第49話

「では授業を始める」


「「死ねぇぇぇぇぇぇぇクソ講師ぃぃぃぃぃ!!!」」


混沌。

完全に殺気立って今にも殺しにかかってきそうな生徒達が席に強制的に座らされて大声を上げる。

だが彼ら彼女は動けないのだ、どんなに頑張って離れようとしても動こうとした場合隣の女子と強制的にラッキースケベが発生するのだ。






ほんの数十秒前、朝チュン(仮)が発生し何故かズタボロになって出てきた二人は素早く教室に戻った。

一刻も早く今回このようなことをした新人講師を叩きのめすためである。

そのときにはもう五限目が始まっていたし誠は昼休みを終えて空腹を感じながらも教壇に立っていた。


「死に晒せぇぇぇぇぇぇ!!『雷光よ、我に力を与えよ、敵を穿て』ライトシューティング!!」


ズバァァッァン。

教室に入るなり攻撃魔術、下位の物で威力は低いが結構痛いそれを容赦なくぶっ放した青側の男子生徒の代表、アルマイトは煙に包まれる教壇を睨みつける。


「クソ講師め、あんなことをした報いだ!!」


「そうよ!私がこんな奴と一緒に寝るなんで死んだほうがマジだわ!!」


ツンとした態度で煌びやかな金髪を揺らして赤側の女子生徒の代表、ルーレルはキンとした声で嫌そうに言った。


「そんなに嫌なのか」


「嫌に決まってるじゃない、こんな野郎となんかーーって貴方一体!?


思わず突然背後に現れた誠に彼女は呟く。

攻撃魔術といっても所詮まじゅちゅとバカにされるようなものだ、超集中を使った彼からすればゆっくりと飛んでくるように見える。

そんな誠は少女の背後でメモ帳に書かれた授業メニュー(死なない程度に頑張ろうと書かれている)に鬼畜メニューを書き込んでいく。


「死んだほうがマシなのか。じゃあ授業のメニューをもっと鬼畜仕様にするか......」


「『雷光よ、穿て』!!」


ほぼゼロ距離発射、少女の指先から放たれた第一位の下位の中の下位魔術、『ライトシューティング』はまっすぐと誠の頭部へと向けて放たれーー


「あバッバババッバババババッイッテェな!?殺す気かよ、下位魔術と言っても痛いもんは痛いんだぞ!?」


「「『雷光よーー』」」


「殺意高すぎだろお前ら!?」


まるで害虫の中の害虫と称される黒光りする虫のように誠はときに飛び跳ねとき転がり回り回避していた。

その上突然止まったかと思えば謎の理論を振りかざし倫理的な発言を思わせてふざけたことを言ってのけるのだ。

例えばーー


「そもそも教師が生徒に暗示魔術をかけたりするのは常識的におかしいだろ!!ぶっ殺す!!」


と、アルマイトが叫ぶと同時に神聖なる伝統ある教壇の歴史ある机に誠は土足で上がって両手をバット仰々しく広げる。


「おいお前らその話は矛盾してるぞ!!暗示魔術がダメ?ふざけんなテメェら暴れまわった挙句授業を始めなかった、その上私闘を基本禁じられてる学院で堂々と無条件魔術ブッパ、そんな武力で暴走している生徒が何か言う権利があると思うとでも!?」


「なっ......だからって暗示や洗脳を使うのはおかしいだろ!!」


「学院法第七十七条、生徒間の私闘を極力禁じ、教師の許可がなければいけない。場合によっては講師が武力行使に出ることも許可する......俺は武力行使をせずにやさしーくしてやったのにお前らは恩知らずだなぁ......」


「すっすまん......って待て、カニバルの野郎が俺らをすでに気絶させていたからお前が催眠系の魔術を使う必要性がないだろう!!」


「お前らは一つ失念してることがあるぞ......それも重要な事だ」


ビシッと指をさして誠は真剣な顔で言った。

その姿は大変堂々としていて生徒たちは思わず雰囲気に飲まれ静止する。

かく言う誠は手を頭部に乗せて舌を口の端から出してーー


「面白そうだったからつい、てへッ☆」


てへぺろッっとわざとらしい動作で誠が言うと生徒たちは一斉に左手を壇上でテヘッごっめーん、と煽るように言う彼に向けて、


「「死ねぇっぇぇぇぇぇクソ講師!!!」


クラス中が攻撃魔術を放ち誠は笑いながら超集中を使用し、避ける避ける避ける。

その上もう特大に燃えた火に燃料を投下するように誠は一言。


「そういえばいい忘れてたけど学院法第七十七条は予算のやりくりに関するルールであって生徒に対する武力行使とかは第八条ですよーここテストに出ますからねー......あっまさか知らなかったのー?ねぇねぇ今どんな気持ち?嘘つかれてたのになんか納得した雰囲気出して......ねぇねぇ今どんな気持ちぃ?」


