第135話 校長先生
左に南城さん、右に堀北さん
真ん中に俺と、いつも通りの並びで登校する
しかし、周囲の反応はいつも通りとはいかなかった
刺さる視線は、嫉妬や憎悪から羨望へ変わった
変わったが、居心地の悪さは一切変わってないんだけど⁉
囁く声は、「誰?」とか「初めて見た」とかばっかだし
あとたまに「とうとうあの男は捨てられたか!」
って喜ぶ声が聞こえるし
残念ながら捨てられてないんだよなぁ
ほんとに残念ながらな……
下駄箱で上履きに履き替えてる時、見覚えはある……んだけど、何の教科だか分からない先生に声をかけられた
先生「君、本当にうちの生徒かな?」
俺「あ、はい。2年の男子生徒Aです」
先生「いや、どう見ても君は
あぁ、これ強制連行だ……
断ったら警備員とか他の先生呼ばれるヤツだ
俺「はい。わかりました」
なんとか事情を説明して、理解してもらわないと……
南城「それじゃ、行こっか」
あ、南城さん達も一緒に来てくれるんだ……
先生「いや、君たちは来ないでいいよ。ちゃんと授業に出なさい」
そんな……⁉
堀北「いえ、私達も行きます。何か問題でも?」
先生「理由もなく授業を欠席させる事はできないよ。さぁ、早く教室に行きなさい」
な、なんだこの先生……堀北さんにまったく動じてない⁉
堀北「理由ならありますし、彼は間違いなく男子生徒Aです」
先生「君みたいな真面目な生徒が、悪ふざけするとはな……。やはり、
やれやれと言いたげに頭を振る
南城「それ、どういう意味ですか?先生、私達の
先生「いやいや、そんな事を言ってるのではないよ?でもねぇ、堀北くんは最近テストの点数が下がってきているようだし」
堀北「そ、それは……」
え⁉
堀北さんのテストの点さがってんの⁉
もしかしなくても、俺のせい!?
それはヤバイよね⁉
先生「南城くんは、最近は部活の助っ人を全部断ってるみたいじゃないか」
え?
部活の助っ人なんてやってたの?
南城「あくまで助っ人です!やらなきゃいけない事じゃありません!」
先生「でもね、君が助っ人を断ってるせいで運動系の部活から苦情が来てるんだよ?中には『男子生徒Aを退学にしろ』なんて過激なものもあるんだ」
うえぇ!?
どんな恨まれ方だよ!!
南城「そんな事したらっ」
うわっ
南城さんめっちゃ怒ってる……!!
先生「しないし、現にしてないでしょう?」
南城「じゃあ何で」
先生「そういう声が上がるくらいには、影響が出ているんだよ。各運動部に、君自身が説明して回ってくれれば助かるんだけど」
そっか!
南城さん自身が説明すれば、解決するのか!
南城「わかりました。ドコの部に説明すればいいんですか?」
先生「全ての運動部だよ。数は、24くらいだね」
2、24!?
うちの学校ってそんなに運動部あったの⁉
南城「なんで全部の運動部に説明しなきゃ」
先生「特定の部活だけに説明するのは、平等じゃないだろう?説明するなら全ての部活に平等にしなさい。きっと、1カ所づつ何度も丁寧に説明すれば分かってくれるだろうから」
それって、20以上もある部活に説明して納得してもらえって事?
どんだけ時間かかるんだよ……
1日に1部活だとして……1か月くらいかかるじゃん!
南城「そんな……」
先生「さぁ、今なら朝練してる部活もあるだろうし説明に行きなさい」
え……今から⁉
てか、なんなんだこの先生⁉
南城さんならまだしも、堀北さんも言いくるめたし……
先生「それじゃ、君の話を聞かせてもらおうか。ちゃんと付いて来ないと、他の先生方をお呼びしますからね」
俺「は、はい……」
やばいやばいやばいやばい!!
この先生……生徒の言い分聞かなそうじゃん!
俺がどんなに説明しても、信じてくれなそう……
最悪不審者として、警察呼ばれるんじゃない⁉
四季島「ちょっと、待ってくださいっ!……はぁはぁ」
やった!!
四季島だ!!
四季島が駆けつけてくれた!!
先生「ふむ、今度は四季島くんですか」
でも、四季島が負けたら……
四季島「はぁはぁ、そいつをどこに連れて行くおつもりですか?」
息切れてるけど……大丈夫か?
