第43話 遊園地 その14

山田「俺も鬼じゃない、最後のお別れくらいさせてやろう」

お別れ……か


山田「タオル外してやれ」

南城さんと堀北さんの口を塞いでいたタオルが外される


南城「なんで!何でこんな酷いことするの⁉」


山田「酷い?何がだ?俺は名前持ちだぜ、歯向かってきたmobを消すのは当たり前だろ?」


堀北「あなたっ……」


山田「ほら、時間は有限だぞ?早くしないと殺しちまうぞ?」


南城「人でなし!」


山田「そうか。もうコイツ殺していいんだな?」


堀北「止めて!……千秋、そんな事よりも彼のことを」


南城「う、うん」


山田「逃げようとしたら、どうなるか分かってるな?」


南城「……っ」

キッと睨み付けるも山田は動じない



二人は駆け寄り地面に膝を着き覗き込む


南城「こんなボロボロに……また私のせいで……」


堀北「千秋だけのせいじゃないわ……」


南城「でも……」


俺「う、いつつ」


南城「だ、大丈夫⁉」


俺「う…ん。だいじょうぶ、だよ」

薄っすらと目を開けると南城さんと堀北さんの泣き顔があった

ああ、名前持ちを……悲しませちゃった、な……


俺「ごめ……俺、弱…から」


南城「なんで君が謝るの!私たちのせいだよ!なのに、何で……」


俺「俺、名前持ちだったら……助け」


堀北「そんなのどうでもいいの!こんな無茶して、君が死んじゃったら……私……私……」

ああ、堀北さんの泣き顔って、初めて見たな……

泣き顔もキレイ、だ……


山田「そろそろ、お別れは済んだか?」


南城「あなたの事、絶対に許さないからっ!例え名前持ちだろうと、絶対にこの世から消すんだから!」


山田「おー怖い怖い。ふははっ、出来るもんならやってみな。守られてばっかりの美少女ちゃん?」


堀北「外道!」


山田「俺は自分の権利を行使したまでだ。咎められるようなことはしてない。お前らだって邪魔なmobがいたら消すだろ?ん?」


堀北「……!」


山田「心当たりあるんだな?ははっ!まぁ、そうだろうな!」


南城「あんたなんかに何が分かるの!」


山田「邪魔者を消すのは楽しいよなぁ!」


堀北「楽しい?何言ってるの?」


山田「あ?楽しいだろ?自分こそが世界の中心だって実感が持てる!最っっ高だろ!」


堀北「私が消したのは、そうするしかなかったからよ」


山田「つまんねーな、そんな事務的に消したら可哀そうだろ?」


南城「事務的?可哀そう?」


山田「そりゃそうだろ?なんの感慨もなく消されて、存在価値が丸っきり無いみたいじゃないか」


堀北「……」


山田「さて、そろそろ気は済んだな?お別れの時間だ」


南城「させない!」


山田「さっき手も足も出なかったくせに、まだ逆らうってのか?」


堀北「彼を殺すなら、私たちを倒してからにしてもらうわ」


山田「はっ!泣かせるねぇ、だけど……無駄だ」

ハンドサインで手下の数人が南城さんと堀北さんを囲む


山田「やれ」


残りの手下が俺も元へやってくる

まるでサッカーボールを思いっきり蹴るように俺を蹴る

その瞬間……


「そこまでだ!」

ああ、誰か助けに来てくれたのか……

よかった

これで南城さんと堀北さんは無事に


山田「誰だテメーは」


「俺は四季島太一!いずれ彼女たちの彼氏になる男だ」

し、四季島⁉

なんでここに……?


山田「ほう、この女たちの彼氏?それは其処に転がってるやつじゃないのか?」


四季島「そこに無様に転がってるのは俺のライバルだ」


山田「ライバル?ハハハハハ!冗談だろ?名前持ちのくせにmobがライバル?お前どんだけ雑魚なんだよ!」


四季島「そんな事はどうでもいい。お前、春香ちゃんと千秋ちゃんを泣かしたな?」


山田「それがどうした?この後もっと鳴いてもらうつもりだぜ?きっと良い声で鳴いてくれるだろうな?」


四季島「屑がっ!」


山田「この状況で、お前一人に何が出来る?大人しくそこで指咥えて見てな」


南城「四季島くん、どうして」


四季島「君たちの危機を察知してね。駆けつけてきたよ。すぐに助けるから少し待っててね」


堀北「もしかして、彼が死ぬの待ってたんじゃ」


四季島「信用ないなぁ。そこに転がってる男には借りがあるんだ、それを返すまでは死なれたら困るんだ。だからそこの男も助けるよ、ホントは見捨てたいけどね」

貸し借りなんて……あったっけか?