うざい、その一言に尽きると強くアイスアは思った。

もうここまで炎上しては生徒達は止まらない、誰も彼もが誠に対して敵対意識を心の底から抱いていた。

だが流石にまだ学生、それも落ちこぼれと言われるクラスの生徒達は魔力量が少ない、もう既に数分たっており誰も彼もが疲労困憊といった様子でだるそうにしていた。


「さてと、俺の自己紹介がまだだったけど俺の名前は信条誠、皆、よろぴくね!(ハート)」


うざくきもく鬱陶しく、人が言われて傷つく三箇条を率先して行う誠に生徒達の意見はーー


「(きっきもち悪ぅぅぅ)」


と、赤青違わず一致した。

このクラスが発足してから数十週、なんと遂に赤青の意見が一寸違わず一致したのだ。

そんな感動的なシーンだが生徒達は迷わず魔術を撃ち続けるし誠はぬらりくらりと躱して行く。

しかも何故か誠は避ける動きがいちいち鬱陶しいのだ。

殺気立って放たれた一発の魔術を避ける際にはドヤ顔でコマ◯チとか言う生徒達から見れば見たこともないある有名なポーズで煽りーーそしてある時はフラミンゴッと寄る年波に勝てず微妙に悲鳴をあげる腰に無理をしてバレー選手のような動きをしてキラッ☆とウインクしたり。

いつしか生徒達は白熱し、いつしかこの時間を心のそこから楽しんでいたーー


そしてーー


「うるさいぞ貴様ら!!」


と、やはり隣のクラスの担任で騒音で迷惑を被ったカニバルによって水弾制裁をされるのであった。



誠の講師生活二日目、今日も今日とて赤と青の生徒たちは争っていた。

そしてカニバルに仕留められて平和である。

誠は誠でミウが作った黒炭をなんとか食して腹を壊した。

無論笑顔を保ったので翌日も彼女は同じ物を作ることだろう。


誠の講師生活三日目、生徒たち同士の喧嘩が終了した。

朝の時間は平和でカニバルの負担が減った、毎朝怒り散らすのも疲れるのだ。

講師三日目の誠は誠で普通に授業をやろうとするのだが授業の時間になると同時に魔術を使われとてもじゃないが授業などできなかった。

ミウの作った料理は相変わらず地獄を具現化したような炭であった。

誠の胃の細胞が死滅するかと錯覚するほどだった。

何やら生徒達が放課後に集会を開いていたらしい。


誠の講師生活四日目、なんと先日の放課後、赤側と青側の臨時共闘協定が結ばれたのだ。

数週間争い続けていたはずの生徒たちは今になって共通の敵に対しての敵対意識で同盟を結んだのだ。

だが相変わらず協力攻撃しようと魔王戦やら過去の魔王軍幹部などと一応戦った誠に一撃も当たることなく放課後を迎えた。

何やら学習したのかクラスに高度の防音魔術を貼ったらしい、誠は生徒達の成長に軽く感動した。


誠の講師生活五日目、遂に生徒達が誠が行おうとしていた授業を聞くようになった。


「(あぁ、やっと講師してるって感じがする)」


よくよく思えば先日まで始末書の処理に没頭していたのだ。

隣のクラスへの迷惑や、生徒達が行う実験のわかりやすい意図的な失敗による資材の喪失、学院長がやったボカなどetc。数えれば数えるほど出てくるそれに誠は忙殺されていた。


