豪華な報酬が欲しいんだ

 

「私はロートン公爵兵団のニコライだ。貴殿らの名を教えて貰えぬか?」


 少し落ち着いて、隊長っぽい人が現れた。鎧を着たおじちゃんって感じ。ここはロートン公爵家の領地か…と言ってもロートン公爵家を知らないので、名前くらいは覚えておこう。


「エーリンですー」

「アレスティア」

「あっ、チロルでしゅ」


「…この度は、魔物の氾濫を抑えて戴き…感謝してもしきれぬ…あの町は故郷でな…貴殿らのお蔭でなんとか守る事が出来た。改めて、お礼申し上げる」


 私達には好意的な人だな。一部の私兵は、私達を怪しい奴らっていう目を向けているけれど。まぁ、そりゃ広範囲殲滅魔法を使える女子なんて聞いた事も無いから仕方無いか。


「ええ、私達は通りすがりなので…休憩が終わればさっさと出発したいのですが」

「お急ぎの所申し訳ない。だが是非ともロートン公爵様に会って戴きたい」


「えー、嫌ですー。会ってどうするんですかー?」

「エーリン、お口チャックだよー」


「はいー。ジジジジジー…お口チャックですー」

「黙れって意味だ。口を閉じろという意味だ。空気を読め」


「アレスティアは最近冷たいですー。差別ですよー。ねーチロルちゃーん。あっ、さっき噛みましたねー」

「それに触れるな。あっ、ほらぁ…チロルちゃんがいじけたぁ…エーリンのせいだぞー」


 エーリン、駄々こねるな。

 私兵が嫌なのか? あっ、私に会うまでに町で衛兵に追われたのか。

 まぁ、口を尖らせてぶぅぶぅ言いながらアゴをしゃくれさせる高等技術は褒めてやろう。


「あの…馬車を用意している。公爵様の所まで行くから乗って戴けないか?」

「すみませんが、エーリンは男性恐怖症なので乗れません。何かお礼をしたいというのであれば…お友達の勇者ミズキさんに届けてもらえませんか? これから私達は王都へ行くので」


「ミズキ殿に…なるほど、了解した。では、公爵様に報告後…私も追って王都へ行こう」

「はい、お手数掛けますが宜しくお願いします。代わりと言っては難ですが…これからあの迷宮の調査をしてきます。王都で報告書を渡す…という事でよろしいでしょうか?」


「おぉ、調査をしてくれるのか! 是非ともお願いしたい! その報酬も公爵様にお願いしてみる」

「はい、では王都で会いましょう。行くよ」


 星を出して、みんなで乗り込む。ばいばーい。


「あの、失礼かと思うが…アレスティア殿は…」

「…私は女です。では」


 違う事を聞きたい雰囲気だったけれど、女子アピールをして星を操作し上昇していく。

 今度こそばいばーい。



「アレスティアー、この大変な状況でお礼だけ受け取ろうとしましたねー」

「人でなしみたいに言うな。落ち着いたら王都で貰う約束をしただけだよ」


「王都で貰う意味ってなんですかー?」

「王都なら見栄を張らなきゃいけないから、報酬が豪華になる。更にミズキの前で貰う場合…もっと豪華になる」


「それを搾取って言いますねー」

「そうだよ。私達に助けて貰ったのが運の尽きさ。それに…領地で報酬を貰う場合、別途依頼を頼まれる場合が多い。それで、はいさよならーとはいかないものだよ」


 言動に気を付けなければいけないのに、エーリンがそれをぶち壊す可能性は…百パーセント。

 公爵の家に数日泊まる事にもなるし、それなら迷宮の調査をした方が有意義。アース王国に滞在するのなら、立場を上げるのは必須だよ。


「アスティちゃん、勇者様とお友達なの?」

「まぁ、因縁の相手かな。多分ミズキは私の事を苦手に思っているけれど…私のわがままを嫌とは言えないからね」


 ミズキには、多少のわがままは許してもらおう。

 その代わり、ミズキが欲しくて欲しくて堪らないものを私は持っているから……


 ふふっ、さてさて…迷宮探索でもしますかー。


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