158話 ルイン学園生徒執行会
ーー魔導修練祭フィールド ルイン学園転送場所付近ーー
「で、どうするんだ?リゼちゃん、いつ行く?」
「早いな、まだ開始時間まで時間があるから寝癖でも直してこい」
「つれないねーリゼちゃんは、というか眠いだけか!」
「アギト、俺は朝からお前のおしゃべり付き合うほど元気でないからな」
せっかく、集合時間まで時間があるのに朝起きてからずっとあぐらをかき、目を閉じながら、毅然とした態度でリゼラ・ファルセは答える。
朝の日課とは言っていたがこんなことを毎日やって何になるのかアギトはマジで謎だった。
「で、他の皆はここに集合という形になっているのか?」
「ああ、ここに後一時間後には集まるよう連絡してある。魔導修練祭一難易度が高いミッションだな」
「他の学園も今日には動き出すだろうしな」
**
リゼラは日課が終わったのか立ち上がり、朝食を食べ、適当に時間を潰したらちょうど一時間経った。
アギトとリゼラの他に四人、全部で六人、ルイン学園生徒執行会のメンバーとなる。
リゼラを中心に倒れた大木の上に一人、生徒執行会書記のアギト・ベル。
そのアギトと一メートル程離れた場所で木を背もたれにして寝こけている、生徒執行会庶務のテスト・アンサー。三年だが、身長が百四十五センチメートルもない小さい女性で、ずっと眠たそうにぼーっとしている。
ボサボサの短い髪に、副会長のヴェルダ・アセインから貰った本型の髪飾りをつけ、さらに今は寝ているからいいが、起きている間は、鼻が悪いのかずっとズルズル鼻を詰まらせているのでうるさいのが特徴的だ。
そして、その向かいにはあぐらをかいて小動物のような一年、金聖クラスのアンナ・カートレット。一年で生徒執行会の会計になってはいるが恐らく学園でそのことを知っているのは殆どいない。
それほど、影が薄いという訳ではなく、単純に目立たないよううまく動いている。
真っ赤な肩までの短い髪と、瞳が特徴的だが、視線は色々なことを見透かされているようであまり気持ちの良いものではなかった。
アンナの役割としては学園内の一年を監視するというものでルイン学園の会計に添えられている。
別にそれだけで選ばれている訳ではなく潜在的な能力をリゼラにかわれている。
「ヴェルダさん!今日もお綺麗ですね、好きです」
「あら!ありがとうございますベースさん、ですがごめんなさい」
ベース・パルク、他の二人とは違い逆にダンディ過ぎるおっさんだ。
勿論、本当に歳くってるわけではないが、どういう生き方をしたらこんなダンディイケメン風のおっさんになれるのかが分からない。茶色いちょび髭がチャームポイントだと自分で言っている。
役職は広報担当しており、仕事が出来るので自分の仕事をすぐに終わらせすぐに他の人の仕事を手伝う結構良心的な人間だ……ただし女性限定。
ヴェルダに恋心を寄せているが、いつもふられている。
今も、どこから摘んできたのか分からない花をヴェルダに渡し、告白し、惨敗していた。
「ベースもそろそろ諦めたらどうだ?」
「アギト!お前はこんな美しい女性を諦めろというのか!」
「そうだが……」
「よし、分かった。この魔導修練祭が終わったら美女の良さというものを教えてやろう!」
アギトは顔に手をやり、面倒面倒くさいのか視線をリゼラにずらす。
「集まったようだな、ではこれからの動きを伝える」
それを統率するリゼラは問答無用で話を始める。
だが、なぜかルイン学園生徒執行会の変人全員はリゼラが話始めると聞き入るように静かになる。
「俺達は三人ずつ二つのチームに分かれて行動する。一つは、直接レイ・クラウドの頭、ハル・クロ二クスを目指すチーム、もう一つは他の学園の牽制とハル・クロ二クス以外のレイ・クラウド学園を相手にするチームだ」
「チーム分けはどうなるんだ?」
「チームは俺とヴェルダをリーダーに、俺の方にアンナ・カートレットとベース・パルク、ヴェルダの方にアギトとテストだ何か異論はあるか?」
「はいはいはい!!」
ベースが勢いよく手をあげる。そのテンションの高さから皆何を言うのかなんとなく察する。
「僕とヴェルダさんを分けたのはなぜですか?」
「能力と相性だ」
「そうですか……ふっ!ふふふ……それでは仕方ないですね。分かりました、ですが相手を蹴散らして合流するのもありですよね」
「そうなるな」
「では、今回は本気でやりましょう」
ベースは去年、怪我で出場出来なかったのでかなりストレスが溜まっているだろうし、ヴェルダが大怪我したことを知った時マジでブチギレて相手の学園に乗り込もうとしたがリゼラがそのときは出て止めたのだ。
その鬱憤が溜まっているので、今回相当張り切っているのもそのせいだ。
「これから、朝を乗り越え、昼を食べた後、出発するつもりだ。他の学園も出てくるだろうから、気を引き締めて行くぞ」
「アギト、テストが起きたら伝えておいてくれ」
「え!俺かよ!面倒クセェ!」
アギトはまさかいきなり仕事を振られるとは思っていなかったので、反射的に言葉が汚くなる。
「朝のうちに他のルイン学園の生徒達の助けになるよう各々いい按配で手伝ってやってくれ」
「分かりましたわ」
「そうだな……」
「当然」
リゼラは言い終えた後、アンナの方を見る。
恐らくずっと何も発していないので気にかかっている。
「会長の言っていることに異論はありませんよ……僕はね……」
「そうか、一年は大丈夫そうか」
「問題ないね、というか今年は私がいなくても大丈夫だったレベルだよ」
アンナは入ってきてからこの一点ばりで本当に仕事をしているのか疑いたくなるほどで、ここまで一貫してきたので執行会のメンバーは途中から疑うことはやめた。
「ほう、この魔導修練祭でもそう言えるのか」
「うん、そうだね、全てのクラスにいい人材が揃ってるから今年はあたりだよ」
「それなら俺達がいなくとも大丈夫そうだな」
「うん、僕達がいなくても下手したらこの集団の攻撃乗り越えられるレベルだよ……一年は、だけどね……」
それだけ聞くと、リゼラは満足したのか解散を促す。
アギトはテストを起こそうと肩を揺らし始めるが、後十五分ほどはかかりそうな寝具合だった。
辺りのフィールドはいつの間にか変化しており、ここはからっからの砂漠地帯のようになっていた。
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