第47話 遊園地 その18

俺「そ、そういえば……俺なんで寝てたの?」


南城「覚えてないの⁉」


俺「うん。なんか、全然思い出せないんだよね」


堀北「……そう。なら、知らないままでも」


南城「春香、それはダメだよ」


俺「えっと、知らない方がいいなら」

聞きたくないなぁ~……


南城「ううん。ちゃんと、説明させて」


俺「うん……」


南城「えっと、何から説明すればいいかな」


堀北「私と観覧車に乗ったの覚えてる?」


俺「うん。それは覚えてるよ」


南城「じゃあ、その後からだね。最初の原因はね、私なの」

南城さんが原因?


南城「私が、山田くんっていう人に捕まっちゃって」

山田……?

そういえば夢で見てた内容も山田が出てたな


南城「それで春香が助けにきてくれたんだけど」


堀北「私まで捕まっちゃってね……」

南城さんと堀北さんを捕まえられるって……

どんな存在なんだよ⁉

普通の名前持ちよりもよっぽど強い存在なんじゃ……

怖ぇ……

絶対に関わりたくない!!


南城「それをね……君が助けに来てくれたんだよ」

キミさん?誰かな……?


堀北「アナタのおかげで私たちは助かったのよ」

アナタ……って俺⁉

俺が二人を助けた⁉

そんなのあり得ないだろ!!

そういうのは主人公の役目だから!

mobにそんな大役は無理だ!!!


俺「ちょっと言ってる意味が」


南城「そういえば、山田くんって人と君は知り合いみたいだったけど」

知り合いの山田……

多分、アイツだよなぁ

小学生の時の、いじめっ子……

暴力でクラスのみんなを黙らせてた、アイツだよな……


俺「多分……小学校の時のクラスメイト、かな」

思い出したくない事を思い出しちゃったな

山田に続いて佐藤は出てこないよな?な?


南城「そーなんだ?」


俺「そ、それで?山田は?いないみたいだけど……」


南城「四季島くんが倒しちゃった」

四季島が……さすが主役級……


俺「じゃ、じゃあ俺は何かしたの?どう考えても手も足も出ない気がするんだけど」

よく生きてたな、ほんと


南城「う、うん。山田くんの仲間にボロボロにされて」

やっぱりなぁ~

でも、どこも痛くないな?

ボロボロにやられてたなら、死んでもおかしくないのに……


南城「君が動けなくなって、死んじゃいそうになった時に……四季島くんが助けに入ってくれたんだよ」

し、四季島が⁉俺を助ける⁉


なんでっ⁉⁉


あれ?俺ってアイツにとって邪魔者だったんじゃ……?


堀北「四季島君ったら、君の事ライバルだって言ってたわよ」

ら、ライバル⁉

いつなったの⁉

俺はそんなん知らないけど⁉


南城「それでね、四季島くんのお父さんのSP?の人たちも来てくれて、山田くんたちをやっつけてくれたんだ」


俺「あのさ、俺……体全然痛くないんだけど……?」


南城「あ、それはね!四季島くんがお抱えのお医者さん呼んでくれてね。この場で治療してくれたんだよ」

四季島ぁーーーーー!

まさか命の恩人になるとは……思ってもみなかったよ!

むしろ俺を消す側だと思ってたんだけどな

いやぁ、今度あったらお礼いわないとな……


南城「治療が終わったんだけど、君…全然起きなくて」

潤む瞳で俺の目を覗き込む


俺「ご、ごめん!」

って反射的に謝っちゃったけど……何に対して謝ったんだ⁉


南城「ううん。ちゃんと目、覚ましてくれたから」

うっわぁ……

泣いちゃったよ⁉

え?居心地悪っ!

堀北さん助け船を!


堀北「ぐすん……ほんと、よかったわ」

あ~……ダメか⁉

逃げ場無し⁉


俺「えっと、そのさ……それ、二人を助けたのは四季島なんじゃ……」

俺ってただボロボロにやられただけだよね?

なんにもしてなくない⁉

というか、手間増やしただけだよな?


