会議でおっさんばかり喋ると見分けが付かないね
再び会議室にて、私の報酬に関しての審査会議が始まった。
メンバーは前と同じ面子にプラスして、城の監査員やらロートン公爵家の関係者が多数…公爵の息子であったり、分家の代表者。当のロートン公爵本人は領地にて指揮を取っているので不在…多分私が無視した馬車に居たのが公爵さんだと思われる。
「それでは白雲さん、あの映像をもう一度観せていただけますか?」
何故か王女が議長をしている。
私は黙って白い壁に向かって地味眼鏡を向けて、ポチッとな。
≪てめぇかぁぁ! シラ…≫
あっ、間違えた。てへっ。
「すみません間違いました。こちらです」
「……白雲、後で私の部屋に来なさい」
あれ? 王女が凄い怒っている。無表情で殺意を私の眼鏡にペシペシ当てている。すまんすまん間違えたんだよ。
直ぐに迷宮氾濫の映像を流したから許せ。
幸い王女が凄い形相での映像が一瞬流れただけ。
王女と気付いた人は極僅か…でもその極僅かは笑いのツボに嵌まってしまって抜け出せない様子。
ミズキは歯を食い縛りながら目を閉じて天を仰ぎ、ブリッタさんは腹筋を押さえて泣き笑い。可愛いお姉さんを笑顔に出来たから、我ながら良い仕事をした。
もちろん私は白兜の中でニヤニヤしている…顔が隠れるって便利だよ。
……映像が終わり、公爵側はざわざわしていた。事実に対して、あまりにも報酬が少ない。
≪兜を脱いで跪け!≫
前回の会議室映像の良い所も添えてあげる。
「どういう事だ? 恩人に跪けと?」
「こ、これは事実を知らなかった故…」
「知らなかった? 事実を確認しなかったのか?」
「何度も確認しましたが…ニコライの説明不足で…」
おー、良い感じにおっさんが罪の擦り合い。なんか偉そうなおっさんがおっさんを追い込んでおっさんが焦っておっさんのせいにしている。
もうね…みんな似たような服を着て、似たような髪型だから、各おっさんの特徴が無いんだよ。
「あの、言っておきますが…ニコライさんが感謝を伝えたからこそ、私はこの場に戻ってきています。もし、ニコライさんを責めるような事があれば、私は好きに行動させてもらいますので宜しくお願い致します」
「…好きにって、例えば何かしら?」
「ただ用事を済ませて、この国を去るだけです」
別に何かをする訳では無い。やる事やっておさらばですよ。
「用事…あなたの目的は何?」
「皆さんには全く関係無いので、答える義理はありませんよ」
…なんか不穏な空気。興味を持たれているけれど、信用されていないみたい。まっ、私は見るからに怪しい人物だから仕方無いか。
「答えてもらわないと、報酬をあげられないと言ったら?」
おっ、なんか偉そうなおっさんが喋りだしたぞ。誰かは知らないが、それを言ったら私の行動は決まったようなもの。
「じゃあ報酬は要りません。皆さん貴重な時間をありがとうございました。すみませんがミズキ様、決裂したので私は一人で行きます」
追い込もうとするなら、さっさとここから去ろう。すまんが対等じゃないんだ。交渉しようとした時点で終わりだよ。
さっ、帰ろ帰ろ。ばいばーい。
「待って!」
「なんでしょう」
「…ミズキ?」
「白雲、私も連れて行って」
「私は構いませんが…あなたが勇者である以上、難しいですよ」
「じゃあ私は勇者を辞めてこの国を出る」
「ミズキ! なんで!」
辞めるって言って辞められるものなの?
凄いざわざわしているけれど、益々面倒になるぞ。ほらぁ、王女が泣き出したじゃん。
これじゃあ私が用事を答えないと、みんな納得しないよ。勇者が辞めると言う程の用事だから…
「私は難しいと言っただけで、無理とは言っていません。ミズキ様はこの国出身じゃないのに何故か連休を貰えない程に忙しいんですからね。発言には気を付けて貰わないと、飛び火が凄いですよ」
「あっ、うん…ごめん」
その間、偉そうなおっさんは私の様子を観察していた。そもそもおっさんのせいだから、何か言いなよ。知らんぞ。
「白雲と言ったか…何を知った?」
「質問ばかりですね。別に知っている事は、大した事じゃありませんよ」
「それは、お前にとって大した事ではない…だろ?」
「ええ、そうですね」
あっ、思い出した。このおっさん、ミズキの記憶で視た王の側近だ。だから偉そうなんだな。
あの事件の主犯格か…視たい…視たいけれど、周りに人が居すぎる。
何処かに誘導出来れば…誘導…おっ? 良い事を思い付いた!
「出来れば教えて欲しいものだがな」
「ふふっ、ここで言ったら大混乱ですよ。それは置いといて、ミズキ様…休みを取らずに済む良い事を思い付いたんですよ」
「…凄く嫌な予感だけど、何?」
「あのお方を、なんとかしてこの城に連れて来ます。これで万事解決ですねー」
「…大混乱どころじゃないでしょ」
スルスルと移動して、出入口に到着。偉そうなおっさんは鋭い眼光で私を見据えている…そんなに見詰めても教えないよー。
王女は私と共にミズキが行かないように、ミズキの腕をガシッと掴んでいる…依存が凄いぞ王女よ。
「という事で行ってきまーす。三、四日で戻って来ますねー」
ミズキはこの後、質問責めにされると思うけれど、あの目を見れば大丈夫だな。
ふっふっふ。おっさん達よ、アラステア様を連れて来れたら、アレスティア王女殺人事件の詳細を暴露してあげようか。おっさん達の対応次第だがね…楽しみにしておくがいい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます