとか動かせる頭で自分の体を見ると

たまにアニメなんかで見る凶悪犯を拘束する服みたいなモノを着せられていた

そして、その服のままベッドにガッチリ固定されている

これじゃ、指一本動かせやしない!

まだ少しぼんやりする頭で必死に思い出そうとするが、曖昧な記憶があるばかりで今の状況を説明できるヒントは何も思いつかない


幸い口は拘束されていない、誰かいないか声を出してみるか……

ちょっと待てよ?

もし、意識が戻ったからとまた気絶させられたら?

確か聞いた話によると、強制的な気絶を繰り返すと脳に障害が残るんだよな……

どのくらいの頻度で気絶するとヤバイのか知らないけど、今年入ってからかなり気絶させられてる気がする


よし……今は静かに気絶したままを装っておこう……

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