カクヨムで開催されるコンテストは本当に増えているのか

   

 前回「それは次回以降の宿題として」と書いていたように、「最近カクヨムではコンテスト開催が増えている気がします」「以前は長編コンテストばかりだったのに短編コンテストがポツポツ出てきたような」という点について、調べてみることにしました。



 毎年のコンテストの数を、長編コンテスト・中編コンテスト・短編コンテストに分けた上で、比較してみるわけです。

 調べ方としては、「カクヨムからのお知らせ」の「コンテスト情報」カテゴリーから見ていきます。カクヨムで開催されるコンテストならば、開催告知や結果発表など、必ずここに掲載されているはずだと考えたからです。


 なお「コンテスト情報」を見ていくと、「カクヨムで開催されるコンテスト」以外に「カクヨムからも応募できるコンテスト」の情報が出てくる場合もあります。

 前者は例えばカクヨムコンのように、投稿作品の編集ページの「コンテスト」欄から選んで応募するものですが、後者は例えば「角川ルビー小説大賞」や「角川つばさ文庫小説賞」のように、タグ欄に応募キーワードを記入して応募するものであり、応募形式が異なります。

 そもそも後者は「カクヨムからも応募できる」というだけで、メインとしては他で開催されているものなので、むしろ一般公募に近い気がします。また、そのような「カクヨムからも応募できるコンテスト」の情報が「カクヨムからのお知らせ」にどれほど記載されているかわからない。開始よりも遥か以前の開催告知のみかもしれず、その場合は今回の調査で取りこぼすかもしれない。そう考えたので、今回は「カクヨムで開催されるコンテスト」のみを調べることにして、「カクヨムからも応募できるコンテスト」は省略することにしました。


 最初に「毎年のコンテストの数を」と書きましたが、一年の区切りは「年」ではなく「年度」、つまり4月から3月までの一年間で見ていくことにしました。

 理由は2つ。まず個人的に、私のカクヨム開始が4月なので、「年度」方式ならば、ちょうど私のカクヨム1年目、カクヨム2年目、カクヨム3年目で比べることが出来る。2つ目の理由としては、カクヨムコンのように「年」を跨いで開催されるコンテストがあるので、「年」よりも「年度」の方が紛らわしくないだろう、と考えたからです。



 以上のような方式で、さあ「カクヨムからのお知らせ」の「コンテスト情報」を見てみましょう。2019年4月あたりまで遡って、調査スタートです!

 ……と思って調べ始めたのですが、いきなり問題発生。2019年4月の時点で、開催中のコンテストがありました。つまり「年度」にしても「年度」を跨いで開催されるコンテストがあったわけです。

 そこで開始時期ではなく受付終了時期で「年度」を決める、という追加ルールを作って、改めて調査開始です!



2019年度(2019年4月から2020年3月まで)


「ファミ通文庫大賞」

 2019年4月時点で開催中、2019年5月10日まで

 10万文字以上16万文字以下(長編コンテスト)


「『アニメ新世紀宣言』体験談コンテスト」

 2019年4月26日から2019年6月9日まで

 2000文字以下(短編コンテスト)


「ドラゴンノベルス新世代ファンタジー小説コンテスト」

 2019年5月7日から2019年6月30日まで

 10万文字以上(長編コンテスト)


「カクヨム甲子園2019」【ロングストーリー部門】

 2019年7月19日から2019年9月16日まで

 8千文字以上2万文字以下(短編コンテスト)


「カクヨム甲子園2019」【ショートストーリー部門】

 2019年7月19日から2019年9月16日まで

 4千文字以下(短編コンテスト)


「大人も子供も参加できる! カクヨム甲子園《テーマ別》」

 2019年7月19日から2019年9月16日まで

 3,000文字以上15,000文字以下(短編コンテスト)


「スニーカー文庫《シチュエーション斬り!!》コンテスト」

 2019年7月1日から2019年8月31日まで

 5万文字以上(中編コンテスト)


「オーバー30歳主人公コンテスト」

 2019年7月5日から2019年9月2日まで

 10万文字以上16万文字以下(長編コンテスト)


「富士見L文庫×COMIC BRIDGE 頑張る女子主人公コンテスト」

 2019年9月2日から2019年10月1日まで

 10万文字以上16万文字以下(長編コンテスト)


「第5回カクヨムWeb小説コンテスト」

 2019年11月29日から2020年1月31日まで

 10万文字以上(長編コンテスト)


「カクヨムWeb小説短編賞2019」

 2019年11月29日から2020年1月31日まで

 1万文字以内(短編コンテスト)


2020年度(2020年4月から2021年3月まで)


「第26回スニーカー大賞」

 2020年2月7日から2020年4月1日まで

 10万文字以上15万文字以下(長編コンテスト)


