【日常編】Chapter4 再生数が伸びない……

癒苗から「動画を見てみたい」と言われましたので、花果は携帯電話を取り出し、動画投稿サイトを開いて自分のチャンネルにアップロードした動画や生放送のアーカイブを彼女に見せました。


とはいっても、まだ活動してからほんの少ししか経っていませんので、二つだけですが。


あっという間に見終えますと、癒苗は演劇を鑑賞した観客オーディエンスのような拍手をしました。


「すごいじゃない!まるで一本の映画を見ているようだったわ……これ絶対に伸びるわよ!」


親友に褒めちぎられて嬉しいのでしょうか、花果は氷が溶けて量が増えたお酒を一口飲みました。


「ありがと。でも、再生数がいまいち伸びないのよね……その証拠に……ほら!3回!3回しか見てくれていないのよ!?あ、でもちょっとまって……これって私が見た回数も含まれるのかしら?もし、そうなら………0!?誰も見てないってこと!?そんな……あんまりよ!」


よほどショックだったのでしょうか、花果はまるで現実逃避するようにうつ伏せになり、寝息を立て始めました。

彼女は辛いことや悲しいことがあった時はいつもこうするのです。

それを何回も見てきた癒苗は手慣れた様子で彼女の頭を撫でながら慰めます。


「まぁまぁ、そんな悲しむことはないわよ。再生数が伸びないのは仕方ないこと。だって、まだデビューしてから間もないでしょ?大事なのは、それが一番肝心よ。そうね………毎日投稿してみたら?二十日はつか間ぐらい。今のところ花果は五日に一本ぐらいのペースで投稿してるけど……本数を上げればもしかしたら見てくれるかもしれないわよ。ただ、博物館や美術館の物を盗むだけじゃ、視聴者が飽きると思うから……そうだ!」


家苗は何かを閃き、ポシェットから携帯電話を取り出しました。そして、目にも留まらぬ速さで指を動かします。


「お店が暇な時に見つけたのよね……えーと、どこだったかしら……あった!ほら、起きて!これよ!」


今にも夢の世界に没入してしまいそうな花果を叩き起こしますと、寝ぼけ眼の彼女に無理矢理サングラスをかけてから携帯電話の画面を目の前まで突きつけました。


花果はしばらくの間首を傾げながらそこに書かれている内容を見ていました。


「………誰も踏みこまない………禁じられた場所………20選……?」


彼女が意識がぼやけているなか何となく目に捉えたタイトルを読み上げますと、癒苗は瞼を上げ瞳を輝かせながら大きく頷きました。


「そう!そこに載っている場所は物騒な噂が多いんだけど、もの凄く価値がある芸術品や造形物が眠っているんだって!どう?これなら多くの視聴者を獲得できそうじゃない?」


花果は癒苗の勢いに若干押されながらも「いいね……じゃぁ、さっそく明日からやってみる」と寝言のように呟いた後、そのまま熟睡してしまいました。

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