第31話 遊園地その2

南城さんを先頭に次のアトラクションへ向かう一同


堀北「次は何に乗るの?」


南城「次は乗り物じゃなくて……アレ入ろ!」


南城さんが指さす先にあったのは、ミラーハウスだった

壁が鏡で出来た迷路のアトラクションだ


俺「アレに入るのか……」


南城さんと堀北さんは、かなりの美少女だ

そんな二人と一緒に入るなんて……悪夢でしかない

見渡す限り、二人の美少女が否が応でも視界に入る……


でも……考えてみれば他の客と鉢合わせる事もないんじゃないか?

なら気楽に挑める、かな



パスを提示して列の先頭付近へ案内される


ここの係員さんはさっきみたいな音頭をとるようなことはなく、すんなりと静かに入れてくれた


係員「どうぞ、お楽しみください。各所に撮影用の隠しカメラが設置されていますので、出て来られたらカウンターへお越し下さい。写真の販売をしていますので。では行ってらっしゃーい!」


え?カメ、ラ?

そういうのはジェットコースターとかでやるもんじゃないのか⁉


南城「カメラだって!どこにあるんだろうね!」


堀北「隠しカメラって言うからには、見ても分からない様な所に設置してるんでしょうね」


そんな事を言いつつ二人は躊躇いなく中へ入って行く

俺も後に続く

少しは盗撮紛いのコレに躊躇しようよ⁉



南城「う~ん、コレどっちだろ?」


堀北「こっちかしら」


二人は相談しつつ順調に進んでいく

その後ろに俺は追従する

順調順調!

このまますんなり出口へ行って、そろそろ昼時だしお昼ご飯食べようって提案してみよう

そしたら、少しは気分も落ち着くはずだ

ストレスで食欲が無くなる前に何かしら食べておかないと……




ある程度進んだ所で、ゴツン!と南城さんが鏡に激突した!

南城「いったーい!」


堀北「大丈夫?」


南城「うん。こっちだと思ったのに……」

おでこをさすりながら振り返る

幸い赤くなる程ではなかったようで、無傷だった

しかし、少しだけ目に涙を浮かべていた


堀北「気を付けないと」

まるで我が子をしかる母親のように言う堀北さん

さすが、いつも一緒にいるだけあるなぁ


南城「うん……でも、先頭変わってくれないかな?」

いきなり俺に話しが来た⁉

え?俺が先頭歩くの?

なんで?


南城「ダメかな?」


俺「いや、ダメじゃないけど」

どちらかと言うとイヤなんだけど……


南城「ありがと……」

あれ?今ので了承の返事になるの⁉


仕方なく南城さんの代わりに先頭を歩くことに


注意深く見れば道を間違える事はない、と思う

多少入り組んでいても、基本一本道しかないみたいだからな


先頭を歩いていると、どうしても鏡に映った南城さんと堀北さんの顔が目に入る

さっきまで後ろ姿だけだったから、まだよかったんだけど……


二人とも凄くワクワクした表情を浮かべてるなぁ……

こんな子供騙しの何がそんなに楽しいんだろうな……

こんな所、早く出てしまおう!そうしよう!


少しペースを上げて、ゴールへ向かう


スタスタスタと歩き


あっさりゴールへ辿り着き外へ出る

ほっ、やっと出口だ!


係員「ゴールおめでとうございます!写真はこちらでーす!」

あ、そうだった中で写真撮られるんだった!

すっかり失念していた!!


変な写真が無ければいいけど……



画面に映し出された画像には斜め上や真上、正面、左右の壁側からとローアングル以外の角度からの写真が並んで表示されていた

その中に何故か、南城さんの顔がアップで写っているモノがあった


南城「な、何で私だけ⁉」


堀北「これ……千秋が頭ぶつけた所じゃない?」


南城「え?…あ!ほんとだーーー!」

よりにもよってそんな場面を撮られるなんて……さすが名前持ちだな……


南城「うー……恥ずかしいよぉ!」


堀北「でも、想い出に残るわね。私その写真にしようから」


南城「えーー⁉やめて!」


堀北「それと、この写真も」

南城さんの制止を無視し写真を頼む堀北さん

なんとなーくジェットコースターの恨みをぶつけてるような気がする……


南城「うー……」

若干不貞腐れた表情を浮かべる南城さん

そんな顔すら可愛いとしか言いようがないなんて、つくづく名前持ちって存在は凄いなと感心するよ



堀北「千秋、この写真なんか良く撮れてると思うわよ?」


南城「今度は何⁉また変な写真⁉」


堀北「違うわよ、ほらコレ」


南城「あ、コレって……」


俺は買うつもりはないが、どんな画像があるのか心配になったからそーっと背後から覗き込む

南城さんと堀北さんが見てるのは俺が写っているモノだった

しかし、それは俺が写っているわけじゃなかった⁉


その画像は俺と南城さんのツーショットだった


多分堀北さんは死角に入っていて映らなかったんだろうな……


さっきまでと打って変わって南城さんの表情は明るくなった

そして俺の気分は再び落ち込んだ


南城「私コレにする!」


係員「はーい。では、こちらとこちらとこちらでよろしいですか?」


南城「はい!」


係員「お連れの方は……」


俺「あ、俺は結構ですので」


係員「そうですか。ではこちらの方ご用意しますので、2、3分ほどお待ちください」



係員さんに注文を終えて、南城さんが次の行き先をマップを広げて探しだす


俺「あのさ、提案なんだけど」


堀北「なにかしら?」


俺「そろそろ昼時だし、ご飯にしない?」


堀北「そうね。そうしましょう」


南城「え~!もっと乗ってからでも」

子供か!

すかさず堀北さんが南城さんに耳打ちする


すると、南城さんはハッとした顔をしてコクコクを頷く

一体何を吹き込んでるんだ……?


南城「うん!お昼にしよ!」


俺「う、うん」



堀北さんが何を言ったのかは分からないが、無事に昼休憩に入れそうだ


流石に昼飯食べるだけだし、なんのイベントも起きないよな?


学校と違って、針の筵のような状況にはなりようがないしな……

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