最後の希望…

 

 ミーレイちゃんとはバイバイせずに、そのまま一緒に居てくれるというのでお言葉に甘えた。

 再びトイレで金髪ぐるぐる黒女に変身…待っていたミーレイちゃんと学校を出る。


「ミーレイちゃん、サボらせちゃったね。ありがと」

「中々ないチャンスだからね。アスティちゃんと二人きりって」


「そうだ、ミーレイちゃんにお願いがあるんだ」

「何? なんでも言って」


「魔導ブラジャーの改良をお願いしたくて…これなんだけれど…」


 袋に入った魔導ブラジャーを五つ出してミーレイちゃんに渡す。

 ミーレイちゃんは袋を覗き込み、私の胸をチラ見して、再び袋の中に目を移す。

 ……今何考えたの? 教えて。教えてくれないと…そのふわっふわおっぱい揉んじゃうぞ。

「これは…何処で?」

「レイン王国。新入荷って書いてあったよ」


「レイン…ギルス商会か。あの、丁度ね、私…下着のブランドを立ち上げている途中なの。是非…やらせて欲しいな」


 よっしゃ。

 その歳で下着ブランドの立ち上げか…確かに魔導ブラジャーは良い広告材料だね。


「形や大きさ調整は良いんだけれど、揉んだ感じが物足りないの。おっぱい感を出して欲しいなって」

「なるほど、少し固いわね。素材を柔らかくして…でもモデルが居ないと…」


「私はいつも居る訳じゃないから…チロルちゃんに頼んでみようよ」

「あっ、そうね。週末は家にも来るし、適任かも…」


 頑張ろうねチロルちゃん。貧乳が世界を救う時が来たんだよ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 魔法学校の前にて、チロルちゃんを待ち伏せ。

 正門のど真ん中で仁王立ちをするミーレイちゃんが格好良い。

 魔法学校中等部の制服はローブだから、魔法使いっぽい生徒が出てくる出てくる…あっ、魔法学校だから魔法使いなのか。

 生徒達はミーレイちゃんの事をチラチラ見ているけれど、ミーレイちゃんは真っ直ぐ前を見て不動。


 私はミーレイちゃんの後ろでただ立っているだけ。金髪ぐるぐる黒女だから、腰巾着感が凄い。


「道を空けろー、ミーレイ様のお通りだー」

「…それ何?」


「ミーレイちゃんの腰巾着」

「恥ずかしいから駄目よ」


「めっ、て言って」

「めっ、よ」


「唇エロいね」


 ミーレイちゃんは家庭教師の関係で、チロルちゃんのタイムスケジュールを把握している。だからこの時間は寮に戻る為、正門を通るらしい……あれかな?


 身体が小さいからローブに着られている感満載で、下向きにポケーっとしながら歩いてくる。


 ……正門の端を目立たないように歩いているから、ど真ん中で仁王立ちしているミーレイちゃんに気が付いていないな。


「チロル」

 ビクッ…とチロルちゃんの肩が跳ね、そーっとミーレイちゃんを見た。

 二人は普段どんな会話をしているんだろう……上下関係がハッキリとしている感じが…


「あっ、ミーレイちゃん…」

 トコトコ歩いてミーレイちゃんに近付いて、怪しい人物…私を見てビクビクしている。小動物みたい…


「おらおらー、ミーレイ様の御前であるぞー」

「ひぅ!」


 ミーレイちゃんの後ろからイキってみると、チロルちゃんが面白い。逃げたいのにミーレイちゃんが居るから逃げられないという…逃げ癖があるチロルちゃんが逃走を成功させた事は無いな。

 もちろん逃がさんよ。


「…めっ、よ」

「ミーレイさまぁー、ぎゅー」


「……アスティちゃん、何してるの?」


 バレたー。

 ミーレイちゃんに抱き付ける人なんて、私くらいなものだからね。女王様感が凄いから、お友達でも気軽にスキンシップは取れない。高嶺の花って奴だ。


「チロルちゃん、これから会議をするから着替えて来て」

「えっ、まず予定を聞くでしょ…」


 大丈夫。チロルちゃんに予定なんて無いから。

 予定があっても私を優先させるし、私よりお友達の予定を優先させたら、目の前で泣いてやるから。

 という事で着替えて来て。


「私の前ではチロルちゃんに自由は無いよ」

「うぅ…喜んでいる自分が憎い」


 寮は正門から出て直ぐ隣にある女子寮。そこへ小走りで向かって行った。


 待っている間、ミーレイちゃんと旅の話をしていた。

「レイン王国の婚活イベント凄かったよー」

「女の戦いって見てみたいわね。そうそう、アレスティア王女が居たらしいんだけれど、見れた?」


「んー…多分、レインの王子をブッ飛ばしていた人かな?」

「そうなの? 私も見たかったわね、偽物だろうけれど」


「どうだろうねぇー」


 私の正体は、帝都では言えないかな。

 何処に誰が居るか解らないし。


 雑談していると、チロルちゃんが戻って来た。

 ふんわりした服に魔導ブラジャー着用…それで違和感を無くしているのか。私より魔導ブラジャーの研究していらっしゃる。

 じーっと見詰めると、目を逸らされた。


「ア、アスティちゃんは着けないの?」

「私の分は、ヘルちゃんに全部没収されたよ。ミーレイちゃんに渡した物が最後の希望」


 なんとか改良用の五個は死守したけれど、他は奪われた。またスポブラ生活だよちくしょう……


 その後は、三人でパンパンへ行きブラ会議をした。途中で貧乳仲間の店員さん達も参加したので、意見が沢山貰えてミーレイちゃんは嬉しそうだった。


 どんなものが出来上がるか楽しみだな。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 エーリンはパンパンのみんなと過ごすというので、一人でアースの城に戻って来た。


「レティ…明日、ロートン公爵の使者が会いたいって言ってきたよ。このフロアの会議室で会う予定だから、それまで居てね」

「あぁ、忘れていました。良いですよ、私はミズキさんの予定待ちなんですから」


「ごめんね、連休って難しくて…」

「適度な休みと適度な仕事…安定しているように見えて、行動を限定しているんですよ。ところで、王女以外にここに居る理由ってあるんですか?」


「うーん…安定収入。後は…アレスティア王女殺しの弱みを王に握られているし…」

「大人の事情ですね。あっ、黒騎士の鎧って何処にあるんですか?」


「ここには無いよ。確か…宝物庫で埃を被っていた魔防具だったかな」


 宝物庫か…ミズキが連休取れるまで暇だし、お城の探検でもしようかな。

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