第44話 遊園地 その15

特殊部隊のようにヘリから次々と黒スーツの人たちが降りてくる

「太一様、ご無事ですか!?」


四季島「ああ、カイトか。よく来てくれた」


カイト「はい。太一様、いったい何があったんですか?」


四季島「説明は後だ。今はそこの出来損ない達の始末が先だ」


カイト「出来損ない、ですか?」


四季島「そうだ。そこの有象無象は後天的に名を得た、元名前無しmobだ」

元名前無し⁉

そんなのあり得るのか⁉



あ、そうそう

俺はというと、Rさん?の手当てのおかげで大分楽になってきてるんだ


凄いな……この子もmobなのに

四季島が好きじゃなきゃ、最高なのに……


俺「ありがとう、だいぶ楽になったよ」


R「アナタの為にやったわけではありませんから。四季島くんにお願いされたから仕方なく、ですから」

お、おう

知ってる


俺「それでもありがと、助かったよ」

起き上がろうとしたがやっぱりまだ痛みは残ってるな


R「まだ動かないでくれる?悪化したらどうすんのよ」


俺「う、うん。ごめん」

もう少し、優しく言ってくれないかなぁ……


四季島「さて、こっちも人数が揃ったことだし、これからは俺のターンってことでいいよな?」


山田「ハッ!たった3人雑魚mobが増えた程度で何が出来る?」


四季島「彼らは父上のSPの中でも有能な3人だ。父上はホント過保護だよ」


カイト「私は社長のSPの統括を任されております、カイトと申します」

名乗ったはいいけど、カイトさんはmobだ

ハッキリ言って名前持ちに勝てる気はしない……

それに、名前無しが名乗ったところで自称でしかないし……



SP男「私は統括の補佐、ヤマトでございます」

このヤマトさんもmob……

いくらSPって仕事してるからって、無敵な訳じゃないよな……

大丈夫なのか?


SP女「私は遊撃隊副隊長、ルリです」

この人、女の人だったのか⁉

見た目じゃ判断できなかったな

全員同じ格好してるし、他の二人が男の人だからこの人も男かと思った……


四季島の助っ人はSPの三人(全員mob)

そして、相手は山田率いる不良13人……

こんなの圧倒的に不利だ!

でも、なんで四季島は余裕そうなんだ?


山田「オメーら、さっさと片付けっぞ」


不良達「うっす!!」


四季島「出来損ないの相手は三人に任せるよ。ボスは俺がやる」


SP達「はい!」


二つの勢力がぶつかる


不良たちは各々武器を取り出した

多いのは折りたたみ式のナイフだ

あんなものを遊園地に持ち込むなんて、何考えてんだよ

伸縮式の警棒みたいなの持ってるやつまでいる……

どこに隠し持って入ったんだよ!


SPの3人は武器らしい武器は持っていない?

それとも何か隠し持ってるのか?


ナイフを持った不良の一人がカイトさんに上段から切りかかる

しかし、カイトさんは相手の手首を掴み、背負い投げ?のように地面にたたきつけた

ナイフを持った相手に怯まないって……


一方3人の不良に取り囲まれたルリさんは

突き出されたナイフをギリギリで躱し、伸びきった相手の腕を取り

脇に抱え体ごと捻る

パキンッという音と共に不良が叫び声を上げる

あの一瞬で、折ったの⁉

その様子を見ていた残りの不良が怯む

目の前で一切の躊躇いなく腕をへし折る女性、それが怖くない人はいないだろう


そして、もう一人

ヤマトさんの方はひと際大勢に取り囲まれていた


ヤマトさんの体格が大きいから、危険人物って認識なのかな


6人がかりで取り囲まれているヤマトさん

下手したらケガじゃ済まないんじゃ……


しかし、俺の心配は杞憂だった


ヤマト「ふんぬっ!!」

大きな体から繰り出される拳が不良の腹を捉えた

くの字に折れ曲がり、それでも勢いは衰えず2メートルくらい吹っ飛ぶ不良

それを目で追っている間に2人目、3人目と同じ様に吹っ飛んでいく

あっという間に3人倒しちゃった……

強い……規格外の強さだ……

あの人たちって、ホントにmobなの?

mobの振りした名前持ちなんじゃないの?

