2章 転生、新たな出会い
7話 対話2
意識が元に戻り、璃屠は目を覚ます。
璃屠は自分の姿を確認するため両手を使って自分の体を触る……
その結果、布団の上で仰向けに寝ていることを璃屠は知る。
璃屠は体勢を起こすが、さっき見た風景と殆ど何も変わらない。ただ、一つ変わっているのは女神がテレビの前でずーとゲームしていることだ。
ゆっくりとそのまま机まで移動し、置いてあったポットの中のお湯を使いお茶を作り、飲む。
女神はゲームに熱中していて璃屠に一切気づかない。
璃屠は女神の真後ろまで接近して後ろから覗いてみると、FPS(First Person Shooter)をやってる最中で、とんでもない独り言が璃屠の耳に入ってくる。
「クッッッッッソ!、あ、おい味方そうじゃねえだろ!!」
「うわ、まただあいつ絶対チーターじゃん」
「あああ、死んだ。よし味方蘇生来t・・こねぇのかよ!!」
「ふざけんなああああああ!!!」
女神はゲームコントローラーを地面に叩きつけブチ切れる。ゲームコントローラーは無残に砕け散り、四散する。
それを見た璃屠は呆れすぎて声をかけることを忘れてしまっていた。
女神は、一回キレることにより落ち着きを取り戻したのか璃屠の存在にやっと気づいた。
「これはこれは、起きてたんですね」
女神は満面の笑みで答える。
「今の」
「忘れてください」
「いや、」
「忘れてください」
顔を思いっきり近づけてきて、女神の笑顔の圧力が強すぎた。
璃屠はそれから何分かそのやりとりを続け、今は机に向かい合わせの形で座っており二人でお茶とお菓子を嗜んでいるところだ。
「それで、記憶は戻りましたか?」
「ああ、一通り思い出したよ」
璃屠の中での記憶というのはOOPARTSオンラインサービス終了時までであり、それ以降は覚えていない。
「一通り?」
女神は璃屠の言葉を聞いて何か引っかかったのかそう質問を投げかけてくる。
「最後がなんか途中で終わってるんだよ」
「えぇ……それで問題はありませんよ」
問題ないという言葉に璃屠は引っかかりを覚え、自分の死因や本当に死んだのかという疑問など様々なことが頭に浮かぶ。
「あなたは、あの時点で死んでおります。あのゲームのサービス終了時にね」
「なぜ、俺は死んだんだ?」
女神は一瞬考えるそぶりを見せると何かを思い出したかのように答える。
「そうですねぇ……あなたの死因は他殺です。それ以上は言えません」
「それはだれ」
「まぁ死んだことは同じなのでそんなに深く考える必要ないと思いますよ〜♪」
そう答えると女神はお菓子をつまむ。
璃屠は明らかに何かを隠している女神にツッコミたかったが、この女神が本当のことを話すことはありえないと考え、大人しく引いた。
「俺はこれからどうなるんすか?」
「うーんと、結論から言うとあなたには転生してもらいたいのですよ♪」
机に手をつき顔を思いっきり寄せてくる。
近づけてきた風圧で、女神の匂いが璃屠の鼻腔をくすぐり、催眠作用が有るのではないかと思うほどいい匂いだったが、自分の膝をつねり心の中で騙されないよう自分に言い聞かす。
「え?嫌です」
女神は思いもよらない回答だったのか、口をポカーンと開けてただ呆然としている。
「はっ!!……理由をお聞きしても?」
璃屠は行きたくない理由を女神に淡々と話し始める。
やれ、一度死んだのにまた死のリスクがある場所に行きたくないやら、また一から人間関係を作るのがめんどくさいやら、単純に女神が信用ならんやらと色々璃屠が並べていくと女神の顔はどんどん険しくなってゆく。
「というわけで、俺は早く成仏したいのだが……」
「ダメです♪」
女神は璃屠の頭の上に手を置き璃屠を威圧する。
「ちゃんと異世界への特典つけますから〜」
そう言うと女神はどや顔でお菓子を口に詰めながら喋る。
「特典?」
「はい!あなたが生きていた時に使っていたOOPARTSオンラインのアカウントを異世界でも使えるようにしてあります♪なので、あなたの言っていた死ぬリスクは軽減されると思います♪」
「確かにそれなら大丈夫かもしれないが……」
「さ、さらにさらに、私からの加護をプレゼントします。まぁ平たく言えば新しいスキルみたいなものだと思ってください」
璃屠がまだ不満そうな態度でいると、もう一押しと言わんばかりに提案する。
「どうですか♪」
「どうですかも何もさっき言った通りです、嫌です」
女神はさらにシワを増やし、笑顔がだんだん崩れていく。
「ごらぁあああああああああ!!!!!!」
すると、突然怒号が部屋中に響き渡るーー
その瞬間もう一人の女神が降臨する、しかもテーブルの上に。
テーブルにあったものはぐっちゃぐちゃになり、散乱する。
そんなことに構わず、新しく現れた女神はさっきまで喋ってた女神とは違い、璃屠は第一印象に少し老けを感じる。
