第49話 一日ぶりの学校
制服を着た時、違和感があった
なんか、久しぶりな気がする
一昨日も着てたのにな
昨日一日の出来事が濃過ぎたんだろうな……
もうあんな濃い一日は懲り懲りだよ、ちくしょー
登校しようと、玄関を開けると
南城「あ、おはよ!」
とりあえずドアを閉める……
幻覚か……昨日色々あったし……疲れてるのかなぁ……
ピンポーン!
幻聴かな……昨日色々あったし……
ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!
俺「朝から五月蠅いよ⁉」
南城「だって、出てこないから……聞こえてないのかなって」
俺「聞こえてたよ!」
南城「よかった!学校行こ!」
俺「行くけど……なんで南城さんウチ来たの?」
南城「迎えにきたんだよ?一緒に行こーよ!」
俺「あ、はい……わかりました……」
これ、一緒に行かないって選択肢無いもん
俺だって学習したよ、南城さんには拒否しても無駄だって
あ~……また針のむしろかぁ
しかし、登校しても怨みや嫉妬の鋭い視線は感じなかった……
その代わりに、まるで珍獣でもみるかのような好奇の目で見られた
まぁ、好奇に目には害意や敵意がないからマシだな
マシって何基準だよ……
もう感覚がおかしくなってきてるなぁ、俺
教室へ無事到着すると、クラスメイトからも奇妙なモノを見る目を向けられる
……これはこれで居心地悪いな
なんか変な噂話されてる気がする……
この空気は南城さんと堀北さんに告られた翌日とほぼ同じだ
あの頃は嫌で、人気にない所へ逃げてたな~…
堀北「二人とも、おはよ」
南城「春香、おはよ!」
俺「おはよう」
堀北「なんで、千秋は彼と一緒に登校してるの?抜け駆け?」
あれ?堀北さんに黙ってウチに来たんだ?
南城「だって、昨日あんなことがあったから心配だったんだもん……」
堀北「それは私だって心配よ?なんで誘ってくれなかったの?」
南城「う~~~、だって……」
堀北「だって?」
南城「二人で観覧車乗ってたの羨ましかったから……」
今、それ言う⁉
このクラスの視線が集まってる状態で⁉
堀北「そ、それは……しかたないわね……でも、今後はちゃんと私に話してよ?」
仕方ないことなの⁉
南城「うん、そうする」
二人で決める前に俺にも一声かけてくれませんか⁉ねぇ⁉
四季島「よう、ちゃんと生きてるみたいだな」
俺「あ、四季島……昨日は助けてくれてありがとうな」
四季島「ふん、貴様にはまだ死なれては困るからな」
俺「まだって……」
いつか用が済んだら殺すってこと⁉
マジで怖いんだけど
四季島「また勝負してもらうぞ。二人の恋人の座をかけて、な」
言うだけ言ってファンクラブの輪に戻って行きやがった⁉
お、俺だって好きで二人に好かれてるわけじゃねーんだぞ⁉
こちとら命がけなんだぞ⁉
南城「こ、恋人……」
堀北「恋、人……」
あ~~~~~~~!!もう!!
四季島ぁ!!!!
お前のせいで二人とも自分の世界に旅立っちゃったじゃん!!!
発言には注意しろよ!!!
二人ともなんかブツブツ言ってて、怖いし……今の内に、逃げるか
カバンを机に置いて、廊下へ出る
と、丁度登校してきたBとDと出くわした
B「あ!生きてたのか⁉」
D「無事、だったんだな」
俺「ああ、何とかな……今度はもっと上手く俺達だけで遊びに行こうぜ」
B「ああ、その……悪かった」
D「俺たちのせいで、お前が犠牲に」
俺「もう、それはいいよ……こうして生きて帰ってこれたからな」
B「許してくれるのか」
俺「最初は怒ったけど、理由が理由だしな。むしろ俺の方が謝るべきって思ってたんだ。俺の思い付きのせいで変な負担かけた……すまん」
B「いや、一番大変な目に遭ったのはお前自身なんだ」
D「また、3人で遊び行こうな」
俺「B……D……ありがとう……ほんといい友達だよ、お前らは」
B「よせよ、照れくさい」
D「俺たちの友情は永遠に不滅ってな」
俺「ああ!お前達以上の友達はきっと世界を探しても見つからない!」
男子生徒三人がガシっとハグする
そんな奇妙なモノを見た生徒の内、極少数が呟いた
A総受け……と
しかし、幸いその呟きは誰にも届くことなく虚空に消えた
順調に授業は進み、昼休みになった
南城「一緒に食べよ!」
俺「う、うん」
なんか今日の南城さんはいつも以上にグイグイ来てる気がするな
堀北「その…私もいいかしら?」
俺「モチロン」
打って変わって堀北さんは遠慮がちになってるな……
もしかして昨日観覧車で話したこと気にしてる?