南城「ううん。そんなことない!君が助けてくれたんだよ!もうダメって諦めてた私たちの心を、ね」

心、ねぇ……

実感ないなぁ


堀北「私ね……君は来ないんじゃないかって、思ってたの……」

俺自身も驚きを禁じ得ないんだよ

そんな危険な相手に俺が挑むなんてさ


南城「春香?」


堀北「ごめんなさい」

深々と頭を下げる堀北さん……


俺「いや、謝るような事じゃないよ!えーっと、俺も実は信じられないんだよね。俺が二人を助けに行くなんて……」

何言ってんだ、俺


堀北「でも、私……」


南城「春香!」


堀北「な、何?」


南城「こういう時はね、謝るんじゃなくて!」


堀北「……ふふ、そうね。……助けに来てくれて、ありがとう」


俺「あはは……結局やられちゃっただけみたいだけど、ね」


堀北「それでも、……それが嬉しかったの」


俺「そ、そう?えーっと、どういたしまして?」

き、気まずい……

この後、どうするんだ……?


南城「あっ!!」

うわっ⁉

ビックリした……

心臓に悪いから、いきなり大声出さないでほしいな……


堀北「どうしたの?」


南城「お土産!どうしよ……お店閉まっちゃったかな……」


堀北「お、お土産ね。急に大きな声出すからびっくりしたわ」


南城「でもでも!お土産買わないと!」


堀北「もう……時間的に厳しいわね」


南城「そんなぁ……」


お土産……?

なんか忘れてるような……

なんだっけか?


ピンポンパンポーン♪


ん?もう閉園の時間かな?


アナウンス「お客様のお呼び出しを申し上げます。引き換え券Aー519番をお持ちのお客様、サービスカウンターまでお越しください。繰り返します……」


引き換え券……?

なんか引っかかるな……

なんだろ……


そういえば、今何時だ?

あんまり遅くなると妹と母さんが心配する!

ポケットからスマホを取り出そうとすると、一枚の紙が一緒に出てきた

レシートとかのゴミか?

何のレシートかな

うん?


引き換え券

Aー519


……?

引き換え券?

何の引き換え券だ……?


あ、さっきのアナウンスでもなんか言ってたな


アナウンス「引き換え券、A-519番をお持ちのお客様は~」


Aー519番……

これもA-519だな……


呼び出されてるの、俺かーーーーー⁉⁉


俺「二人とも、ちょっといい?」


南城「どうしたの?」


俺「ちょっとサービスカウンター行く必要があるんだけど」


堀北「わかったわ、一緒に行きましょ」


南城「それにしても、お土産買えなくて残念だったなぁ……」



三人でサービスカウンターへ向かう


道中、ライトアップで飾られたアトラクションやイルミネーションがあり

南城さんは目を輝かせて


南城「キレイだね!」

と、はしゃいでいた

さっきまでお土産で落ち込んでたのに……


サービスカウンターへ着き、さっきの引き換え券を渡す


職員「お待ちしておりました。こちら、お預かりしていた商品でございます」

そういって、3つの小さな紙袋を渡される


俺「あの、これは……?」


職員「お客様がご注文した、商品でございます。代金の方は先払いされていたので……受け取りに来られないので、お呼び出しさせていただきました」


俺「あ、そうでしたか……わざわざすみません」


職員「こちらこそご足労いただき申し訳ございません」


俺「えっと、それじゃ」


職員「はい。ありがとうございました」



カウンターから少し離れた位置にいる二人と合流する


俺「お待たせ」


南城「なんだったの?」


俺「覚えてないんだけど、何か買ってたみたい」


南城「何買ったの?」


俺「わかんない……」


堀北「開けてみましょうよ」


俺「そうだね」


紙袋を開け中身を確認する

中にはストラップが入ってた


俺「ストラップみたいだ」

取り出してみると

horikita haruka

と名前が入っていた


堀北「私の名前……」


南城「え?え?春香の名前のストラップがなんで……」

俺が聞きたいよ!