「カクヨム2020夏物語」

 2020年3月27日から2020年5月6日まで

 4000文字以下(短編コンテスト)


「第2回ファミ通文庫大賞」

 2020年2月21日から2020年6月7日まで

 8万文字以上(長編コンテスト)


「第2回ドラゴンノベルス新世代ファンタジー小説コンテスト」

 2020年5月6日から2020年6月30日まで

 10万文字以上(長編コンテスト)


「角川武蔵野文学賞」

 2020年6月5日から2020年8月5日まで

 800文字以上4000文字以下(短編コンテスト)


「カクヨム甲子園2020」【ロングストーリー部門】

 2020年7月17日から2020年9月13日まで

 6千文字以上2万文字以下(短編コンテスト)


「カクヨム甲子園2020」【ショートストーリー部門】

 2020年7月17日から2020年9月13日まで

 4千文字以下(短編コンテスト)


「『5分で読書』短編小説コンテスト」

 2020年10月2日から2020年11月24日まで

 3,000文字以上6,000文字以下(短編コンテスト)


「『アナザーエデン 時空を超える猫×カクヨム』シナリオライター発掘コンテスト」

 2020年11月9日から2021年1月31日まで

 20,000文字から40,000文字まで(中編コンテスト)


「第6回カクヨムWeb小説コンテスト」

 2020年12月1日から2021年1月31日まで

 10万文字以上(長編コンテスト)


「カクヨムWeb小説短編賞2020」

 2020年12月1日から2021年1月31日まで

 1万文字以内(短編コンテスト)


「電撃の新文芸2周年記念コンテスト ――編集者からの4つの挑戦状――」

 2021年2月1日から2021年3月8日まで

 5万文字以上(中編コンテスト)


2021年度(2021年4月から2022年3月まで)


「ソード・ワールド2.5リプレイコンテスト」

 2021年4月1日から2021年5月31日まで

 1万5千文字以上(短編コンテスト)


「第3回ドラゴンノベルス新世代ファンタジー小説コンテスト」

 2021年5月6日から2021年6月30日まで

 10万文字以上(長編コンテスト)


「はてなインターネット文学賞」

 2021年7月15日から2021年8月24日まで

 20,000文字以下(短編コンテスト)


「カクヨム甲子園2021」【ロングストーリー部門】

 2021年7月16日から2021年9月12日まで

 6千文字以上2万文字以下(短編コンテスト)


「カクヨム甲子園2021」【ショートストーリー部門】

 2021年7月16日から2021年9月12日まで

 4千文字以下(短編コンテスト)


「第2回角川武蔵野文学賞」

 2021年9月1日から2021年10月31日まで

 800文字以上4000文字以下(短編コンテスト)


「『赤いきつね』『緑のたぬき』幸せしみるショートストーリーコンテスト」

 2021年11月19日から2021年12月20日まで

 800文字以上4000文字以下(短編コンテスト)


「第7回カクヨムWeb小説コンテスト」

 2021年12月1日から2022年1月31日まで

 10万文字以上(長編コンテスト)


「カクヨムWeb小説短編賞2021」

 2021年12月1日から2022年1月31日まで

 1万文字以内(短編コンテスト)


「『戦うイケメン』中編コンテスト」

 2022年2月1日から2021年3月14日まで

 2万文字以上6万文字以下(中編コンテスト)


「料理研究家リュウジ×角川食堂×カクヨム グルメ小説コンテスト」

 2022年2月15日から2022年3月15日まで

 2,000文字以上15,000文字以下(短編コンテスト)


「〈メディアワークス文庫×3つのお題〉コンテスト」

 2022年2月21日から2022年3月28日まで

 10万文字以上16万文字以下(長編コンテスト)


2022年度(2022年4月から)


「『5分で読書』短編小説コンテスト2022」

 2022年5月6日から2022年6月27日まで

 3,000文字以上6,000文字以下(短編コンテスト)


「『夫にナイショ』シリーズ漫画原作コンテスト」

 2022年4月15日から2022年6月30日まで

 6,000文字以上30,000文字以下(短編コンテスト)



 開始時期ではなく受付終了時期で「年度」を決めているので、時系列順に並べる際も、開始時期ではなく終了時期に従っています。


 こうして調べていくと、最初に想定していた「カクヨムで開催されるコンテスト」と「カクヨムからも応募できるコンテスト」の他に、公式自主企画も「コンテスト情報」に含まれていました。当然コンテストの応募要項ページは存在せず、あくまでも「自主企画」としてのページのみなので、それは公式イベントとして除外しています。

