夢の中で……2
……知らない景色。
夢の中かな。
だとしたら……
「キリエ、これから向かうのは東の地だ」
「…うん」
長い銀色の髪を靡かせたルルの姿。
やった。御先祖様…キリエの記憶だ。
ルルがキリエにこれからの事を話している。
あの町は…キリエが孤児院の子供達に町外れの倉庫に閉じ込められた後、魔物の襲撃に遇ったらしい。
住民は食べられたか逃げ出した後に、キリエがなんとか脱出。
戻って来たら誰も居ないっていう……不憫だな。
キリエは可愛いから男子達がからかって…それがエスカレートしたんだと思う。そのお蔭で助かったというなんとも言えない感じだけれど……
なんだろう…この歳で不幸を背負っているとか…大人になったら凄い精神力になっていそう。
「…何か、食べたいものはあるか?」
「…」
「遠慮しなくて良い。それなら、私が決めるよ」
ルルが何処かから出したご飯がテーブルに並ぶ。
……めっちゃ美味そう。
見た事の無い料理……いや、似たような料理はロンロンで見た事がある。
テーブルの隅に置かれている焼き芋はなんだろう……あっ、ルルが食べるのね。
「…美味しい」
「良かった」
ルルは何者なんだろう……正直私の姿は、御先祖様よりもルルの方が似ている。御先祖様は金色の髪だし……
ルルは流れ者と言っていた。
世界を回って素材を集め、その素材で作った武器を売り生計を立てている。らしいけれど…何か違和感がある。
キリエがお腹一杯食べた後、ルルが小舟を出した。
それに乗り込むと、宙に浮き進み出す。
……まぁ、そんな魔導具もあるか。
近くの街へ行き、キリエの服や日用品を買い準備を済ませる。
準備が終わり、また小舟に乗って東の地へ向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから、ルルとキリエは世界を回る。
ルルは珍しい素材を集め、キリエは勉強や戦い方を学んだ。
ルルの教えは凄い。
戦い方に関して、かなりの知識を持っている。
使う魔法も百を超えている。
超級魔法の上…禁術級魔法と神級魔法があるとも教えてくれた。
私もかなり勉強になる。
出来れば教えを乞いたいな……
ルルと過ごしていると、キリエの身体に変化が起きた。
ある日、髪が銀色に変化していた。
それを聞くと気まずそうな顔で頭を撫でてくれた。
「髪…お揃い」
「ごめんね。私のせいで」
「……お母さん」
「……やめろ。私は母では無い」
「私…捨て子だから…こんなに優しくして貰った事…無かった…」
「………好きに呼びな」
「うん! お母さん!」
「……あーくそ、めっちゃ可愛い」
ルル…耳が真っ赤だな。
心の声が漏れているし……
相当嬉しいんだと思う。
でも、一緒に居るのは少しの間と言っていた。
ルルは魔力が強くて、一緒に過ごすと髪が銀色に変化してしまうらしい。それに、光と闇の適性が上がり…神聖魔法が使えるようになってしまう?
神聖魔法ってなんぞや?
キリエも疑問に感じている。
「神聖魔法は…聖女が使う魔法だ」
という事は……キリエは、聖女になってしまったという事?
……大出世だな。
聖女と言えば世界を救い、導く者。
教会のシンボル。
……じゃあルルは聖女なのかな?
……そっか、私が光と闇の適性が強いのはルルが原因か。
じゃあ…私も神聖魔法が使える?
……今度リアちゃんに聞こう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あれ?
……景色が飛んだな。
これは…数年後か?
視線が高くなっている。
目の前には魔物の群れ。
という事は戦闘中?
「潰れろ! 白の流星!」
――ドゴォォオ!
うわ……白い隕石で敵を全滅……
デカイクレーター……
おいおいおいおい…まじか……キリエ強すぎ。
火力だけなら勝てないぞ……
「よしっ! 出来たぁ!」
「ふふっ、流石キリエだな」
ルルがこちらを見て微笑んでいる。
……全く姿が変わっていない。
普通なら小じわくらい出来そうなものなのに……
キリエは気にしていない様子だけれど、私は気になる。
美の秘訣を教えて下さい!
体型維持とお肌のケアを重点的に!
……私の声は届かないのが辛いな。
見ているだけだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
景色が変わった……今度はなんの場面だろう。
テントの中。
ルルは居ない。
居ないけれど、いつも持っている黒い槍が置いてある。
いつも持っている武器って気になるよね。
キリエが槍に触れてみた。
≪こんにちは。キリエちゃん≫
「――ふぇっ!」
……なんだ? 今の声。槍から聞こえたな。
またキリエが恐る恐る槍に触れてみる。
≪ふふっ、驚いたかな?≫
「えっ、うっ、うん……あなたは誰?」
≪私は、この槍に住んでいる……妖精みたいな者かな≫
「妖精さん。…どうして槍に住んでいるんですか?」
≪それは秘密。折角だから、良い物をあげる≫
槍から何か玉が出てきた。
銀色の玉。
「えっ…これは?」
≪試作品でね。キリエちゃんの為に作ったんだ。魔力を通してみて≫
言われるがままに魔力を通すと、銀色の光がなだれ込んでくる。
「あっ…くっ…これ…は…」
≪これは…キリエちゃんの運命を変える力だよ。これから…キリエちゃんには幾多の困難が待ち受けている。この力で…幸せを掴んで欲しい≫
「…幸せ」
≪そう。諦めたら駄目だよ。……それと、これを観ているあなたにもプレゼント≫
……は? 私?
えっ? なんで?
≪ふふっ、夢のお手伝い……また、会おうね。アスティちゃん≫
へっ、ちょっ! 何か身体に入って来たぁぁぁ!
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