裏美少女グランプリ開幕

 

 パンパンのホールでは、マイクを持ったリアちゃんがノリノリで観客達の興奮を抑えていた。

 …タキシード姿が似合うね。

 エントリーナンバーという事は、私は美少女グランプリに出ているという事か?

 いや、奥に裏美少女グランプリって書いてある…非公式な大会なんだね。


 観客はホールにギッシリ…狭くない?

 パンパンとロンロンの店員さん達とその関係者、フラムちゃん、ミーレイちゃん、チロルちゃん、ブリッタさんやステラさんやベラも居る。ほぼ身内だな。


「先ずは項目に沿って自己紹介と一言をお願いしますっ!」


「えっ、えー…私はアレスティア…フーツー王国の元王女、女神のお世話係、変態、深魔貴族です。趣味は衝動買いと可愛い女の子とイチャイチャする事です。特技は戦う事です。様々な出逢いで、私は心身共に強くなれた事を心より感謝しています。そして、こうして皆さんの前に立てる事を光栄に思っております! みんな大好きだよー!」


「「「キャー!」」」「アスティちゃん可愛いー!」「結婚してー!」


 反応は良い…ん? 斜め前に審査員席があるな。

 一つ空席にリアちゃんのネームプレート…司会と審査員もやるのか。

 隣にフーさん、知らない人、クーちゃん、蒼禍、ミズキ、ムルムーか。

 えっ、なに? 横にずれろって?


「続いてエントリーナンバー2番! ヘルたん!」


「「「キャー!」」」

「えっ…なによこれ…」


 ヘルちゃんも嵌められたんだね。解るよ…解るよその気持ち。

 盛大に引きつる顔が可愛いね。

 白いドレスにツインテールが巻き巻きされて、お嬢様感が凄い。

 私をチラリと見てきたので小さく首を振ると、全てを察したように遠い目で観客を眺めた。


「では項目に沿って自己紹介と一言をお願いします!」


「…私は、ヘルトルーデ・ニートー・グライト…帝国第二皇女、聖女、アスティの婚約者。趣味は裁縫、アクセ作り、人形作り。特技はお菓子作り、掃除よ。…みんなには、ここに慣れるまで沢山迷惑を掛けた…それでも、みんな優しくて、不器用な私に根気よく色々教えてくれた。この恩は一生忘れる事は無い…ありがとう……以上よ」


「ヘルたん様…」「こちらこそ…ありがとう」「うぅ…ヘルトルーデさまぁ…」


 ……ヘルちゃんの方が反応良いぞ。感動系に持っていくとは中々侮れない…というか趣味と特技がめっちゃ女子だな。

 因みにこれはどうやってグランプリを決めるんだ?

 何人参加するのかも解らないし……おっ、次は誰かなー。


「エントリーナンバー3番! ライラ!」

「「「キャー! 可愛い!」」」


「ぁっ…ぅっ…ょっ…ょろちく…」


 うわぁ…めっちゃ緊張してる…ライラは事前に知っていたみたいだな。それが逆にプレッシャーになっているみたい。

 おい、なんで幼稚園児の格好なんだよっ。可愛い過ぎかっ!


「それでは項目に沿って自己紹介と一言をお願いしますっ!」


「はっ、はぃっ…わ、私は…ライラ…でしゅ。趣味は…食べる事っ! 特技は空中ブランコでしゅ! みんな優しくてっ、大好きでしゅっ!」


「「「可愛いー!」」」「お持ち帰りしたーい!」「ライラたーん!」


 でしゅは卑怯だろ。ヘルちゃんもウンウン頷いているし…ライラは上手に出来なかったみたいでしょぼーんとしている…いや、むしろあれが正解だよ。

 みんな可愛いものに目が無いからね。

 私が普通過ぎてヤバいな…

 次は…おっ。


「エントリーナンバー4番! ヘンリエッテちゃん!」

「「「キャー!」」」「私ファンなの!」「可愛い!」


「なっ、なんですかこれ…えっ、裏美少女グランプリ?」


 流石のヘンリエッテでもテンパっているか…黄色いスパンコールドレスに金のティアラ…なんか豪華じゃね?

 辺りを見渡し、少し目を閉じた。

 そして、目を開いた時には決意の表情…おー、様になるなぁ。


「ではではっ、項目に沿って自己紹介と一言をお願いしますっ!」


「はい、わたくしの名前はヘンリエッテ・アース・ユスティネ…アース王国第一王女です。趣味は音楽鑑賞、ダンス、ピアノ演奏、読書です。特技はアースの家庭料理、氷の造形魔法。わたくしは…もっと、皆さんと仲良くなりたいです。普通の女の子として接してくれるパンパンの皆さんは…とても温かくて、第二の故郷と思える程に幸せな気持ちにさせてくれます。短い間ですが…よろしくお願い致します」


「私も仲良くなりたーい!」「ヘンリエッテちゃん可愛いー!」「お買い物行こうねー!」


「あっ、ありがとう…ございます…嬉しいです…」


 おー…ヘンリエッテが泣くパターンか。これは好感度を上げる良い手法だ…流石はグランプリ覇者。もうみんなの心を掴んでいる…これは…負けるかも知れない。


「最後はこの方っ! エントリーナンバー5番! アラステアちゃん!」

「「「おぉぉぉおお!」」」「女神さまぁー!」「「「キャー!!」」」「可愛いー!」


「ぬふふっ、わっちが一番じゃな」


 うわ…まじかよ…この声援の響き…凄い人気だ。

 幼女がめっちゃどや顔してるー。なんか腹立つわぁー。

 しかもなんだよその服…無駄に光り輝いて眩しいじゃねえか。


「それでは自己紹介と一言をお願いします!」


「わっちはアラステア…女神じゃ! 趣味は寝る事食べる事っ! 特技は食べる事寝る事っ! 座右の銘は暴飲暴食暴眠! 好物は甘い物しょっぱい物じゃ!」


「可愛いー!」「素敵ー!」「駄女神さまぁー!」「抱っこしたーい!」


 ……そんなどや顔しても駄女神って言われてんぞ。

 なんだよ、こっち見んな。


「それでは最初の点数を発表します! しばしお待ちをっ!」


 えっ、自己紹介で点数付けられるの?

 ……審査員が一人十点満点で、観客の声援で残りの三十点を決めるのか。


 おっ、終わったみたいだな。

 ドーンと後ろの巨大パネルに点数が映し出された。


 アスきゅん、80点。

 ヘルたん、88点。

 ライラ、90点。

 ヘンリエッテちゃん、91点。

 アラステアちゃん、93点。


 最下位じゃねえか。

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