第56話 死霊裁判(後編)

 ユリカ:ヤッホ〜、ユリカだよ〜♪死霊裁判を受けるために民事エリアに居るけんさん。地獄に来ても周りをホッコリさせる人だねぇ♪そんな彼にどんな判決が下るんだろうね?皆んな天国に行って欲しいって願うけど、天界出身の私が言うのもなんだけどさ、天界はやめといた方が良いよ。


 魔界時間7:00 地獄界民事エリア内セントラルパーク


 けん:いや〜、空気が澄んでて良いなぁ♪


 ラジオ体操する老人達


 けん:へぇ、地獄にもラジオ体操あるんだ。


 老人達に話しかけるけん


 けん:おはようございます♪


 老人A:おはよう♪


 老婆:あら!この人志村けんじゃない?


 けん:はいはい♪


 老人B:俺こないだテレビで観たよ!


 けん:人界の番組もやってるんですか?


 老婆:人界の有名人が亡くなられる時は全国放送されるねぇ。有名なコメディアンなんでしょう?アタシ貴方が動物達と触れ合うあの番組好きよ♡


 けん:ありがとうございます♪


 老婆:貴方、魔界の動物興味ないかしら?


 けん:ありますねぇ〜、昨日会ったお婆ちゃんが連れてたヘルハウンドの赤ちゃん可愛かったなぁ♪


 老婆:ヘルハウンドの赤ちゃんも良いけど、私のお勧めはアダマンタイマイって亀型の魔獣の赤ちゃんね♡


 手持ちのデバイスの画像を見せる老婆


 けん:あ〜、こりゃ可愛いなぁ♪


 枯葉:あ、居た!けんさ〜ん!


 けん:ありゃ、もう時間かな?  


 老婆:裁判かい?


 けん:ええ。


 老人A:アンタなら絶対に無罪転生だって!


 老人B:応援してるよ♪


 けん:ありがとうございます♪


 枯葉:行けますか?


 けん:はい♪


『民事裁判所』


 受付嬢:志村さん、お待ちしておりました♪


 けん:宜しくお願いします。

 

 受付嬢:ではこの後10時より開廷ですので準備の方をお願いします。 


 けん:は〜い。


『控室前通路』


 けん:死霊裁判って弁護士や検事って居ないんだねぇ。


 枯葉:総合データバンク閻魔帳には裁判を受ける方の生まれてから亡くなられるまでの全てが詳細に記録されているので、判事である閻魔大王様は裁判の前に記録を確認して判決を下します。


 けん:あ、そんなに時間はかからないんだ。


 枯葉:ええ、その通りです。


 けん:閻魔大王っておっかないイメージがあるから緊張するなぁ。

 

 枯葉:フフッ、大丈夫ですよ。女性の閻魔大王様もいますから。因みに志村さんの判事も女性の閻魔大王様ですよ♪


 けん:それなら安心だ♪


『民事裁判所第7法廷』


 判事席へ上がろうとする時足を滑らせ壁に激突する摩耶


 摩耶:おぶぅ!


 けん:あちゃ〜、こりゃ派手にいったな〜。本人には悪いけど、アレ勉強になるなぁ♪


 ※芸ではなくリアルです


 飛鳥:だ、大丈夫ですか?


 常備していたティッシュを差し出す瑠璃


 瑠璃:さ、お嬢様これで鼻血を。  


 摩耶:うぅ、ありがと。


 ユリカ:判事席に立つ摩耶さん、でも・・・鼻血止めるために鼻に詰めたティッシュが緊張感を一気にぶち壊してるよ〜。 


 あちこちからクスクスと小さな笑い声が聞こえる


 摩耶:あうう。それではこれより、志村康徳さんの審議を始めます。それでは志村さん、前へお願いします。  


 証言台に立つけん


 摩耶:始めに言っておきますが、この審議は罪を問い罰するものではありません。亡くなられた方の今後の身の振り方を決めるものです。ですから緊張なさらずリラックスしてくださいね♪


 けん:あ、よく見たら君は遊歩道で会ったね♪


 摩耶:はい♪


 宙に浮いた液晶操作パネルから閻魔帳を閲覧する摩耶


 摩耶:志村康徳、生前の職業日本のコメディアンで1950年2月20日生まれ。日本東京都東村山市出身。亡くなったのは2020年3月29日東京都新宿区、死因は新型コロナウイルスによる肝炎。血液型はA型。身長166cm、最終学歴は東京都立久留米高等学校、現在の東京都立東久留米統合高等学校。


 摩耶:師匠はいかりや長介こと、碇矢長一いかりやちょういち氏。加藤茶こと、加藤英文かとうひでふみ氏。加藤氏の2度目の付き人時代を経て1972年に3人組のお笑いユニット、マックボンボンを結成後翌年解散。その後、荒井注こと荒井安雄あらいやすお氏の脱退後にザ・ドリフターズに加入。その後も8時だョ!全員集合やドリフ大爆笑、加ちゃんケンちゃんごきげんテレビ。志村けんのバカ殿様や天才!志村どうぶつ園で活躍する。これで間違いありませんね?


 けん:はい。間違いありません。


『判決』


 摩耶:貴方の死後、世界中で貴方の死をいたむ方々が跡を絶たない事から万民に愛された事は明白。更には多くの人達に夢と希望、そして癒しを分け隔てなく与えた事も考慮します。よって当法廷は地獄での懲罰及び懲役を完全免除とし、無罪転生の判決を下します。


 傍聴席から大きな歓声が上がる


 摩耶:志村さん、貴方はどの様な転生をお望みですか?ご希望であれば天国に行くことも出来ますが。


 けん:・・・俺は長さんと同じ偉人転生を望みます。


 摩耶:それは本人の自由ですが、理由をお聞きしても?


 けん:長さんがこの魔界に残るのには理由がある。先ずは長さんと同じ国に偉人登録してから国に向かう道中この魔界を見て回ろうと思います。


 摩耶:分かりました、貴方なら偉人転生を選ぶと思いました♪


 立ち上がる摩耶


 摩耶:これにて本日の審議を終了致します!


 摩耶の木槌が法廷内に響き渡る


『民事裁判所前』


 枯葉:あ、あの。志村さんならこの先お金は不要ですが、私からの餞別せんべつです。


 けん:ありがとうね♪


 老婆:ハァ、ハァ、ハァッ!良かった、間に合った!


 けん:婆ちゃんどうしたの⁉︎


 老婆:アンタにこれ、渡したくて。


 大きな卵を渡す老婆


 老婆:これ、アダマンタイマイの卵。孵ったらお世話してくれないかしら。


 けん:ありがと、大事に育てるよ♪


 摩耶:では志村さん、お気を付けて♪


 けん:摩耶さんも頑張ってね♪


 摩耶:はい!












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