出れなくなりました。助けてください。

ミュル「………はい。皆さま、こんばんは……」


ミュル「怪盗のミュルです………」


ミュル「えー、単刀直入に言います」


ミュル「この屋敷から出れなくなりました!助けてください!」


ミュル「『嘘だぁ』と思ってるでしょ?じゃぁ、これを見て!」



(まるで新品のような窓ガラスが映し出される)



ミュル「どう!?……まさか『ほえ~静かな夜景だなぁ…』とか思ってないでしょうね?」


ミュル「あ、そうだ。動画を見ていない方もいるかもしれないから説明すると………私はこの寂れた屋敷に眠っている高価なお宝を見つけるために侵入したんだけど……」


ミュル「玄関と裏口には鍵が掛かっていて入れなかったから二階の窓を割って登ってこの部屋に来たの」


ミュル「さて、ここまで聴いて感のいい視聴者ならもう異変に気付いたわよね?」


ミュル「そう!割ったはずの窓が修復されているのよ!しかもどういうわけかこの窓……」



ヒュン(足元にあった小石を投げる)


ガンッ(しかし割れずに跳ね返ってしまう)



ミュル「見ての通り………物凄く強固になったのよ!しかも窓を開けるための鍵も見つからない!」


ミュル「閉じ込められたの!一体全体何が起きたというの!?」


ミュル「警察なんて呼んだら不法侵入と窃盗罪で確実に牢屋に入れられるし……友達に助けを呼ぼうにも真夜中……夜道を歩かせるわけにはいかないわ」


ミュル「………ということで、自分で何とか脱出方法を見つけたいと思います」


ミュル「あ~辛い。これほど辛いことがあるのかしら」


ミュル「絵画を風呂敷に入れて私の身体に結んで……と」


ミュル「よしっ!」


ミュル「では………行きます!頑張って脱出するぞ~!おー!」




ミュル「階段を降りて………一階の玄関に来ました。特に異常は見られません」



ガチャガチャ(ドアノブを乱暴に回す)



ミュル「……ダメね……鍵が掛かっているわ。これは……よく脱出ゲームにある玄関の鍵を見つけないといけないのね」


ミュル「物凄くかったるいですが……四の五の言わず探します」




ミュル「ここは……ベッドルームかしら?」


ミュル「あ、サイドテーブルに本が落ちてある……」



ペラペラ(本をめくる音)



ミュル「なにこれ?白紙……何も書いてないじゃな……ん?」


ミュル「これは……何かしら?」



(本のとある1ページに書き殴ったような筆跡でこう書かれていた)


“ある女の写真の眼玉にペン先の赤いインキを注射して見る”



ミュル「何これ……君が悪い文章……」


ミュル「ある女の写真……?この屋敷の何処かにあるのかしら?」



(彼女がそう呟いた途端白紙のページに一文が浮かび上がる)


“この夫人をくびり殺して捕はれてみたしと思ふ応接間かな”



ミュル「くびり殺して捕はれてみたし……応接間……応接間!」


ミュル「応接間にあるのね!その写真が!」


ミュル「もしかしたらそれが玄関を開ける鍵かもしれない……行ってきます!」




ミュル「はい!応接間にきました!」


ミュル「何でこんなに早く来れたかというと……部屋のドアの前に『応接間』と書かれていたからです!」


ミュル「さっそく入ってみます!」



ギィ(錆びれたドアが開く音)



ミュル「こんばんは~失礼しま~す」


ミュル「って誰もいないか」


ミュル「えーと……写真……写真……」



パッ(突然ベッドランプの明かりがつく)



ミュル「うひゃぼい!!」



ドスンッ(驚きのあまり尻餅をつく)



ミュル「はぁ……何よもう……」



(近づいてみるとそこには一枚の女性が写っている写真があった)



