100話 会議
王族領の周囲は騎士が巡回しており厳重な態勢が敷かれている。
それに王族領に入るときにも持ち物の検査を受けなければならない。
アイテムボックス内も確認する程の徹底ぶりだ。
王族領に入る場合は武器などの凶器となり得る物は一旦預けないといけないことを知っていたのでウタゲはあらかじめ宿屋に置いて来た。
ウタゲはこう言う場所で人を絶対に信用しない。
馬車が止まり一人々持ち物検査の他にほとんど入国検査と同じようなことをされ問題なく四人は中に入る。
王族領に入ってからも目的地に着くまでが以上に長く相当な広さだ。外の眺めは良く草原にぽつぽつと並ぶ王族家や高位貴族家が立ち並ぶ。
山から続く小川が王族領を分断するように流れていてとても綺麗だ。遠方には帝国のシンボルと言ってもいいほど巨大な山々が横並びに聳え立っているのが見える。
途中国王がいるであろう城を通り過ぎる。この城には巡回の騎士がおり再び王城に入るための検査もあるほど厳重になっている。
因みに魔導修練際には国王も観戦する、最初ツルミはそれを聞いた時は驚いたがそれは王城内で魔法で現場の映像で見ることと聞いて納得した。それに、優勝した学園の会長と活躍した生徒は王城に呼ばれ国王から直々に表彰され帝国内に顔が知れ渡りその日は帝国から出られなくなると言われている。
「ルィン魔導学園の皆さま残り五分ほどで到着いたしますので降車する準備をお願いいたします」
執事の人が丁寧に知らせてくれる。
「分かりました」
ツルミがみんなを代表してお礼を告げると馬車は本当にちょうど五分後に目的の施設に到着する。
今回の会議が行われる屋敷は昔王族が暮らしており今はもう使っていないのでそれを有効活用しようと考えられたのがこの会議や会談、会合の際に使える施設として改造された屋敷だと執事が教えてくれる。
屋敷に到着し執事が扉を開けてくれる。
四人は一人ずつ降車する。他の学園の人達も続々やってきて屋敷の中に入っていく。
執事に追随し、屋敷の中へ入る。
屋敷の中はさっきの宿屋と同じく三階だが、かなり横に広いので部屋数は五階建の建物と遜色ない。
一階は玄関を抜けるとすぐに広い円形のスペースがあり二つの階段と調理場へ続く廊下、三部屋ある休憩スペース(宿屋より広く巨大ダブルベッド付き)に続く廊下ある。
調理場へ向かう途中に執事やメイドの待機部屋が三部屋ほどあり一階だけでもかなり充実している。
二階へ向かうと会議用の部屋が二つあり、他にも小さな休憩用の部屋が十部屋あり、三階は一つの大会議室が一つと二階の倍の大きさの部屋が五部屋ある。
今回は二階で会議が行われるので各校の人は二階の部屋で待機する。会議開始が日が落ちてからなのでそれまで少しばかり時間がある。
今回は会議だけでなく食事も同時に出されるらしくさっきも慌ただしく執事やメイドの方達が準備していた。
「それにしても凄く豪華な部屋ですねぇー」
さっきから落ち着かないのかずっとキョロキョロしているツルミの口から感想が漏れる。
「ここまで豪華じゃと落ち着かんのー」
「確かにな……」
「ほらこの明かりですら高そうですよー」
部屋の装飾品や置物一つ一つが高そうで下手に触れない。
リゼラの方は相変わらず表情一つ変えず置いてある椅子に座り一言も喋らず飲み物を飲んでいる。ジルは片手で逆立ちしそのままプッシュアップしながら喋ってるしツルミは仕事してるしで個性しかなかった。
「それにしても初めてじゃから勝手が分からんからリゼラ頼りにしとるぞー」
「いえ、基本各学園の学園長しか喋りませんので……」
「それ、まじ?」
ジルはゆっくりと体勢を戻しながらことの重大性に気づく。
ツルミも呆れていて下を向きながらお腹をさすっている。
「わ……私達がサポートしますので大丈夫です」
ツルミは苦笑いしながらジルに言う。
*
日が暮れ、準備が整ったのか執事が呼びに来る。
四人は執事に続き会議部屋に入る。中にはもうすでに殆どの人が揃っていて最後に入る。
二十人が余裕で座れるほど長く茶色の木で作られた机でその上に真っ白なテーブルクロスがひかれている。テーブルクロスには細かい模様が彫ってあり相当高いことが見るだけで分かる。
明かりには火属性が付与されているランプが使われ部屋の角に飾られている。主な光はテーブルの上にあるシャンデリア三つが担っており、大きさ形などそれぞれ違う。
四人は固まって手前の方に座るとそれを見て会議の進行役が喋り始める。
「本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。今回は知ってはいると思いますが半年後に行われる魔導修練際のルールなどの意見をお聞きしたく思っております。ですが、話し合いの前に料理が出来ておりますのでまずはそちらをお食べください」
するとメイドが料理を運んで来る。
まずは、皆料理を食べ始める。前菜から始まりスープ、メイン料理、デザートと順番に出て来るのだが、高級品ばかりだった。
だが、ウタゲは濃い味が好きなのでこう言う高級志向の食べ物よりはがっつり食べてがっつりお腹に溜まるものが好きだった。
それにみんな殆ど喋らず食事をしており、こんなことで会議なんて成立するのか疑問になるほどだった。
そして、皆がだいたい食事の終わりがけに入った時点で再び会議が始まる。
魔導修練際を企画している人は学園の人間ではない。毎年、国王が直々に選別し任命された人がやっている。
なので、こうやって会議の場を設け意見を求め、参考にしたりする。
「それでは会議を始めたいと思います。まずは各学園学園長の自己紹介からお願いします」
進行役の人がウタゲ達の反対側に座っている人から始めるよう促す。
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