四季島「おい、まだ生きてるな?」


俺「う゛……」

もう声が上手く出ない……


四季島「生きてるならいい。Rちゃんいる?」


R「いるわ!なにかしら?」

四季島の後ろからフッと一人の女子が現れる


四季島「お願いがあるんだけど、いいかな?」


R「なんでも言って!四季島くんの為なら何でもするわ!」


四季島「そこに転がってる奴、応急処置して欲しいんだ、出来るかな?」


R「え……それの?」


四季島「うん。君はそういった心得あったよね?」


R「出来るけど……」


四季島「ならお願い、ソイツにはまだ死なれたら困るんだ。Rちゃんにしか頼めない事だから」


R「もう……そんな言い方ずるいわ。わかったわ。死なないように処置してみるわ」


四季島「ありがと。今度デート行こうね」


R「デート……うん!私頑張るわ!」


四季島「さすがに多勢に無勢かな?」


山田「一人で乗り込んできて後悔したか?好きなだけ仲間呼んでもいいぜ?ただし……俺達の相手をしながらだがな。手の空いてる奴は全員参加だ、この名前持ちを潰すぞ」

手下の内2人は南城さんと堀北さんを拘束し

残りは手下13人と山田の計14人

流石にこの人数を相手にするのは……いくら名前持ちだからって


既に山田と手下13人に取り囲まれて、四季島に逃げ場はない


四季島「あんまりこの手は使いたくなかったけど、仕方ないな。今大事なのは千秋ちゃんと春香ちゃんだからね」

四季島はポケットからスマホを取り出し投げ捨てた⁉


四季島「Vちゃん、受け取って!」

まだ、居たのか⁉

四季島の取り巻きの女子が姿を現してスマホをキャッチする


V「キャッチ!四季島くんのスマホゲット!!」


四季島「電話かけるから、言った通りに操作してくれるかな?」


V「はーい!」

四季島は不良の集団に囲まれて攻撃されているのに、その全てを躱し余裕の表情でVと呼ばれた女子に指示している


四季島「通話はスピーカーで繋いでね!」


V「うん。できたよ!」

プルルルルと呼び出し音が一度鳴り、すぐに繋がった

早い⁉


『太一様、何かご用でしょうか?』

太一、様?


四季島「ああ、カナメさんか。父上いる?」


カナメ『はい。少々お待ちください……』


男性『どうした、太一』

渋く低い声がスピーカーから聞こえる


四季島「父上、手を貸してほしい」

父上?四季島のお父さん?


四季島父『ふむ?お前はいつも私の力を嫌っていたではないか』


四季島「それは……」


四季島父『……何があった?』


四季島「大切な子がピンチなんだ。俺だけじゃ、助けられそうにない……だから」


四季島父『ふむ。それは大変だな』


四季島は父親と会話しながら全ての攻撃をいなし続ける

どんだけ運動神経良いんだよ……


四季島「ああ、だから」


四季島父『それは、私が力を貸さないといけない事か?』

え……?


四季島「……違う。でも、助けてほしい」


四季島父『ならいつも通り、私にメリットを提示しなさい。そうすれば考えてやろう』


四季島「……今、それどころじゃないってのに」


四季島父『早くしなさい。私はこれから打ち合わせがあるんだ』

は、薄情な……


四季島「えっと……何か……何かないか……」

こうしてる間も殴り掛かられ、避けて

蹴られ、受け止めて

喧嘩は続いている


カナメ『一言宜しいでしょうか?』


四季島父『何かね?』


カナメ『さっさと助けてあげてはいかがでしょうか?』


四季島父『何を』


カナメ『既に手配は終わってるんでしょう?』


四季島父『……何のことかな?』


カナメ『太一様から電話がかかってきて直ぐにSPを招集しておいて、何とぼけてるんですか』


四季島父『しー!それ言っちゃダメだよ!すぐに他力本願するようになっちゃったらダメだからさ!』

な、なんか凄く……親馬鹿っぽい事言ってる?


カナメ『太一様、GPSで位置は特定済みです。直ぐにSPをそちらに向かわせます』


四季島父『カナメくん⁉』


四季島「ありがとう、カナメさん」


四季島父『今回は特別だからな、心するように』


四季島「ありがとうございます、父上」


通話が終わり、四季島が喧嘩に集中する

さっきより避ける時の距離が小さい?

それに動きが素早くなって……


数分した所で

バラバラバラバラとヘリの音が聞こえてくる

途轍もなく明るいライトが四季島達を照らす



そして、ヘリの扉が開き数人の黒スーツの男たちがロープで降下してきた


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