169話 始動

 二日目昼過ぎーー


 ルイン学園は生徒執行会のメンバーほぼ全員で、レイ・クラウド学園を倒すために、東側からゆっくり進み、西側からはズ・バイト学園、カルイン学園、バハイン学園の生徒執行会と選りすぐりのメンバーを引き連れ向かっている。


 その報告をハル・クロ二クスは副会長から受ける。

 ちょうど、レイ・クラウド学園が陣をはっているフィールドは真っ黒な固まった溶岩が地面になっており、時々マグマが噴出する。

 さらに温度もこのフィールドが一番高く、草木の代わりに大きな岩や石像が配置されているので、応戦するのは最適だと考え、レイ・クラウド学園の生徒執行会のメンバーを招集する。


 ハルに対面する形で、五人が各々好きな形で座っている。

 他の数合わせの人は席を外してもらっている形だ。

 一人少し大きめの岩に座っているハルは足を組み、見下ろすように一人一人に視線を順番に視線を合わせる。


「成る程ね、じゃあ今言った副会長の情報から、その二組への担当を決めようか」


 ハルは副会長の情報を精査する事もなく完全に信じ、準備を始める。

 これは、別に今始まった事ではなくハルは副会長と出会った当時から、一切の情報への不安を抱いた事はない。


 副会長は最初、生徒執行会どうし対面した時、向こう三年間の魔導修練祭の結果を予想したのだ。

 勿論、ハル以外の人達は副会長の言っていたことを信じていなかったが、一回目の魔導修練祭で全員認めざるおえなかった。


 そして、今回三回目。

 副会長の見通しは途中までしか無くそれ以降は天のみぞ知るという風に突然魔導修練祭一日目の夜に言われた。


「どうした?」

「いや、いつも会長は最後まで動かないからよー皆んな動揺してるんだよ」


 リアル・シルバーは五人を代表するように言う。


「そうだっけ?」

「そうじゃぞ、会長。いいのか、魔導修練祭が今日で終わってしまうぞ」

「副会長よぉ、あんたが昨日の夜にあんなこと言いやがるから会長の計算がくるったんじゃねぇか?」

「チッ……うるさい……殺すぞ……」

「あぁん!!」


 副会長のシャーロット・バイクは、リアル・シルバーとにらみ合い、今にも殴り合いを始めそうな勢いになる。

 背丈が小さいので、身長が高いリアルとはかなり威圧感が違ってくるが、相当な実力を持ち合わせている。

 今はユニフォームを着ているが、いつもは白い白衣を着こなしており、茶色い少し黒のメッシュがかった髪に、金色の瞳をしている。

 パッチリとした大きな瞳から元気そうなイメージをもたれるが、中の性格は相当ねじれているので友達が殆どいない。

 

 年齢よりかなり幼く見え、可愛さを持ち合わせた悪魔とも影で言われている。


「じゃあ、みんなはどっちに行きたい?」


 そんな二人を無視して、ハルは話を進める。

 レイ・クラウド学園の生徒執行会ではよくあることなので、基本的にハルは止めない、軽くやり合ったとしても死なない所まではやらせる主義だ。

 そして、ハルが話を進めると軽いいざこざなら簡単に収まる。


「俺は、断然ルイン学園だな!」

「はっ!ならわしはズ・バイト学園連中じゃな!」


 二人はわざと行き先をバラす、それはなぜかと言うと、何方が先に終わらせるのかを競いあうためだ。


「はぁ……見苦しいですね二人とも。私は、ルインの方に行かせてもらいます」

「アカメか……久しぶりに喋ったかと思ったら、くだらねぇ挑発かよ」

「あなた方よりは可愛い方だと思いますよ。はいこの喧嘩終了」

「はっ!出た出た」


 リアルは、ルイン学園生徒執行会会計のアカメ・ベーカリーに言われて、小競り合いを諦める。

 アカメは、基本的に言いたいことを言って直ぐに引くタイプで、口論を好かない。

 言葉の壁当てが大好きな性格だ。

 超平均的な体格をしており、黒髪のストレートに黒い瞳、腰には太刀を携えている。耳には、楕円形のイヤリングを身につけており、なで肩なのを本人は気にしている。


 肩こりが最近の悩みだーー


 手には無数のタコを作り、レイ・クラウド学園一努力家の異名を持ち、唯一村の出で生徒執行会に入った実力者。


「他二人、コウザン、ピルチどうする?」

「俺達は二人、ズ・バイト学園らの方へ行くつもりである」


 ハルの右斜めに座るルイン学園生徒執行会広報、コウザン・ケールン。

 四角い顔が特徴的で、目をずっと閉じている。別に目が見えないというわけではなく、単純に見えすぎるというのが本人の主張だ。

 体は縦に長く、ヒョロヒョロとした全く筋肉みが無い体つきをしている。

 唇にピアスを二つつけており右肩から右手の平までびっちりとタトゥーが入っており、見た目に反してやることはがっつりやっている。


 歩き方が特徴的で、振り子のように一歩進むごとに右左と揺れながら歩く。

 そのせいで夜に見た生徒が幽霊と見間違え、失神したという伝説も作っている。


 その隣には、少し虚ろな雰囲気を醸し出している女性、ルイン学園生徒執行会書記のピルチ・パルプが座っている。

 目を伏せ、体調が悪そうな感じを出しているが、これが基本スタイルだ。

 体全体的に色白く……むしろ青白くなるほど弱々しそうに見え、普段の言動ももの凄く単調的。

 口元には黒いマスクをつけており、目元には赤いアイラインを塗っているので虚ろな雰囲気が漂っているのだ。


 日差しが苦手で、いつも部屋の中にいるが、戦いになると人が変わったように、荒れ狂うという性格を持っているので、取り扱い注意人物として学園でも有名になっている。


「そうか、分かった。じゃあ、俺は人数合わせでルインの方に行くとするよ」

「もう動くのか?会長」

「うん?いや、最初は君たちに任せるちょっと俺も俺で用事があるから」

「なんだよ会長、隠し事かよ」

「いや、俺の気まぐれだと思ってくれ」

「はいはい分かったよ」


 ハルには気がかりになることが一つだけあった。

 それは、このあたりに一人だけで、近くに来た者がいるのだ。ハルは一度遠目から確認はしたが、特に注意する人物でも無く無視していたが、今になってどうも気になっていた。


 それを払拭する為に、動こうとしていた。


「それが終わったら俺が行くから、早く終わらせないでくれよ」

「会長の出番なんてねぇよ」


 

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