214話 アイテムとの戦い②
「あがっあがぁぁぁっあがtはっ貴様っ!!」
シロネ、ユイ、エーフの三人を転送させようとした教師は後ろから腹を貫かれており、血を滴らせており目に生気が感じられなかった。
「はぁー全く、せっかく外に出られたと思ったらまだ完全な外じゃないとはねー」
その教師の後ろにいたのは、真っ白な人間をかたどった化け物がそこにいた。身長はゲルトと同じくらいだが、とにかく全身真っ白で、さらに特徴的なのはその目だ。
目元には真っ赤なラインが入っており右目に青く’H’という文字が達筆に刻まれている。左目は人間と同じような白と黒で構成された目玉をしているが、人間とは色の配置が逆だった。そして、顔に漢数字一と大きく黒字で刻まれている。
髪の毛は一切無く、体に衣類など一切着ていない裸の状態ではあったが、そのほかの人間的要素がないのでその姿は異様だった。
「お主は……」
シロネ達三人が気づいた時には、周りに駆けつけていた教師達は全員殺されており、拘束していたゲルトの体は腹が大きく裂け大量に出血しており、生きているのか死んでいるかも分からない程の重症レベルだった。
「俺かー俺ねぇ……うーん……人間が言うには”壱・ハイドゲン”と言うらしいぞ」
ハイドゲンはそう答えると貫いてた腕を引き抜き、付着した血液を振り払う。
だが、その動きを見ながらシロネ、ユイ、エーフの三人は絶句していた。
「うそ……でしょ……」
「……最悪」
「そりゃ、強いわけじゃまさか、超太古級アイテム=オーパーツアイテムとはの」
そう、三人は目の前で人が死んでいる事よりもそちらの方に驚きを全て持って行かれ、これまでの出来事全てに納得してしまう程だ。
オーパーツアイテムはアキト達がやっていたOOPARTSオンラインに出てくるアイテムの中で全てが最高峰であり、その効果も全てのアイテムの中で最高峰である。
だが、それはOOPARTSオンラインというゲームの中でのアイテム……今シロネ達の目の前にいるのはこの世界でのオーパーツアイテムだ。
この世界にもまたOOPARTSオンライン同様にオーパーツアイテムというアイテムが存在し、アキトが知りたかった一つでもある。だが、滅多に見れるものではないので情報は少なく出回っているのはアイテム名だけという謎多き代物だ。
そして、OOPARTSオンラインと同じようにこの世界でもオーパーツアイテムは全てのアイテムの最高峰であり、とてつもない効果を有していると言われている。
そんな雲の上のような代物が目の前にあって驚きだけで済んでいるのはシロネのおかげもある。
そう、シロネにもまたオーパーツアイテムを託されており、体の中にあるという事をホルドから聞いているからだ。
張本人のシロネも、一瞬驚きはしたがもう特に何も感じる事はない。
あとは……
「ハイドゲンを倒せば全てが丸く収まるわけじゃな」
「そうだね」
「うん」
ユイとエーフはさっきの攻防もあって自信をさらに確信のあるものへとしており、シロネにもまだ余力は十分にあった。
「へぇ……お前はそこにいるのか」
ハイドゲンはシロネの腹辺りをジロっと見つめ、何かに問いかけるかのように言う。
「まっいいや!俺は晴れて自由の身なんだ邪魔しないでくれよ……」
ハイドゲンは今の今までおちゃらけたように話していたが急に声のトーンが低くなる。
「やるぞ!ユイ!エーフ!!」
シロネは臨戦態勢に入り、エーフとユイもシロネとほぼ同時に構える。
「いい構えだねぇ……だけどまずは君だ……」
ハイドゲンはシロネの方へゆっくり指をさす。
「ーーうぐぅがっ!!!」
すると、突如シロネが腹を抑えながら倒れこむ。
腹部からとてつもない痛みが発せられ、その痛みが全身を一瞬で駆け巡っているのだ。さらに、体が悲鳴を上げ様々な箇所で内出血を起こし、口からは吐きもしていないのに突如血が溢れ出てくる。
それと同時に倦怠感や疲労感、全身の痺れや発熱など様々な症状が発症し、もう何が何だかシロネには理解出来なかった。
「シロネちゃんっ!!」
「シロネ!」
ユイとエーフはシロネという大きな戦力を失ったのと同時に、相手を前にして駆け寄るのがベストなのかこのまま戦うに至るのがベストなのかユイは一瞬迷ってしまう。
だが、ユイとは対照的にエーフは一目散にシロネの近くまでかけより出来る限りの対処を始める。
「やっぱりか!お前、オーパーツアイテムを体内に抱えているな、そりゃそうなる」
「どう言う事っ!!」
エーフはそれを聞いてハイドゲンを強く睨む。
「しらねぇのか……良いだろう冥土の土産だ。俺たちオーパーツアイテムってのは近くにいると引き合い共鳴する。そして、もし今のように体内に封印されていると出てきたいって暴れるんだよ。それを押さえ込もうとして体が反応し、とてつもない痛みが襲うんだ」
オーパーツアイテムは有名ではあるが、希少な物すぎて殆ど情報がない。なので、その情報を知れるのはありがたいが、何でも出来ないと言われているようでエーフは悔しかった。
「エーフ……シロネの事頼んだよ!」
「うんっ!!」
ユイも覚悟を決め、視界内にいるハイドゲンへ全集中力を向ける。
「おいおい……あんた一人でやんのかよ。あまり……オススメはしないんだがねぇ」
ハイドゲンはあまり興味なさげにユイの方を嘲笑うように見やる。
その余裕とは裏腹に隙は一切見せず、出さず、掴ませない。
それほど完璧であり、一人でどうにか出来るなどユイは一切思っていなかった。
「私はっ!!例えこの命尽きようともあの二人を守るっ!!」
ユイにとって頼りになるシロネが戦えず、心の支えだったエーフもシロネを守る事を専念しているというこの状況下、今までにない程の恐怖に手足は震えている。
ーーだが、やらなければ待っているのはただ黙って殺されるという運命だ。
ならばと、例え死ぬのであれば最後に一矢報いるのがユイに残された仕事だった。
そして、ユイは掌を天に向ける。
遠距離が得意であるユイにとってこの距離は不利でしかなかったが、何も無いところから矢では無く弓を作り出す。
いつもであれば、何かしら素材となるものがありそれと天恵を混ぜて矢を作り出すが、今回は違う。
何も無いところから、ゼロから弓を作り出したのだ。
その弓はユイの身長とほぼ同じ高さにあるが、物凄く軽く女性でも軽々と使いこなせるという弓の理想形であった。
「その覚悟……面白い。良いだろう、この最高峰と言われる超太古級アイテム、”壱・ハイドゲン”が相手をしてやる」
刹那ーーハイドゲンの空気が明らかに変わる。
純粋に漏れ出る天恵の量も質も全てが格上、いやそれよりもさらに上にいるとユイは考えてしまいそうになる頭を心の中で落ち着ける。
純白の弓に己の作れる最高峰の矢を装填し、構える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。