151話 ダンジョン攻略開始
暗がりの洞窟の中、アキトはハヤトと一緒に行動していた。
あの三択道を一つ一つしらみつぶしにやって行くと時間がかかってしまうので、チームを分け、アキトとハヤト、クロムとバーン、その他のルインの学生と三つに分けた。
ここまで残った人たちなので基本どんな風に分けてもいいがアキトはハヤトと一緒の方が効率が良さそうだった、というか喋れる相手がいなくなってしまうのでハヤトと組んでもらった。
かなり暗いのでハヤトに灯り用の魔法を使ってもらい、十メートル四方は見れるようにはなっているが、その先になると見えづらくなっているので、慎重に進むことになる。
「この岩や土からして、山かどっかを使っているのかね?」
「うーんどうだろうねぇ……ダンジョンを作る属性はあったからそっちを使って事前に、というか趣味で作っている可能性があるね。この完成度を考えると……」
アキト達の声は洞窟の中で反響し、いつも以上にうるさく聞こえるーー
本来なら、前と後ろで警戒しながら行くが、今は横一列に並び警戒はしているが、おしゃべりしながらゆっくりと歩いていた。
このダンジョンはOOPARTSオンラインで元からあったゲーム会社が用意していたダンジョンではなく、一プレイヤーが作り出したダンジョンなので、テンプレの攻略方法などは一切通用しない、全て初見勝負のダンジョンになる。
勿論、こっちの方の確率も予想していたが、ここまでの規模の物を作ってあるとは思ってもいなかった。
一年生の範疇を超え過ぎている。
「うーん、また行き止まりだよ」
「何か腹たってきたな……」
「その気持ちも分かるけどさアキト、壁を一個一個壊すとかはやめてよ」
ハヤトにアキトが提案しようとしていた案を却下されて、返す言葉も無くなってしまったが、ダンジョンで使えるアイテムなども持ってきていないし、二人ともダンジョンで役にたちそうな魔法やスキルも持っていない。
精々明かりを灯すことぐらいだ。
「ま、魔物が出てこないだけまだましだけどな」
「うーん、どうだろうね。この規模から考えてまだ序章みたいな場所だからあえて置いてないだけかもよ、油断誘うために」
昔OOPARTSオンラインでこういうプレイヤーが作ったダンジョンを三人で攻略したことがあるが、やはり初見で見たこともないような罠だったり、魔物だったりと、好き勝手いじれると攻略した後に聞いたことがあったが、まさか再び出会うことになるとは思わなかった。
「そろそろ、お昼ご飯の時間じゃない?何か食べる?」
「え?もうそんな時間か……」
転送されてから色々あり過ぎて時間感覚が狂っていたせいでアキトのお腹もハヤトに言われて動き出す。
「これ不味そうだよな……」
「しょうがないよ、非常食みたいな物だし」
普段のアイテムボックスならもっとうまい物を食べられるが、指定したものしか食べられないため、凄く歯がゆい。
「しっかし、このダンジョン長くなりそうだな」
「そうだね、このダンジョンは下に長く続くという形のものだし、深くなればなるほど敵は強くなりそうだしで、まだまだ分からないことが多いからね」
「けど、それが楽しいと感じるのが……何とも言えんな」
「アキトもか……」
休憩も兼ねて昼食を挟み再びダンジョン攻略を進める。
階段を登ったり降りたりして、第一関門であろう迷路をぐるぐると再び彷徨い始める。
すると、意外と正解の道だったのか徐々に下へ下へと進み始める。
「お!ここも正解っぽいな」
「ホントだ、さっきから全く迷わないね」
そんな他愛のない話をしながら、正解の道であると思われる下への階段をどんどん降りて行く。
そしてふと、昔攻略したそのダンジョンを思い出す。
「何か、昔攻略したダンジョンに似てるな……」
「え?どういうこと?」
「あ、いや一応憶測ということが前提なんだけど、昔攻略したダンジョンが最初迷路でぐるぐる迷わせて、徐々に正解の道への選択肢を少なくしていってそのまま罠のある部屋に送るというダンジョンがあったんだけどそれに似てるなーって」
すると、ハヤトは鈍い顔をし、こちらを見てくるーー
おそらく、そんなフラグを立てるなと言いたいんだろうが、大丈夫だ、もうその罠だろう部屋に入っていた。それを分かっていてアキトは喋ったのだ。
「全く、アキトもそういうこと言うの今後は控えてよね」
「分かってるって、今回だけ、しかも事後報告みたいなものだし、許してくれ」
「はぁーじゃあどうする?」
迷路が終わったとは言えこの部屋は何かおかしい。
真ん中にいかにもな魔物が一体いるが、一切動かずじっと二人を見つめているだけで何もしてこない。
他にもこの部屋はもの凄く広く、運動場のような作りになっている。
遮蔽物は一切なし、隠れる場所は皆無だった。
しかも、その魔物はOOPARTSオンラインの時でも見たことがないような魔物で、一体どんな能力を持っているのかも、どの程度のレベルのものなのかも不明だ。
このダンジョン製作者の妄想や理想が詰まった魔物の一体だと考えて良さそうだった。
「これ、アキトどう思う?」
ハヤトはアキトに訪ねてくるが、アキトの答えは今ハヤトが思っていることと同じだった。
「うん?そうだなー多分後数メートル前に進んだらボス戦でも始まりそうな勢いだな」
「まさか、こんなのがこれから続くってことじゃないよね……」
「いや、そのまさかだろうな。恐らくこれから何らかのギミックを与えてきて、それをクリアしたらその層のボス戦みたいなのを繰り返して、最後にラスボスを倒して元の場所に……だろうな」
そんなのはゲームだけにしてほしいものだとアキトは思うが、このダンジョンを作っているやつはこう言う楽しませ方を知っている。
「で、どうする?」
「は!そんなの聞くまでもないでしょうな、どうせやらないと先に進めないんだから」
「そうこなくっちゃね」
一度は戦ったハヤトだが、仲間としてこれほどレベル八十というのが心強いと感じるのは久しぶりかもしれない。
そう思いながらアキト達は最初のダンジョンのボス?か中ボスか、序盤のボスか分からないやつの方へと足を進める。
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