ミュル「これは……遊園地の写真ね。楽しそうな顔しちゃって……私なんか絶賛恐怖体験中だっていうのに……」


ミュル「『ある女の写真の眼玉にペン先の赤いインキを注射して見る』……まさかこの女性の目に向けて……」


ミュル「……んなわけないか。さっ、他をあたろ……」



パッパッ(ヘッドランプの明かりが点滅する)



ミュル「なによ、今度は……」



(見ると写真があった場所に赤いペン先の万年筆が置かれていた)



ミュル「……嘘でしょ?」


ミュル「いやいやいや!!無理無理無理!絶対に無理!」



(すると点滅が激しくなり目の前に太いロープが垂れ下がる。ベッドランプの傘には血のような色で『くびり殺して』と書かれていた)



ミュル「くびり殺す………やらないと縄で絞め殺すってことね……」


ミュル「あぁ、くわばら……くわばら……ってこれは雷除けのおまじないか」


ミュル「……やるしかないか」



(懐中電灯を置き震える手で万年筆を持つ。そして片手に写真を持ちペン先を女性の無垢な眼に向ける)



ミュル「……ごめんなさい」



ザクッ(ペン先が女性の瞳を貫く)


アアァァァァァァァァ(どういうわけか部屋中に耳がつんざくような悲鳴が響き渡る)



ミュル「なになになに!?一体何が起きてるっていうの!?」


ミュル「急いでここを出ないと……私の身が危ない!」



バタバタバタバタ(無我夢中で玄関前まで駆けていく)



ミュル「はぁ……はぁ……はぁ……」



ガチャ(玄関扉の鍵がかかっている音)



ミュル「え?」



ガチャガチャガチャガチャ(何度も何度もドアノブを押したり引いたりするが開かない)



ミュル「どうして!?指示通りにしたのに!?なんで?なんで?なんで!?」



(すると扉に文字が浮かび上がる)


"ある名をば叮嚀ていねいに書き

ていねいに抹殺をして焼きすてる心"



ミュル「また暗号!?今度は一体なによ!?」



ピカッゴロゴロゴロゴロ(雷が轟く)



ミュル「きゃぁ!!」


ミュル「一体何なのよ……ん?」



(ミュルの足元に羊皮紙と羽根付きペン、そして使い込まれた斧が置かれていた)



ミュル「何でこんなところに……」



(拾い上げるとそこにはやたら綺麗な筆跡で一文だけ書かれていた)


"絵画の名を紙に刻め"



ミュル「名って………まさか私が持っている絵画おたから!?」


ミュル「嫌よ!絶対に壊すもんですか!これを売れば億万長者に…」



ピカッゴロゴロゴロゴロ(先程よりさらに強く雷が轟く)



ミュル「ひゃぁ!」


ミュル「はぁ……はぁ……分かったわよ」


ミュル「書けばいいんでしょ!?絵画の女性の名を!壊せばいいんでしょ!?年季の入った斧で!」



ガタッ ガサガサガサガサ(背中にある絵画を降ろし乱暴に包みを開ける)



ミュル「えーと……この絵画の名は……どこにあるのかしら……わからないわ」



(絵画の女性のおでこに英字があぶり出しのように現れる)


"Tilia"



ミュル「……ティリア……それがこの絵画の名ね……分かったわ」


ミュル「英語でいいのかしら……T…I…L…I…A!!」


ミュル「後は……斧で……この絵画を……」



(小刻みに震えながら斧を持つ)



ミュル「うぅ……やだぁ……」


ミュル「だって……もしこれが1億ぐらいの値だったらさ……今、私がやろうとしていることはピラミッド型に積まれた札束を切り刻むようなもの…」


ミュル「1億円が無駄に……」


ミュル「やっぱ、無理!私にはできない!」



ピカッゴロゴロゴロゴロ(今まで一番強い雷が落ちる)



ミュル「ぷりゃひゃ!!」


ミュル「はぁ……ええ。分かった。分かったから!もうこれ以上私のおへそを取ろうとしないでちょうだい!」



(大袈裟に深呼吸をして斧を振り上げる)