女神も歳には勝てないんだなぁと璃屠は思っていると、その新たに現れた女神は今まで璃屠を異世界へ送ろうと頑張っていた女神の胸ぐらを掴み思いっきり揺さぶる。
「まぁーーーた、勝手に関与しよって!!!!あれほど言ったのにまぁああだ分からんか!!このたわけが!!!!!!」
「も、も、も申し訳ありませんー!!」
そう言いうと女神は土下座の体勢になっていた。
とてつもない変わり身の速さである。
「お前はいっつも目を離すとすぐに横着しよる」
女神対女神の説教だ、なかなかお目にかかれないだろう代物に璃屠は野次馬感覚で見入る。
「だ、だって退屈なんだもん〜」
頬を膨らましまったく反省の様子がない璃屠を異世界に送ろうとしたアホな方の女神。
呆れたのか、もう言っても無理と判断したのか老いた女神の方が話しかけてくる。
「うちのやつが迷惑をかけたな、申し訳ない」
こっちの方はまだ話が通じそうなやつなので璃屠は内心ホットする。
「いやいや、大丈夫ですよ」
「そう言ってくれるとありがたい」
そう言うと老いた女神の方は、片手を差し出すとその手のひらから真下に円形状の陣が出現しさっき吹き飛んだ机とお茶とお菓子を再生させる。
そして、座るとお茶を三人で啜るーー
「……悪いんだが……私もお前さんには異世界に行って欲しいと思っとる、ここに来てしまった以上もう普通の魂のように通常のルートへ戻すことができなくなってしまったのだこいつのせいでな」
隣の女神を睨みつけ老いた方の女神はさらに続ける。
「もう、こいつが記憶を渡してしまったからな、そうなるとわしらにはどうすることもできん。死んだ時自動的に記憶が抜かれるんだが、それを戻してしまった、そうすると人間として扱うことになる。私たちは人間、あの世界への直接的な関与が出来ん、だから転生するかもうここに一生いるか二択になる」
「二択ですか……」
とんでもない二択を迫られ、璃屠は考え込むように下を向く。
ここに残ることも出来るが、あの面倒臭い女神の相手をするとなるととんでもなく面倒くさい。
「本当にすまんかったなお主は何も悪くないんだがな」
そう言って老いた方の女神はふーと息を吐きこちらを見据える。そして目が合い数十秒がたつ。
「こほん。仕方ないあんまりこういうことは言っちゃいかんのだが、お主には迷惑をかけたからな……こいつが言っていた異世界にはな、お主の幼馴染の剣崎光希くんも転生しておる」
それを聞き俺の脳内に雷が撃たれたかのように背筋に衝撃が走るーー
「それは、本当ですか?」
璃屠の記憶をこの女神が見ているなら、璃屠を動かすカードはそれが一番だということは誰が見ても分かる。
なのでこの審議はかなり重要なこととなる。
「それは、この私が保証しよう。もし異世界に行き剣崎くんがいないと分かったら自害してもらっても構わん。その場合は、こちらで一生を過ごしてもらうことになるが」
まぁ、それなら行ってもいいだろう。
璃屠はその条件なら呑んでも良いなと考える。
けんを探すことができる上もしいなくても規定通りの路線に戻るだけ、どうせここで一生過ごすことになるんならそのくらいの旅は些細なものだった。
「分かった。あんたを信じよう、異世界に行かせてもらう」
すると、二人の女神は安堵の表情になりさっきのこわばった感じが少し柔らかくなる。
「では、早速転生の準備をする」
「まず、お主にはこいつがさっき言っていた能力を授ける、女神の加護だが異世界に行った後確認してくれ、自分のステータス等は確認できるようにしてある。あと、異世界には蘇生アイテムや転移系等のアイテムは持っていけん、あらかじめ抜いておくからそのつもりでな。それと同時に、蘇生魔法やスキルは異世界のルールにしたがって変更してあるからな……分かったかの」
「分かりました」
「あとな、すまんが転生したあとはレベル一からのスタートになるから気をつけるように……」
「それとさっき言った自害の件だが他者に殺された場合などは本当に死ぬからはき違えないようにな、他の事象で死んだ場合は責任取れないから注意するように。最後にあっちの世界のある程度の知識を授ける、言語は日本語で通じるようになっとるから安心せい」
そう言うと異世界の言語知識が流れ込んでくる。
「では、お前さんのタイミングであっちの世界に行ける」
女神が一筆書きで何かを指で描くとそれが合図かのようにこの部屋に一つのドアが出現する。
「まぁあっちの世界はお前さんがやっていたあのゲームに近い、だから意外と過ごしやすいかもしれんな」
お茶を飲みながら女神とたわいのない会話を交わす。
相変わらず隣にいる女神はムスッとしている。
絶対反省していないと璃屠は思ったがあまりそちらは見ないようにしながらその出現した扉に向かい、開く。
そして、その扉を潜り再び璃屠の意識が遠のき……
璃屠は転生したーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。