第129話 四季島vs四季島

最上階に着くと、長い廊下を通り突き当りの部屋の前まで進んだ

なんか…RPGのボス部屋みたいだな!

四季島が緊張した顔でノックをする


四季島「太一です」


「入りなさい」

中からオッサンの声が返ってくる


四季島「失礼します」

部屋の中は落ち着いた雰囲気で、期待していた禍々しさはなかった

置いてあるモノはどれも高そうで近付きたくないし、居心地の悪そうな部屋だな


「太一、説明しなさい」

偉そうな名前持ちネームドのオッサンだなぁ


四季島「はい」

今俺に起きてる状態を簡潔に説明し、自分の予想も一通り発言する

まるで原稿があるみたいにつっかかる事もなく、スラスラと話す

どうやったらそんな能力スキルが身に着くんだ?


「うむ。なるほど……そこの少年が世界的に見ても貴重なサンプルなのは理解した。だが、それは利用こそして恩を売るような相手には思えないんだが?」


四季島「それはっ」


「なんだ?まさかお前は慈善事業に興味があるのか?」


四季島「そういう話をしているのでは」


「だが、お前は無料でその少年を治療しようと…そう言うのだろう?」


四季島「ですから、それは」


「出世払いか?そんなもの信用できるわけないだろう?お前は現状私の意向に逆らっている。そんなお前を信用できるわけなかろう?」


四季島「……そ、それでも」


「はぁ~……お前は、どこまで愚かなんだ……」


四季島「父様!こいつは、成りたくて名前持ちになったのではないんです!!」

父様!?

このふんぞり返った偉そうなオッサンが四季島の父親なのか⁉

ぜんぜん似てねぇー!!!


四季島父「何かね、少年?」

少年って……俺?


俺「いえ、なんでもない、です」


四季島父「君は本当に名前無しに戻りたいのかい?」


俺「はい」

そりゃ、当たり前だろ?


四季島父「君には、言い寄ってくれる子がいるんだろう?しかも、相手は名前持ちだそうじゃないか。今の君ならお似合いの恋人同士になれるんじゃないか?」

このオッサンは……!!

こっちの気も知らないで!!!!


俺「俺は!そんな事!望んでない!!」


四季島父「ふむ……ハハハ!聞いていた通り、変り者のようだな!!実に愉快だ!!」

は?

え??

さっきまでの偉そうな雰囲気が一変して、子供みたいに笑顔を浮かべるオッサン


四季島父「試すような真似をしてすまないな。改めて自己紹介させてもらってもよいかな?」


俺「どういうこと?」


四季島「すまない、父さんは人を試すのが好きなんだ……」

え?

試すのが好き?

変人?


四季島「俺が父さんの演技に付き合う、それがお前を治療する条件なんだ」

なんだそのふざけた条件は⁉


四季島父「四季島太一の父、四季島 健太郎けんたろうだ。以後お見知りおきを」


俺「えっと、男子生徒Aです」


父「その父親です」


健太郎「男子生徒A君か、本当に名前無しだったんだんねぇ」


四季島「父さん……」


健太郎「ふむ、すぐに精密検査をしよう。君の体を隅々まで調べ尽くして、君を……助けてあげよう。この四季島健太郎の名にかけて!」

そんな大口叩いて大丈夫なのか……?


四季島「ありがとう、父さん」


健太郎「太一、約束は守れよ?」


四季島「もちろんです」

約束?

何か約束してたのか?


健太郎「それじゃ、案内の者を呼ぼう」

すぐに内線で呼ばれた案内役の人が来た

早いな……


健太郎「では、彼を検査室へ」


案内役「はい。畏まりました。どうぞこちらへ」

俺は促されるままに、付いて行くことになった

どうやら父さんは残るみたいだ





そして連れて行かれた先で、数えるのも面倒なほどの検査を受けるのであった……

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