先生「ずいぶんと息が上がってるみたいですね。少し落ち着きなさい」
四季島「お気遣いありがとうございます。でも、先にお答えください。どこに連れて行く気ですか?」
先生「もちろん生徒指導室ですよ。身元の不確かな生徒が紛れ込んでいるんだ、当然の対応だと思いますが?」
四季島「なら、僕が身元を保証しましょう。そいつは紛れもなく男子生徒Aです」
よし、保証人ゲット!
これで解放!
先生「それは、認められませんね」
なんでー⁉
四季島「何故ですか!」
先生「君が主人公級の
そんな理由アリなのかよ⁉
てか、四季島はそんなにトラブル持ち込んでんのかよ⁉
四季島「僕がトラブルを持ち込む?何を言って」
先生「自覚無しですか。では、いくつか話ましょう。校内の子猫に餌をやり、かってに飼育をしましたね?」
四季島「あ、あれは子猫が衰弱していたから」
先生「なぜ保健所や教師に相談しなかったのです?相談してくれていれば、その後猫が何匹も侵入してくる事もなかったのに」
何やらかしてんだよ⁉
四季島「ほ、保健所なんかに言えば殺処分されるって」
先生「そんなすぐに殺処分なんてされませんよ。一定期間飼い主候補が現れなければ最終的にそうなるだけで、子猫の段階なら貰い手も見つかりやすいんですよ」
そ、そうだったんだ⁉
四季島「い、以後気を付けます」
先生「他にも、他校の生徒が君目当てで校内に不法侵入した回数が58回もありますね」
多っ!!
四季島「それは、僕のせいでは」
先生「女の子は君に惚れたからと、口を揃えて言ってますね」
四季島「僕にそんなつもりは」
先生「そうでしょうか?ですが、問題なのは不法侵入する男の子の方なんですよ。君を恨んだ者が押し寄せて来るんですよ」
あ~……確かにそれはよくあるなぁ
校内放送で校庭に出るなっていうの聞いたもんな
四季島「それだって、僕のせいではないです!彼らがかってに怒ってるだけで」
まぁ、逆恨みって感じだよな
先生「そんな言い訳が通用するわけないでしょう?」
え?そうなの?
四季島「どうしても連れて行くと言うなら……」
手をぐっと握る四季島
まさか、そのまま殴り掛からないよな?な?
先生「なんですか?実力行使でもしますか?」
もう先生⁉なんでそんな挑発するの⁉
そこは暴力反対って言っておいてくださいよ!
四季島「父上に連絡します。貴方は校長の器ではないと、そう伝えます」
でも、お前の親父さん……また対価を求めてくるんじゃ……
て……?え?校長……なの?
マジで?
校長「ほう。結局は親頼りですか?」
うわぁ、めっちゃ子供扱いしてきてる……
四季島「ええ、僕はまだ未熟者です。ですから力が足りない時は親を頼ります」
潔いけど、ほんとに……いいのか?
校長「そうですか。では後ほど、ゆっくりお話ししましょうかね」
キーンコーンカーンコーン♪
校長「さて、予鈴が鳴りましたね。君たちはちゃんと授業に出る様に、いいですね?」
それだけ言って、俺の腕を掴み歩きだす校長先生
無理矢理連行させるのは想定してなかったよ⁉
まぁ、でも……生徒指導室って入った事ないし、見学気分で行ってみるかな
俺「ちょっと説明してくるね!話せば分かってくれるだろうから、心配しないで!あ、ノート後で見せてね!」
言い負かされて立ち竦むみんなを尻目に、俺は容赦なく連れて行かれる
そして、みんなが見えなくなるまで暫く廊下を歩き続ける
俺「ちゃんと付いて行きますから!そろそろ離してください!」
実は結構、痛いってーの!!
ぐっと握られた手首が、鈍い痛みを発してきている
校長「そうはいきません。君に逃げられたら大変ですからね……貴重なサンプルなんです。大人しくこちらに従ってください」
さ、サンプル!?
え?何言ってんの⁉
俺「こ、校長先生?」
校長「ふふ、ははは!あの男がミスしたから、どうなるかとヒヤヒヤしたが」
あれ?
この雰囲気……
もしかして…………?
校長「こうして私の元へ転がり込んで来てくれるとは、まさに棚から牡丹餅とはこの事ですね!」
やっぱり!
この人、大家さんと同じ系統の人だ!!
俺「止め!離せ!また人体実験でもするつもりか⁉」
もう薬も注射も懲り懲りなんだよ!!
何で振りほどけないんだ⁉
どんだけ怪力なんだよ!!
校長「何を言っているんです?君みたいなサンプルなら解剖一択でしょう?」
か、解剖⁉⁉
こいつ、大家よりヤバイ奴だ!!
なんとかして逃げないと……!
マジで殺される!!!
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