それほどまでに圧倒的な強さで不良達を倒していく


山田「チッ、使えねーな」


四季島「さて、一応聞いておこう。何故こんな事を?」


山田「楽しいからさ」


四季島「そうか。お前は、更生の見込み無しって事でいいのかな」


山田「更生?するわけねーだろ!馬鹿にすんじゃねーよ!」

いきなり四季島に殴り掛かる山田

そのポーズ、動きは見覚えのあるモノだった

あれは、ボクシングだ

山田が右ストレートを放つ、しかも顔面目掛けて

当たれば骨折してもおかしくないようなパンチだ


そう、当たれば


四季島は顔を少し傾けるだけで難なく躱す

そして、今度は四季島が山田の顎目掛け拳を打ち上げた

真下から顎へ当たる拳、鈍い音と共に山田がのけ反る


その隙を見逃さず四季島は

今度は掌を山田の腹へ打ち付ける

これって掌底?

無防備な腹への衝撃に今度は前屈みになる山田


頭の位置が下がった所へ回し蹴りが炸裂した

格ゲーかなんかのコンボ技?


頭部へ受けた衝撃に耐えられず倒れる山田

しかし、意識は残っていて直ぐに立ち上がろうとする


山田「ぐっ……くそが……この程度で俺が、やられると思ったか!」

気合で立ち上がりファイティングポーズをとる


四季島「さすが、名前持ちだな。まだ立てるのか」


山田「この程度で、どうにかなるかよ」


四季島「なら、次は……こういうのはどうかな?」

サッと四季島が山田に接近しパンチと見せかけて

山田の膝に蹴りを入れる


山田「ぐぁ!」

急に来た関節への衝撃で山田は膝を着く


山田「きたねーぞ!」


四季島「いつ誰が正々堂々闘うなんて言った?」

膝を着いた山田の顔面へ容赦なく膝蹴りを見舞う



山田は呻き声を上げ仰向けに倒れる


そこへツカツカと歩み寄る四季島


あんまりにも……一方的だ

山田は何の抵抗できず攻撃を受けている

四季島ってこんなに強いのか……


山田「ひっ……」

さっきまで余裕そうにしていたのが嘘のように怯えた声を上げる


そういえば他の不良たちは……

全員倒されていた

名前無し?のSP3人で10人以上の不良をあっという間に制圧し終わってた……


いつの間にか南城さんと堀北さんを拘束してた不良も地面に倒れていた


もう、残ったのは山田一人だけだ


それもボロボロにやられている


良かった……これで万事解決かな……


安心して四季島と山田の闘いを見守る

すると山田が俺を見た、気がした

気のせいだよな?


山田「うおぉぉぉ!!」


山田が素早いステップで四季島へ向かっていく

四季島はスッと避けて足をかける

たったそれだけで山田は転んで倒れる

膝へ食らった蹴りのダメージが効いてるのか?


しかし、山田は転がった勢いをそのままに俺の方へ向かって来た⁉

咄嗟にRさんを突き飛ばす

その反動を利用して動く!

はずだったのに、思ったように体は動いてくれない

結果、Rさんを突き飛ばしただけで俺はその場に動けずにいた


そこへ山田が突っ込んで来た


山田が俺へ覆いかぶさる


俺にだけ聞こえる声で

山田「テメーだけは絶対に殺す」


逃げなきゃ!

這ってでも離れないと!

背中を向けて逃げようとした所に、腕を首へ回されて絞められる

俺「ぐぇ……」


そのまま俺ごと立ち上がり四季島に向き直る


山田「はぁはぁ…こいつがどうなってもいいのか?」


四季島「人質か……」


山田「お前のライバルなんだろ……殺されたくなければそこを動くな」

四季島……


俺「構う、な……」

どうせこいつは俺を殺すつもりだ……


四季島「俺もそうしたいのは山々なんだが、お前が死ぬと千秋ちゃんも春香ちゃんも悲しむからな……」

そう言って両手を上げて降参のポーズをとる

嘘、だろ⁉


山田「そこ動くんじゃねーぞ!一歩でも動けばコイツを殺すからな!」


カイト「どうしますか?」


四季島「あの男子は死なせたくないから」


カイト「畏まりました」


山田「俺の安全が確保できるまで一緒に居てもらうぜ?」

くそ……全然力が入んない……


山田「あばよ!必ずこの借りは返すからな!覚えていやがれ!」


俺の首の手を回したままその場を離れようと後退する

このまま、連れてかれるくらいなら……

この場で……!


俺「うーーー、がぁーーーーー!」

精一杯の力で暴れる

しかし、まるで子供と大人の様な力の差でビクともしない


山田「大人しくしてろ!クソ雑魚が!!」

首を絞める腕に力が入る

息が……できない……

窒息の苦しさで更に暴れるが、腕はの力は一切緩まない


あ……ダメだ……

このままじゃ、意識が……

折角手当てしてもらったのに……


…………今度こそ

ダメっぽい………?





なんか今日はこんなんばっかだなぁ……

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