クッキー作り。

 

 という事で、パンパンのキッチンにやって来た。

 何かをあげようと思ったら、女子らしくクッキーでしょう。


 材料と場所代はリアちゃんに銀貨一枚払って購入。

 店員さん達がソワソワしている。特にムルムーとレーナちゃんがソワソワしている。接客しなさい君達。


 うーん……普通のクッキーで良いものか。

 食べて普通だねとか言われたら少し辛い。

 リアちゃんに聞こう。


「リアちゃん、美味しいクッキーが作りたい」

「アスきゅんの愛があればなんでも美味しいよ?」


 精神論じゃないよ。

 味覚の事を言っているんだよ。

 ……リアちゃんが仕方ないという顔をして、何かを取り出した。


「これは…砂糖ですか?」

「うん。レインボーシュガーっていうの」


「でも白いですよ?」

「それはねぇ…作る人と食べる人の魔力によって味が変わるのよ」


「へぇー、面白いですねぇー。でもそれって博打ですよね?」

「大丈夫。アスきゅんなら一定基準以上になるのは確実だから」


 それならお言葉に甘えて使わせて貰おう。


 ……作り方は普通。

 入れている物は普通じゃない。

 ……

 ……出来た。

 素材の混ぜは回転する魔導具で一瞬。

 生地の寝かせや焼きをリアちゃんのオーブンを使ったら…一瞬で出来た。

 ……ここのキッチングッズってオーバースペック過ぎない?


 パンケーキが出来るスピードが速い訳だ。

 納得。


「リアちゃん、出来ましたよ」


 リアちゃんの口にクッキーを入れる。

 指まで食べようとしないでよ。

 …どうですか?


「……」


 言葉で語らなくても表情で解る。

 少し涙ぐんで幸せそうな表情。

 美味しいって事で良いのかな。


 お次は目の前で待っていたレーナちゃん。

 …どう? あれ…目に涙が…


「ぅぅ…お母さん…お母さんの味だ……ふぇぇええん!」


 ……えっ…ごめんなさい、思い出させて。

 でも私にお礼を言っているから良いのかな…

 レーナちゃんをよしよししながら、ムルムーに食べさせてみる。


「……びめざばぁ…ぅぇえええん!」


 姫って言うなし…私はここだよ。

 仕方ないのでムルムーもよしよしする。

 リアちゃん、もう両手が塞がってよしよし出来ないからね。

 睨まないでよ。

 仕方ないじゃん。


 ……うん、嫌な予感しか無いね。このクッキー……


 パンパンのみんなに食べさせたら、嫌な予感は当たった。

 みんな泣き出す始末。

 クッキーを作る時間よりも、よしよしする時間の方が長い。


 ……どうしよう、騎士さん達にあげても良いものか。


「アスきゅん、楽しそうだからあげてみてよ」

「他人事ですねー。時間も無いので仕方ない…これをあげてみましょうか……」

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