迷宮は裏世界にも繋がっているのかな?

 

「くっ…エイベル様、私達が囮になります。その隙に私諸共斬って下さい」

「そんな事! …くそ!」


 戦っている三人は、青い鎧の騎士っぽい男性、白い鎧の男子、赤いローブの魔法使いっぽい女性。青鎧と赤ローブは白い鎧の男子を守っている。

 あっ、駐車場にあった豪華な馬車はこの人達のか。


 黒い魔物…まぁ悪魔で良いか。体長五メートルくらいだからそこまで大きくない。

 悪魔は私達の気配に気付いた様子だ。

 でも男子達から目を離していないな。余裕って事か。


 とりあえず男子達に話し掛けよう。横取りしたら怒られそうだし。

 歩いて中心へ。三人の横に立つ。


「助けが、必要ですか?」

「えっ…」


「私達がこの魔物貰って良いですかー?」

「あっ…あぁ…」


「よーし、封印中だから二人で倒そうか。エーリン、五割ね」

「了解しましたー」


 よし、貰って良いらしい。

 私は雪華を出して、エーリンは鬼棍棒を出して肩に担いだ。


『雑魚が増えたか。纏めて殺してやろう』

「ライトソード」

「じゃあ私は剛体術・赤ー」


 雪華がライトソードで光り輝き、エーリンが赤いオーラに包まれた。身体強化か…良いなー。


 何か呼び止める声が聞こえるけれど、貰って良いって聞いたから無視。邪魔したら攻撃しよう。


『死ね』

 悪魔が大きな黒剣を振り下ろしてきた。

「任せて下さーい」


 ガキンッ――金属がぶつかり合う音が響いた。

『なんだと…』

 エーリン…受け止めたのか…すげえな。後ろからも驚愕の声が聞こえる。

 黒剣を受け止められ、硬直した右手…

「無元流・骨断ち」

 シュパンって斬れた。抵抗無いと気持ち良い。


 右手と一緒に黒い大剣が落ち、勿体無いから収納。

 高く売れるかな?

 悪魔が私をキッと睨む。

 危ないぞー。

「ていー」

 その隙を付いてエーリンが腹にフルスイング。


『ぐはぁ!』

 バキバキと骨が折れる音を響かせながら吹っ飛んだ。


「いえーい」

「いえーい」


 ハイタッチー。

 ポキッ。

 痛え、忘れてた。ハイヒール。


「強さ的にはSランクだね」

「Sランク? 私達だと中位悪魔ですよー」


 エルドラドだと、これが中位か。

 魔物の質も違うんだね。おっ、起き上がった。


『なんだお前ら…魔力を隠蔽しているな』

「御名答。さて、やられて下さい」


『ふんっ、この深魔貴族の我がやられる訳が無い! ダークフォース!』

「深魔貴族? …ふふっ、ふふふ…笑わせますね。ならば見せて下さい」


 この程度の強さで深魔貴族?

 裏世界に通ずる存在と解ったから良しとするか。


 悪魔が黒いオーラを噴き出させ、力を溜めている。部屋全体に響く闇の波動は、弱い者なら発狂するな。

 幸いこの部屋にいる人達は大丈夫そうだけれど、少し辛そうか。


『これで終わりだ、ダークネス・クラッシュ!』


 大きな闇の波動が迫る。

 まともに食らえば瀕死の重症…

「深淵の瞳」

『――なに! 吸収だと!』

 でも…私には効かないんだよ。すまんね。ごちそうさま。


「やっぱり、あなたは深魔貴族じゃありませんね。本物の足下にも及ばない」

『お前は…何者だ』


「ただの人間ですよ。ソルレーザー」


 悪魔の脳天から光の柱を落とす。

 吸収したエネルギーも乗せているから、威力は悪魔程度なら一撃。

 光の柱が消える頃には、悪魔は跡形も無く消え去った。


「…エーリン、行こっか」

「はいー」


 収穫は黒い大剣か。デカイから誰も使う人が居ないな…グンザレスさんに渡してみるか。

 奥の扉が開いたから、奥へ行ってみよう。



「待ってくれ!」


「あっ、そうだ。お昼ご飯何食べる?」

「なんでも良いですよー」


「いつもなんでも良いって言うから困るんだけれど…」

「お腹に入れば一緒ですからねー」


「まっ、待ってくれ!」


 何さ。振り返ると、白鎧の男子を先頭に青鎧と赤ローブが歩み寄って来た。…いや、倒れている人をなんとかしなよ。


「私達に構わず倒れている人を助けた方が良いですよ。まだ生きている人も居ますし」

「あっ、あぁ。頼む」

「はっ!」


 頼む。じゃなくてさぁ…君も助けなよ。命懸けで守ってくれた人に敬意を払え。倒れている人は五人。その内生きているのは二人、か。


「ところで、何故この部屋に挑戦したんですか?」

「…この迷宮を攻略する為、だ」


「そうですか」


 じゃあねー。


「待ってくれ! まだ礼をしていない!」

「礼? 何故私達に礼をするんですか?」


「いや、助けてくれたから…」

「…お礼はあなたを命懸けで守ってくれた方にするべきです。亡くなった方も居ます…気持ちは伝わりましたので」


「……確かに、そうだな。名前を、聞かせてくれ」

「……」

「エーリンと申しますー。アレスティアー、話すだけ無駄なんで行きましょー」


 ちょっ、引っ張るな! 肩が外れる! 二の腕抉れるから掴むな!

 エーリンをペシペシして離れる。

 彼らは名乗りもしなかったし、さっさと奥に行こう。




 * * * * * *




「アレスティア…か」

「エイベル様、戻りましょう」


「しかし…あの者達に礼をしなければ…」

「迷宮の入口に一人付けます。城に同行願いますので、ここはどうか…」


「わかった…」

「気持ちを切り換えて下さい。後始末は私達がやりますので、婚活イベントを盛り上げましょう」

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