「じゃあ授業を始めるぞー」


「「はーい!」」


誠の声に楽しげな声で生徒達は反応する。

とても数日前に争いあっていた生徒達とはとても思えないような状況に思わず誠は涙ぐんだ。

ミウが用意した新人講師の為の情報というのを利用し、誠は今まで授業の計画を行なっていた。

その最初として、誠は黒板に二文字こう書いた。


『体育』


フッと自信ありげに誠は振り向く、すると生徒達が引き攣った顔を浮かべていた。

今何か口に触れた気がするがおそらく気のせいだろう。

構わず誠は右手を前に伸ばすが何か柔らかな感触がーー


「こっこの変態ぃ!!」


刹那、眼前に女子側の代表である女生徒が肩を抱いて涙目になっていた。

どうやら先ほどまで透明化の魔術を使っていたらしい、透明化といっても見た目が透明となるだけで質量をゼロにする術ではない。

なので誠が触れたのはおそらくーー


「(あっ絶対面倒くさいやつだこれ)」


「こっ講師がセクハラするなんて......!!とても許せません!!」


「いやちょっと待て、勝手に透明化して前に全裸待機してたのにセクハラもクソもないだろガール?」


全裸ではない制服は着ている、言葉の綾だ。

ただ単に透明だからそれは全裸と同義なのではという話なのだ。


「全部あなたのせいじゃない!!」


ひしっと誠は彼女の一言に思考を止める。

それに勝手に自分の眼前に飛び出て唇を当てたりするなどどう考えようとクソ野郎である。

いつしかのシンジとか言うクソ野郎の理不尽と重なって思わず誠はジト目を向ける。


「うるさい黙れっ......」


多少怒気を孕んだ声で誠が怒鳴ると女生徒と教室内に居た攻撃準備をしていた生徒達が黙り込む。


「ーーて言うところだけど俺がいっても殺気もクソもねぇからな......取り敢えず、お前ら授業するから席につけ?な?」


怒り散らして歳上の人間が子供に怒声を浴びせるのは只の愚行だ。

親としても、人としても、大人としても。

どれにしてもアウトだ、間違いなく。

なので誠は落ち着いた声で小さな子供を嗜めるように言うと、怯んだ彼女は大人しく席に着いた。


「さてと、授業を始めるが今日の科目は体育だ」


「えっえっと魔術の授業をするのでは......?」


先程から何も言わずに座り込んでいた女生徒が手をあげる。

間違いなく彼ら彼女らは魔術を学びにこの学院に来ているのである。

なのに何故新人講師ーー教育の定石に沿った授業をする筈の誠が何故いきなり体育と言うのか。

そんな雰囲気の中、誠は自信満々に一言こう言う。


「お前らもやしっ子に足りないのはーーズバリ体力だ!!」


「先生、馬鹿ですか?」


ドヤッといった誠に真面目そうな男子生徒、ランメルが不機嫌そうに言う。


「ワッツユーミーン?どっした?」


「魔術師は魔術を極め戦闘というのは魔術を使い敵を瞬間的に倒す物です。なのに体育?馬鹿なんですか?」


「じゃあじゃあその魔術で瞬間的に敵を倒すとかほざいちゃってるランメル君は俺に一撃でも当てれたかな?ねぇねぇ、ねぇ何々?俺魔術使ってなかったよ?」


「嘘だ!!あの動きはどうせ魔術を使って身体強化などして逃げてたんだろう!そうじゃなかったら俺が当てられた筈だ!!」


「はいはい。てかね、そもそもたかが身体強化を使っただけの人間にお前らは一撃も当てれたないんだから一緒だろ、違うか?」


「だっだがーー」


「当てられなくてもな別にいいんだが自分ができないことを他人に理由を擦りつけるのは楽だしいいけどお前らそれで良いの?」


自分が体験し、同じ思考でやり続けてしまった立場の人間だからせめて他人に同じことをやらせるのは誠はどうかと思った。

止められるのなら止めてやるのが世の情け、というか教師としてのせめてもの良心だろう。


「でもな、擦りつけてもダメなんだよ、結局自分は変わらないんだから」


いくらなすり付けようと自分が考えるのをやめて他人を憎んで生きるのは確かに楽なのだが相手が向上し、前へ前へと続けている中足踏みしていても憎むことだけ覚えて何もできない。

昔々ある野郎が優しく接してくれた筈の友人に文句を言って憎んだ馬鹿がいたからだ。

結局その後死ぬほど後悔したのだが後悔はしてからじゃないとできない、もう過去なのだ、後からは何も変えられない、その時のことが未だに色濃く心の中に残っていた。


だからこそと、誠は黒板に手を叩く。


「お前ら落ちこぼれとか言われてうざいだろ?見下されるのはムカつくからな、それに罵られるのもイラっとくる。間違った方法での努力をしてる人間に正しい努力をできた人間が間違った方法での努力した人間に正しい方法を教えるでもなく馬鹿にするのは余計なお世話だ、助けてやれって話。だからお前らに寛大でやっさしい俺が正しい努力、勉強の方法を教えてやる。あっでもどんな事だろうと個人差はあある、それは覚えてろ。周りに成長が遅い人間がいても百人中百人が同じことできるわけじゃないしな。わかったか?」


背中を熱魔術で焼くのもNGだし、風魔術で切るのももちろんNG。

無論そんなことをやる人間は腐りきった某クラスメイト達以外ないだろうと誠は口を閉じた。

生徒達は静かにダメ人間のように見えた誠を少し見直した。


「って事でドッチボールやろうぜ暇だし!!」


「「フザケンナこのクソ講師それ絶対お前がやりたいだけだろぉぉぉぉ!!」」


楽しそうにドヤ顔をしていた誠に向けて生徒達は一斉にツッコミを入れるのであった。

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