ミュル「い……いくわよ……」


ミュル「せい!!」



ガンッ(斧の刃が絵画の女性の全身を真っ二つになるように突き刺さる)


アアァァァァァァァァァ(すると再び以前よりも力強い叫び声が聞こえてきた)



ミュル「あぁ!もう!うるさ……」



(絵画を見ると斧が刺さっている箇所から血のようなものが滲み出している。さらにその女性の首元に歪んだ文字が現れる)


"焼きすてる"



ミュル「……焼きすてる?……この絵画を燃やすってこと?でも、どうやって………あっ!」


ミュル「そうだ……応接間!応接間に暖炉があった!そこで燃やせば……」


ミュル「でも燃やすものないし……」



コトッ(足元近くで何かが落ちる)



ミュル「………ん?」



(見るとそこにはマッチ一箱があった)



ミュル「なるほど……これでつけろってことね……分かった。つけるわ。もう躊躇しないから」


ミュル「では、みなさん……行ってきます」




ミュル「はい。応接間に戻ってきました……ふぅ……」


ミュル「それではみなさん…今から私はこの暖炉に放り投げた呪われた絵画を……マッチで火をつけて燃やしたいと思います」


ミュル「あ、ちなみに斧は外しときました……持っていくのが大変なので……」


ミュル「では……行きます!!」



シュッ(マッチを擦る音)


バッ カコン(点火したマッチを暖炉に放り込む)


パチパチパチパチ(火はどんどん絵画に侵食していく)



ミュル「はい……今……燃えていますが……何も起きないですね……」


ミュル「成功したのかしら……?」



アアアアアアアアアアアアアアア(怒号にも近い断末魔が応接間中に響き渡る)



ミュル「うるさ!耳を塞がないと鼓膜がやられる!」



パッ(応接間に明かりが灯る)



ミュル「……あれ?明るくなった?なんで……?」



(暖炉を見ると燃えていたはずの絵画が神隠しにあったかのように消えていた)



ミュル「な、ない!?」


ミュル「もしかして……浄化されたのかしら……」


ミュル「それだったらいいけど……」


ミュル「ここは……もう用済みなのかしら?」



(ヘッドランプが何度も点滅する)



ミュル「……では、また玄関の方に行きたいと思います」




ミュル「はい!戻ってきました……」


ミュル「不思議なことに……ここにも電気が通っていてとても明るいです」


ミュル「しかも……さっきここに置いておいた斧が消えています……」


ミュル「これはどういうことなのでしょうか?……って視聴者のみんなに聞いてみても知ってるわけないか……」


ミュル「まぁ、そんなことは置いといて……もしかしたらドアが開いているかもしれないので開たいと思います」



ガチャ (ドアノブを回す)


ギィ(すんなりとドアが開く)



ミュル「あれ!?開いた!?本当に開きました!!」


ミュル「えっと……では、もう速やかにここから出たいと思います!」




ミュル「はぁ……はぁ……はぁ……」


ミュル「……はい……今、私は動画のオープニングにいた森にいます……」


ミュル「えー何とか抜け出すことに成功しました……よかったぁ……」


ミュル「あ、少し不思議に思うことがあるんだけど……聴いてくれる?」


ミュル「屋敷では私を脅すように散々雷が鳴っていたんだけど……全く雨が降った形跡がないのよ……」


ミュル「あ、でもここだと雨が降った跡があるんだけど……屋敷の…庭っていうのかしら…乾いていたのよ。まるで雨が屋敷を避けているかのように……」


ミュル「……まぁ、考えすぎか!兎にも角にも助かってよかった!」


ミュル「ということで、如何だったでしょうか!」


ミュル「あ、ちなみに今日からこんな感じの動画を毎日投稿しますので、もしよかったら高評価とチャンネル登録よろしくね!」


ミュル「それじゃぁ……バイバ〜イ!」


ミュル「今日は死ぬほど疲れたので帰ったら寝ます!」

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