俺「と、とりあえずコレは堀北さんにあげるよ」


堀北「いいの?」


俺「うん。多分そのつもりで買ったんだと思う」

そして続いてもう一袋も開けてみる


こっちも同じデザインのストラップが入ってた


俺「もう1個?」

取り出すと

nanjou chiaki

と文字が入っていた


南城「あ!私の名前!!」


俺「はい」

南城さんへストラップを渡す


南城「ありがと!!えへへ……プレゼント貰っちゃった///」


最後の一袋にはmobと文字が入っているストラップが入ってた


お、お揃いか……?


堀北「私がお願いしたものかしら……」


俺「そ、そうなの?」


堀北「ええ、三人でここに来た記念にね。何かお揃いのお土産が欲しいなって」


南城「さすが春香!ナイスアイディアだよ!」


堀北「こんな素敵なモノを選んでくれるなんて……嬉しいわ」


俺「いや、えっと……喜んでもらえてよかったよ」

おい!過去の俺よ!

なんでこんなレベルの高いモノ選んだんだよ!

名前入りとか、重いだろ⁉


でも……

名前入りストラップを見つめる二人は今日一番の笑顔だ、と思う


ピンポンパンポーン


アナウンス「まもなく本日の営業時間が終了致します。ご来場の皆様、速やかにゲートからご退園ください」


俺「そろそろ帰ろっか」


南城「うん!」


堀北「楽しい時間だったわ」


俺「よかったね」

あんまり夕方以降の出来事は覚えてないんだけど……


南城「また来たいね!」


堀北「そうね」

その時は俺じゃなくて四季島を誘ってあげてくれないかなぁ……


遊園地を出て思い出す


俺「あ、そうだ……家に電話しないと」


スマホを取り出しすと

着信履歴が6件も入っていた⁉

母さんから2回と妹4回⁉

なんだ?何かあったのか?

普段妹は電話してこないのに……

とりあえず母さんに電話するか


プルルルルプルルルル


母『ちょっとあんた今どこで何してるの!』


俺「ごめん母さん」


母『無事なのね?』


俺「うん。大丈夫、ちょっと遊園地来ててさ」


母『遊園地?』


俺「そうそう。遊ぶのに夢中で気付かなかったよ」


母『そう……遊び行くなら言っておいてよ?心配するじゃない』


俺「うん。気を付けるよ。それはそうと、妹は?」


母『ソコにいるわよ?変わる?』


俺「いや、いるならいいんだ。着信入ってたからどうしたのかなって」


母『そりゃ心配してたのよ、帰りが遅いって』


俺「そっか……直ぐ帰るって伝えてもらっていい?」


母『自分で伝えなさいよ、それぐらい』

ガサゴソとノイズが入って


妹『おにー?』


俺「ああ、心配かけたな」


妹『もう帰ってくるの?』


俺「ああ帰るぞ。これから電車乗るから1時間くらいはかかるけど、日付変わる前には帰れるよ」


妹『わかった。待ってる』


俺「いや、先寝てていいぞ?」


妹『待ってるから、急いで帰ってきて』


俺「ん?まぁ出来るだけ急いで帰るよ。それじゃ、もう駅だから」


妹『うん』


ツーツーツー


南城「怒られちゃった?」


俺「ん?いや、大丈夫大丈夫」


堀北「ごめんなさいね」


俺「大丈夫だって」










電車に乗って帰宅すると

廊下に仁王立ちで待っていた妹に出迎えられた

あ~……これは大分怒ってるなぁ……


俺「ただい」


妹「遅い!」


俺「ごめんって、それより明日も学校だろ?早く寝ないと」


妹「……埋め合わせ」


俺「わかったよ。何がいいか考えといてくれ。出来るだけ叶えるよ」


妹「約束だからね!」


俺「ああ、約束するよ」

でも今日はさっさと風呂入って寝よ……


母「お風呂準備出来てるわよ~」


俺「ありがと」


母「それで、今日は誰と遊園地行ってたの?」


俺「誰とって友達とだよ」


母「ふーん。電話に気付かない程楽しかったのね~」


俺「後で説明するから……先に風呂入らせてくんない?」


母「絶対よ?」


俺「うん。眠いから手短にだけど」


母「それはアンタの話し方次第ね~」

めんどくせぇー……

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