でも、観覧車から降りる時にはもういつも通りだったと思うんだけど……
パクパクと弁当を食べる
俺と堀北さんは口数は少なく、南城さんが色々話している
よくそんなに話題が続くなぁ
あ、そうだ
聞かないといけない事あったんだ
俺「あのさ、次の日曜と言うか、明後日の事なんだけど」
南城「あ、お菓子作り!」
もしかして忘れてた……?
ミスったな
言わなきゃよかった
俺「そうそう。二人は何が良いかなって」
南城「美味しいのがいいなぁ」
俺「それは作る人の頑張り次第かなぁ」
堀北「私は……その……いえ、何でもいいわ。お任せする」
俺「それが一番困るんだけど……とりあえずチョコ系って所までは考えたんだけど、二人とも食べたいチョコのお菓子とかある?」
食べたいモノを作るのが一番楽しいからな
南城「え~っと、名前分かんないんだけど」
俺「何?」
南城「前食べた中がトロトロのケーキ!」
中がトロトロ?半生?生焼け?
生焼けケーキ??
堀北「あー、あれね」
俺「堀北さん、知ってる?」
堀北「ええ。前回のお茶会で食べた、フォンダンショコラじゃないかしら」
あ~……フォンダンショコラ、ね
確かに中がトロトロのケーキだ
でもなぁ……
俺「あれかぁ……俺の実力じゃ、ちゃんと教える自身ないなぁ」
一人で作れるのと誰かに教えるのは、また別の能力だしな
南城「そっか~、じゃあ他のでいいよ!春香は?さっき何か言いかけてたじゃん!」
堀北「でも……難しそうだし」
俺「とりあえず言ってみてくれないかな?」
堀北「え、えっと……生チョコレート……」
生チョコかぁ
アレは材料少なくて済むから楽でいいんだよなぁ
注意事項もそれほど多くないし……
俺「生チョコなら、何度か作ったことあるから大丈夫。教えられると思うよ」
南城「え⁉生チョコ作れるの⁉」
俺「う、うん」
南城「なら生チョコがいい!!」
フォンダンショコラはいいのか⁉
俺「じゃ、じゃあメニューは生チョコで決定だね」
堀北「何か持って行くものってある?」
俺「えーっと、エプロンと三角巾があれば大丈夫だよ。材料は用意いておくから」
堀北「材料まで用意してもらっちゃっていいの?」
俺「あ、うん。実は最近妹の機嫌が良くなくてね。アイツに何作ってやろうって思っててさ」
堀北「妹さん、どうしたのかしら?」
俺「多分勉強で疲れてるんじゃないかな」
堀北「そう。あ、私でよければ勉強見てあげましょうか?」
俺「いや、悪いよ……」
堀北「お菓子作り教えてくれるお礼に、ね?」
俺「そこまで言ってくれるなら……お願いしようかな」
堀北「ええ、任せて」
南城「えーっと、えーっと、私は……」
俺「無理にお礼しようとかしないでいいからね?気持ちだけで十分だから」
突拍子もない事言いだす前に止めとかないと……!
南城「う~ん……でも」
俺「いいからいいから」
ホント変な事言わないで、それが俺にとって何よりものお礼だから
南城「じゃあ私に出来ることがあれば言って!手伝うから!」
俺「う、うん。その時はよろしく」
そんな時は一生来なくていいんだけど……
作るメニューは生チョコに決定したし、帰りに生クリーム買いに行かないとな
何%のやつがいいかなぁ……
濃い方が濃厚で美味しいんだけど……
生クリームってなんであんなに高いのかなぁ
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