第11話逆転の巌流島の決闘!
「ようやく、
沢庵は、数珠を下げた手を合掌し、
「……摩訶般若波羅蜜多…(まかはんにゃはらみた)…たとえ、死罪の決まった罪人だとて、
青鬼、
「
三木之助は、ふっーっと、大きく鼻から呼吸をし、すっーと、大きく息を吐き出し呼吸を整えた。
「拙者は、円明流宮本武蔵門下、宮本三木之助にござる」
「宮本武蔵!? 巌流島において卑怯にも我が師、佐々木小次郎を
「さよう、宮本武蔵は拙者の
「ここで会ったが百年目、宮本武蔵と我が師、佐々木小次郎の因縁。積年の
赤井悪右衛門は、腰から佐々木小次郎譲りの長刀、長船長光三尺三寸(1m)を引き抜いた。
「ほう、これは珍しい
三木之助は、了戒の鯉口を切った。
赤井悪右衛門は、物干しざおの切っ先を地に這うように構えた。
互いに睨み合い額を伝う汗さえも二人の決斗には、必殺の刃の切っ掛けとなりうる。
ヒュルリ。
風が乾いていた。
風は
赤井悪右衛門は、思いがけない火の粉が目に入り、這いずる物干しざおを担ぎ上げ、三木之助へ向かって真っ向へ叩きつけて来た。
三木之助は、ヒラリかわして横合いに抜けた……刹那。赤井悪右衛門の刃はピュンと間髪入れず低空にツバメのように反転し横切りに足元を
バサリッ!
あわや! 三木之助は、間一髪に跳び
赤井悪右衛門の必殺の剣技、
「次、こそは刀の錆びにしてくれん!」
と、ペッと奥歯を噛み潰して
三木之助は、長刀に対する術を持たない。武蔵ならこの状況ならどうするかを考えた時、ある一つの枕話を思考した。
それは過って武蔵が、佐々木小次郎との決斗において如何に戦いを逆転したかである。
武蔵は、同じ剣の達人どうしの決斗において、相手の技も腰の業物も初見なれば、初刀が生死を決すると言った。佐々木小次郎は、物干しざおと呼ばれる長刀に、秘技、燕返しを操る達人だ。
武蔵が、小次郎の間合いに入れば斬られる。小次郎はしかも長刀だ、武蔵の必殺の間合いに入るには懐へ飛び込む必要がある。普通に戦えば勝ち目はない。
武蔵は策を巡らせた……。徹底的に逃げるのみ。武蔵は、兵法の三十六計逃げるに退かず。小次郎の剣風から逃げて、逃げて、逃げまくった。
「卑怯者! 逃げるだけでは決斗にならぬわ! 打つ手が無いのならこの物干しざおにおとなしく斬られよ」
絶体絶命! 巌流島の元来た浜まで追い詰められた武蔵は、真っ向へ叩きつける一撃を、乗って来た舟へ跳び移ってかわして身を隠した。
ジリリッと、小次郎が舟もろとも一刀両断に降り下ろした時、キエエーッ、武蔵が飛び上がって小次郎の物干しざおより早く額へ何かを降り下ろした。
船の
三木之助は、武蔵の例にならって物干しざおから逃げた。
「お主は、中々の剣客と見たがワシの目がまちがいであった。そうチョロチョロ逃げ惑って居るだけでは勝負にならぬわ! さすが卑怯者、武蔵の弟子だなワッハッハ」
赤井悪右衛門は
三木之助は、逆転の機略が訪れるまで何を言われようと逃げうるのみだ。
逃げた。逃げた。逃げたが、とうとう柴灯御摩の長くつづく火渡りまで追い込まれた。
物干しざお三尺三寸を天高く真っ向に構えた赤井悪右衛門が、
「覚悟いたせ、一刀の元に仕止めてやる!」
この時ばかりは、三木之助も連戦に次ぐ連戦でほとほと疲れ果てていて片膝をついて潔く斬られる覚悟をしたのだが……。
カツンッ!
赤井悪右衛門が降り下ろした真っ向の物干しざおを、三木之助は転がってかわした。赤井悪右衛門は燕返しの連続攻撃だ。しかし……
「……お主、どこから、それを」
三木之助は柴灯御摩の火渡りの炭火焼きに沈んでいた青鬼、
「絶対に諦めず運が味方したか。見事じゃ三木之助、これで了戒も一人前の刀になったわ! フヘ」
と、
「これで、すべての
沢庵和尚の言葉を聞いて緊張の糸が切れたのか、三木之助は前のめりに倒れた。
「三木之助! 」
「大丈夫じゃわい。三木之助はかわいい
と、本阿弥光悦は、自分の羽織をそっと倒れて眠る三木之助に掛けてやった。
空には、
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