52話 超属性

「おぉっとー!!急に動きが止まったハヤト選手どうしたんだぁ!?」


 雲が降りて濃霧状態だった会場もアキトがハヤトの元につく頃には完全に消えていた。

 そしてなぜアキトの放った魔法がハヤトの中位無効化で防げてないのか……それは今回選んだ対象物はハヤトというのは違いないが、ハヤトを覆う大気も範囲に入っている。

 なのでハヤト自体には効いていないが間接的に効果が発動し、そちらまでは防げなかった。


 そして、ハヤトの固有属性は天気。

 アキトはこの天気属性をここだけじゃなくどっかで見たような記憶があった。

 天気属性は、火、水、土、風、雷属性を全て統一するようポイントを配分することで習得することが可能になる属性だ。

 スキルや魔法の汎用性がよく様々な種類の属性を使用できるので便利な固有属性。


 そしてハヤトはまだ水属性方面の魔法しか使っておらず、まだ何か隠し持っているのは間違いないなかった。


 やるしかないか……

 今のハヤトに直接的なダメージを与えられるのは超属性か超固有属性以上の魔法スキルしかないーー


 なので、一撃々がかなり重要、一発も外せない状況だ。

 使えるのは超属性魔法とスキルで一回ずつ、超固有属性魔法とスキルで一回ずつの計4回だ。


 ハヤトも超固有属性魔法を放っているのでかなりMPは消費しているはずだ。問題はスキルの方が残っており、下手したらまだ魔法の方も撃てるかもしれないという不安要素だった。


 そして、もう一つは超属性系以上の魔法、スキルを持っている可能性。


 これがアキトが一番引きたくないハズレくじ。

 今アキトは超属性以上の魔法、スキルを習得出来ていない。

 あれはレベルが五十以上で尚且つ、属性によって様々な条件をクリアしたのちに出てくる物で威力や能力の強さで発現するレベルも変わってくる。


 だが、考えても仕方ないので今は前にいるハヤトに集中し、超闇属性魔法<地獄の審判/ジャッジ・オブ・ヘル>を発動する。

 この魔法は遠距離、中距離、近距離どれにも適応する魔法で、遠距離の場合は放出系、中距離の場合は散弾系、近距離の場合は自分自身に影響する。


 そして今回は近距離、魔法を発動した瞬間、アキトの体は黒と紫を混ぜたような少し明るめなオーラに包まれそのオーラが左腕から左手に収束していく。


 収束したことによってさっきまでの明るい色が消し飛び真っ黒な禍々しいオーラに包まれていく。

 その左手に収束したオーラはさらに凝縮され手のひらの輪郭を覆うように先程までの荒々しさから想像もつかないほど静かに収まる。


 左腕を振り上げるとその軌道上の大気が振動する。

 この魔法を使ったのは一週間練習の最後の日だ。威力がありすぎて危うく森にまで被害がいくとこだったのでアキトは驚いた。


 走っている勢いを上乗せして残り一メートルのところで踏み込みハヤトの顔面を狙い左拳の一撃を放つ。


 アキトの拳がハヤトの目と鼻の先まできた瞬間ーー

 アキトは見逃さなかったハヤトの口角が約二ミリ吊り上がったところをーー


 その刹那、上空から光の速さで何かが到達する……そう雷がアキトとハヤトの間に轟音を響かせ降ってきた。


「なんと落雷だぁああ!!これは防ぎようがないぞぉお!!」


 警戒をしていたがすでに攻撃体勢に入っておりこれはもう防ぎようがない、まだこれが分かっている場合なら対処可能だったが……アキトとにとってこれでは警戒もクソもなかった。


 アキトは覚悟を決め相打ち覚悟でそのままハヤトの顔面に渾身の一撃を叩き込む、黒いオーラを纏った拳はハヤトの顔に当たった瞬間重い拳へと豹変する。同時に、アキトの体に落雷が直撃する。


 ハヤトはアキトの拳が直撃し、また場外へ吹き飛ぶ。

 あの重さの負荷がかかってここまで吹き飛んだのだ相当な威力というのが分かる。


 当たった瞬間確実に頬骨と鼻骨を粉々になったのを拳の感触で確信する。鈍い音が響き、ハヤトの顔面は出血と骨折で今は笑うだけでも激痛の状態まで追い込む。


 だが、アキトもその余韻に浸っている暇もない。雷が頭に直撃しそのまま全身を駆け巡り足の裏を通過し地面に消えていく。


「痛ズッ!!」


 再び脳震盪のような症状に見舞われ、視界が鈍り半分も見えなくなりしまいには全身の筋肉が痙攣を引き起こし、立っていられず座り込んでしまう。体育座りのような体勢で背中が地面に付かないように両腕で支え痛みを堪えている。


 肌が火傷を負い、全身がひりつくように痛い。


「うgぁあlああ、っ!!がああ!!」


 初めて雷を受けたが、毎秒皮膚をナイフで削がれている様な感覚に襲われ激痛が全身を走っている。


 お互い超属性の魔法を生身で受けたのだノーダメージとはいかなかった。


 アキトは一つ目のアイテム、ポーションを自分に振りかける。

 この行為だけでもかなりの時間を有した。

 ハヤトも同じように自分の顔にポーションを振りかけていた。これでお互い一つ目のアイテムを消費したが、アキトの傷もハヤトの傷もポーション程度では完全には回復せずと所々ダメージは残ったまま試合を再開する。


 ハヤトもさっきまでの余裕ぶりが無くなり笑顔は消えていた。


「僕の超天気属性スキル<雷の垂直落下/サンダーフリーフォール>はどうだったかな?」

「いい味してたぜ」


 アキトは少し嫌味を込めて強がる。それを見て、何がおかしいのかハヤトは笑う。


「僕もさっき受けた拳は相当こたえたよ」

「そうなるよう打ち込んだんだ、必然だろ」

「な、なんと両者まだ立っております!!ハヤト選手もアキト選手も両方とんでもない攻撃を受けたはずなのに!!凄すぎます!!さすが、ブロック決勝とんでもない戦いだぁああ!!」

「歯も何本か折れちゃったんだから」

「御愁傷様だな。俺だって目が半分見えてねぇんだお互い様だ。」


 ハヤトが受けていた重力属性スキル<地に伏す者/グラビィテオングラウンド>は場外に出たことでリセットされていた。


 しまったなもうちょっと抑えめに打つべきだったか……

 アキトは少し後悔するが、切り替える。


「じゃあ、今度は僕から行かせてもらうよ!!」


 その言葉を言った瞬間、ハヤトは足を曲げ腰をかがめその反動でこちらまで一気にアキトのすぐ目の前まで迫る。

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