荒野の奥へ。

 

 今週の仕事は全てお休み。

 特にイベントも無かったので、簡単に休めた。

 店長には遠征をしてくるので数日空けると伝え、準備を済ませて地味スタイルで家を出る。


 買い忘れた物は無いかな…泊まりだから、簡易テントと着替えと携帯食…そんなもんかなぁ…



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ラジャーナに到着。


 ……なんか騒がしいな。


 ……気になるから騎士団詰所に行こう。



「おはようございます」

「あっ、アスティ君。あの事を聞きに来たの?」

「あの事? 何か騒がしいので気になったのですが……」


「最近、魔物の均衡が崩れ始めているんだよ」


 聞けば魔物の割合が変わっているらしい。

 少し前までCランクが多かったけれど、最近はBランクの割合の方が増えている。

 そのせいで怪我人や亡くなる冒険者が後を絶たないらしい。。

 冒険者はちゃんとした訓練を受けないから死亡率が多い。



 確かにオーガの出現率が下がった気がするなぁ…

 私がオーガを倒しすぎた? いや、それは無いと思う……


「じゃあこの周辺にランクSが頻繁に出るって事ですか?」

「まぁ、理論上はね。もちろんちゃんと調査はするよ」


 ロバートさんにも聞いてみよう。

 ここの衛兵さんは知らない仲じゃないし、何かあったら嫌だ。


「丁度荒野の奥に行くので調べてみますね」

「……荒野の奥に? 何を…倒すの?」


「ふふっ、秘密です」


 聞きたい事は聞けたから、詰所を出る。

 去り際に災厄がどうこう言っていた…この地の伝説の魔物。

 それについては後で考えるとして、ラジャーナを出る為に南門へ。


 ……なんか沢山人が居るな。

 ランクBが多い今、大人数でパーティーを組んで倒そうってやつかな? 勧誘合戦が凄いなぁ…


「あっ! お前はあの時の! ちょっと話を聞いてくれ!」


 前に絡んできた男に話し掛けられた。

 彼は第一印象が悪すぎるのでササッと逃げる。


「待ってくれー!」

「はははっ! あいつ地味な奴を追い掛けてるぞ!」「そんなに余裕ねぇのかよ。はははっ!」


 なんか追い掛けて来るけれど逃げよう。

 あっ、衛兵さんお疲れ様でーす。手を振ると満面の笑みで振り返してくれた。


 冒険者諸君、配分で揉めるのは嫌なんだよ。解ってくれ。

 それに今からSランクが犇めく荒野を突っ走るからね。追い掛けて来たら死ぬよ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 荒野を走り抜けている。


「――ソルレーザー!」


 ――バシュン!

 振り向き様にソルレーザー。Aランク、デスモルスコーピオンを貫く。

 身体の中心を狙えば簡単に倒せるから良いけれど……


 数が多い。

 今二十体くらいに追われている。

 サソリ型の魔物…キシキシと口を鳴らしながら追い掛けて来るから次々とサソリが湧いてくる。

 真っ直ぐ逃げている訳ではなく、ぐるっと円状に逃げる私が悪いのだけれど……

 魔石が勿体無いからね。

 回収しながら逃げている。


 っとこうしていれば稼げるけれど、日が暮れる前に魔物が少ないエリアに行かないと……


 深淵の瞳を解放。

 黒い炎を召喚する。


「アビスフレイムウォール!」


 ゴォオォオ!――

 黒い炎の壁が出現。

 私を追い掛けていたサソリ達が次々と衝突。

 キシャー! と叫び、悶え苦しみながら死んでいく。


 漏れたサソリはソルレーザーで倒し、急いで魔石を回収。

 燃え尽きたら魔石だけがコロンと落ちているから楽だ。


 ふぅ…もう少しかな…


 地図にある魔物が少ないエリア。

 変な魔力を発する木があるから魔物が寄り付かないらしい。


 魔物を倒しながら進み、遠目に黒い木が見えてきた。


 あれかな?


 なんとか夕方に到着する事が出来た。良かった。


 三十メートルくらいの…黒い枝が螺旋状に絡み合い、禍々しい雰囲気の木。

 …これ、人も寄り付かないよね……


 説明によると…ここで寝ると悪夢にうなされるらしい。

 うん、悪夢くらい簡単に見そうな感じ。


 でも私は深淵の瞳があるから…結構調子良いかも。


 ここは良い休憩場所になりそうだ。


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