結局私が生贄になれば話が早いという事か…
「そうですか…このままだと、いつ頃死ぬか解りますか?」
「数年後には暴走して死ぬ。その前にわっちが殺すがな」
数年後…早めに会っておいて良かった。好き放題やっていたら神敵になる所だったよ。
でも、どちらかしか選べないのか……
「どっちも選ぶ事は難しいんですか?」
「それこそ早死にするだけじゃな。火や水などの基本属性が同じくらいの適性ならまだしも、お主は光と闇だけをなんとか繋いでいるだけじゃ」
「今更他の属性を強化するなんて難しいですもんね……だとすれば星属性でなんとか繋いでいる状態」
「そうじゃな。お主の器で星属性をこれ以上強化するには、数年じゃ難しい。それとも、戦いから身を引くかい?」
妖精さんが星属性を目一杯上げてくれたお蔭で、私の命は伸びた。でも光と闇以外がショボいせいで、命の危機に瀕している。
私が戦いを辞める選択をしない事なんて解りきっているのに、ニヤニヤと悪戯に笑うアラステア様が可愛い過ぎてヤバい。
「少し、相談したい方が居るので…返事は保留でよろしいですか?」
「どうしようかのう…誰に相談するのじゃ?」
「…裏世界の天使様です」
「……くくっ、裏世界に通じておったか。ならば返事は待ってやろうぞ」
「…ありがとうございます。ところで、どうしてこの町に居るのですか?」
「家から最寄りの町だからじゃ。まぁ他にも理由はあるがな」
なにそれ。
家って何処さ。
女神の家って気になる。
「お家はどちらに?」
「秘密じゃ」
「行きたいです」
「駄目じゃ」
「どうしてですか?」
「今汚いからじゃ」
「…じゃあ抱き締めて良いですか?」
「それは良いぞえ」
やったー!
立ち膝になって、アラステア様を抱き締める。
こんな細い身体に大きな力が内包されているのか…サラサラの白髪がひんやりして気持ち良い。
「懐かしいのう…こうやって誰かに抱き締められるのは」
「この町の人には会わないんですか?」
「人の子は話し掛けぬ限り、わっちの事を認識出来ぬよ」
「話し掛けないんですか?」
「話し掛けてどうするのじゃ。話し掛ければ…繋がりが出来る。繋がりが出来たら、人の子らは…わっちの為に頑張ってしまう…寿命が尽きるまで」
人の寿命は百年も無い…アラステア様にとって、閃光のように儚いものだ。短い時間を、女神の為に使うよりも、少しでも自分の為に使って欲しいというのか。
女神の感情なんて人間とは違うと思う…思うけれど、寂しいとか思うのかな? 孤独を感じるのかな?
「アラステア様、お出掛けしませんか?」
「お出掛け? わっちを何処に連れていきたいのじゃ?」
「アースの城に、ミズキという迷い人が居ます。アラステア様に会わせてあげたいんです」
「あぁ…迷い込んだ者か。会っても仕方が無いんじゃがなぁ…」
渋るアラステア様を抱っこしながら立ち上がって、長椅子に座る。態勢を変えてお姫様抱っこをした。少し緊張するけれど、至近距離にアラステア様の顔があるという夢のような体験を心に刻まなければならない。
「元の世界には返せないんですか?」
「まぁの。わっちの格では難しいのじゃ…でも、お主は知っているじゃろ?」
「えぇ…ですがリスクを伴います。安心安全な方法があればと思ったのですが…」
「くくっ、今聞いてみれば良かろう」
ミズキを元の世界に返す方法。正規の方法をアラステア様なら知っていると思ったけれど、そもそも迷い込んだ時点で正規では無い…か。
私が知っている方法は…私という生贄が必要だから…
まぁでも、聞いてみるのも一考か。
「はぁ…リーアーちゃーん!」
……なんだ? 今来ようとしたけれど、やっぱりやめた感の雰囲気。くそっ、最近出番が無いから拗ねているな……焦らさないで来てよ。
「可愛いリアちゃーん!」
……おっ、さっきより手応えあり。でもまだ来ない。拗ねる感じから、ワクワクしている感じに変わりつつある…まさか、私に何か言質を取らせようとしているのか。この弄ばれている感じ…まずいぞ。
「アラステア様…もう私という生贄の準備が出来つつあります…」
「結局、生贄って何をするんじゃ?」
「リアちゃんの欲望を、私が叶えなければいけないんですよ…」
「あぁ…あの者達は変り者じゃからなぁ」
アラステア様が遠い目だ…解るよ、その気持ち。でも者達って…まぁ、追々解るか。
何がリアちゃんの琴線に引っ掛かるか……
デート…いつもしているからなぁ。
新メニュー開発…この前したからなぁ。
一週間私を独り占め…一番現実的だけれど…
……あっ! 目の前にいるじゃあないか!
「……アラステア様付きでデート」
「えっ…」
「アスきゅん、呼んだ?」
来たーー!
すみませんアラステア様、新たなる生贄になって下さい!
いや、睨まないで…ほんと、すみません…神敵にしないでね…
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