第35話 遊園地 その6
間に合った……
何とか二人を追いかけてショーが行われる会場へ到着した俺が目にしたのは
大きなテントだった
移動サーカスとかで使っているようなテントが広場の真ん中に建てられていた
南城「大きいね!」
堀北「ここで何をするのかしら、楽しみね」
南城さんはワクワクをした表情を、堀北さんは絶叫系ではない安心感を
そして俺は、ショーを観るだけなのに一抹の不安を感じている
職員「間もなく特別なショーが開演しま~す!入口はコチラで~す!」
声の大きなピエロに扮した職員さんがビラを配りながら呼び込みをしていた
痛みを堪えて小走りしたせいで疲れた俺は早く中に入りたいから二人より前に出て、ビラを受け取ろうとする
差し出されたビラに手を伸ばす
しかし
スッ、とビラをずらされて手が空を切った
え?ちょ……⁉
なんの悪戯??
ピエロ的ジョーク⁉
職員「見つけましたよ~!」
渡そうとしていたビラを手放し俺の手首を掴んだ⁉
なぜ⁉
職員「10万人目のお客様!確保しました!」
確保って、はぁ⁉
俺「え?え??」
職員「いやぁ、なかなか来ないので心配しましたよ~」
南城さんと堀北さんに助けを求めようと振り返ると
二人も既に別の職員に捕まっていた……
職員「第三のプレゼント!それは~……」
どこからかドラムロールが聞こえてくる⁉
呼び込みをしていた他の職員だった
呼び込みを止めてまでドラム叩くとか、何してんだよ⁉
職員「ショーへの特別出演です!」
職員たち「おめでとうございまーす!」
いやいやいや!
おめでとうございまーす!じゃねーよ!
強制とかじゃないんだよな?
俺は出たくないんだけど⁉
南城「凄いね!いい想い出になりそう!」
堀北「私は遠慮させて」
職員「そう言わずに!!彼氏さんも出てくれるそうですから!」
彼氏⁉誰のこと⁉
しれっと嘘吐いてんじゃねーよ!
堀北「かっ、彼氏じゃないですから……でも君が出るなら、私も出ようかしら」
赤面しながら否定するも参加を表明する
いや、俺は出たくないんだけど⁉
南城「やったー!君も一緒ならとっても楽しそう!」
俺「俺は出るとは」
職員「いやぁ、両手に華っていいですね~……羨ましいですよ、ホント」
掴んだ手首に力が入り、ギリギリと締め付ける
痛っ!
もう!
この職員、何がしたいんだよ⁉
職員「では控室へご案内しま~す」
俺「いや、だから俺は」
南城「行っくよ~!」
堀北「はぁ……仕方ないわね……」
南城さんと堀北さんは自ら、そして俺は手首を掴まれたまま連行された
案内された控室にはモニターが一つ、長机とパイプ椅子が数脚設置されていた
南城「何するんだろうなぁ、楽しみだなぁ」
南城さんが一人浮かれているが、俺と堀北さんは悩んでいた
堀北「か、彼……そう見え……いえ、でも……」
なんかブツブツ独り言言ってる?
大丈夫かな?
堀北さんってあんまり人前に出るの得意じゃなさそうなんだけど……
俺「堀北さん?」
堀北「ひゃい!」
ひゃい?
俺「大丈夫?」
堀北「だ、大丈夫よ」
俺「でも、何か顔赤くない?」
堀北「そ、そうかしら?気のせいじゃないかしら?」
いや、スゲー赤いよ……
名前持ちだから顔色の変化とか、簡単に見て取れるんだけど
俺「ほんとに大丈夫?」
堀北「大丈夫!問題ないわ」
俺「なら、いいんだけど」
堀北「そ、そういう君は大丈夫?」
俺「え、っと…人前に出るのは苦手だから」
注目されるのも苦手なんだよ
最近は二人に絡まれて、俺の注目度が上がってて……ストレスでヤバイよ
堀北「そうなのね。私も得意な方じゃないから、気持ちはわかるわ」
分かってくれるなら……もっと俺を気遣ってくれてもいいじゃん……
そんな感じ駄弁っているとアナウンスが流れ、開幕を報せた
放送「これより、魅惑のマジック&サーカスショーを開幕します。皆様、心よりお楽しみください」
マジック&サーカス?
そんな欲張りな……
南城「ワクワク!ワクワク!」
モニターを食い入るように見つめる南城さん
口でワクワク言うほど楽しみなのか……
流石に期待しすぎだと思うんだけど?
画面の中に一人に男が登場する
司会「レディースエーンジェントルメーン!これよりお見せするのは、稀代の大マジシャン
テンション高ぇ……
瞬間移動かぁ……
さっき似たようなやつみたなぁ……
ま、こっちは
さてさて、どんな演出で魅せてくれるのかな……
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