 結局のところ、コンテストの応募要項ページがあるものだけを列挙した形ですね。


 カクヨムの検索システムでは「小説の長さ」として、2万文字までが短編、8万文字以上が長編、その中間が中編と定義されているので、短編・中編・長編の区別は、それに従っています。

 また、例えば「5万文字以上」のように中編でも長編でも応募できる場合は中編コンテスト、「1万5千文字以上」のように短編でもそれ以外でも応募できる場合は短編コンテストとして分類しておきました。


 少し余談になりますが、こうして改めて調べていく過程で驚いたことが一つ。高校生限定のコンテストなので、これまで「カクヨム甲子園」の応募要項はきちんと読んでいなかったのですが、あれって【ショートストーリー部門】だけでなく【ロングストーリー部門】も、文字数的には短編に相当するコンテストだったのですね。

 なお、その「カクヨム甲子園」は【ロングストーリー部門】と【ショートストーリー部門】の応募要項が、それぞれ別ページとして用意されていたので、別々のコンテストとしてカウントしています。


 というわけで。

 私がカクヨムを使い始めてからの3年間で開催されたコンテストは、全部で35。

 私のカクヨム1年目に相当する2019年度が11コンテスト、2020年度が12コンテストで2021年度も12コンテストですから、毎年のコンテストの数は、ほとんど同じのようです。まず「最近カクヨムではコンテスト開催が増えている気が」というのは、完全に気のせいだったと判明しました。


 続いて、短編・中編・長編の区別。

 3年間の合計では、短編コンテストが19、中編コンテストが4、長編コンテストが12。今まで「コンテスト」といえば、受賞作をそのまま本に出来るよう、長編コンテストがメインだと思ってきましたが……。

 実はカクヨムでは、長編コンテストよりも短編コンテストの方が多いのですね! これは驚きの発見でした。

 年度別に見てみると、2019年度は短編コンテストが5、中編コンテストが1、長編コンテストが5。2020年度は短編コンテストが6、中編コンテストが2、長編コンテストが4。2021年度は短編コンテストが8、中編コンテストが1、長編コンテストが3。

 中編コンテストは毎年1つか2つ。本当に少しずつではありますが、短編コンテストは5、6、8というように増加傾向、長編コンテストは5、4、3というように減少傾向にある、と言っても構わないかもしれません。

 いや、長編コンテストが減少傾向というのは、さすがに言い過ぎかもしれませんけどね。

 短編コンテストにしたところで、毎年1つか2つの増加ですから、これは増加ではなく誤差の範囲かもしれません。しかし、わずかでも確実に増えつつあるのは事実。少なくとも、私が「短編コンテストが増えてきた気がする」と感じていたのは全く根拠のない「気のせい」ではなく、おそらくこれが理由だったのでしょう。


 結局、先ほどの「実はカクヨムでは、長編コンテストよりも短編コンテストの方が多い」というのも、短編コンテスト増加と長編コンテスト減少の相乗効果のようです。私のカクヨム1年目となる2019年度は、どちらも5コンテストであり、同数だったのですから。ある意味、私はちょうど面白い時期にカクヨムを使い始めた、と言えるかもしれません。


 この「実はカクヨムでは、長編コンテストよりも短編コンテストの方が多い」について、改めて考えてみると。

 そもそも今回の調べ方では、カクヨム開催のコンテストだけカウントしており、「一般公募だけどカクヨムからも応募できる」というものは省いています。だから「長編コンテストが少ない」というデータになってしまったのでしょう。

 しかし「一般公募だけど」というコンテストは、わざわざカクヨムを介さずとも、KADOKAWA系列のレーベル主催のコンテストとして、それなりにたくさんの応募があるわけですよね。KADOKAWAグループとしては、書籍化するような長編は一般公募で募集すればよいわけですし、わざわざカクヨムで募集する必要もない。そう考えれば「実はカクヨムでは、長編コンテストよりも短編コンテストの方が多い」というのも、理にかなっている気がします。

 一般公募の他にも、書籍化作品の候補は、WEB経由の「持ち込み」で募集されているそうです。私は「絶対に書籍化を目指す!」というほど真剣なタイプではないので詳しくありませんが、そんな私が知っている範囲内でも、KADOKAWA系列のレーベルでは「カドカワBOOKS」と「電撃の新文芸」が「持ち込み」を受け付けています。


 あくまでも個人の勝手な想像に過ぎませんが、そうした別経由での書籍化の道も色々と用意してあるKADOKAWAです。ならば、小説投稿サイトのカクヨムでは、書籍化のためだけのコンテストを増やすのでなく、小説投稿サイトならではのコンテストを増やしていく、というのも一つの手なのでしょう。その一環として、応募しやすい短編コンテストが増えていくのであれば、これからのカクヨムが、ますます楽しみです。

   

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