本日8月31日の「カクヨムからのお知らせ」に関連して ――大袈裟に言うのならば抵抗運動――

   

 本日8月31日、以下のようなお知らせがありました。


『恋愛なのか、ラブコメなのか、それが問題だ!』

https://kakuyomu.jp/info/entry/2021/08/31/125017


 本文を読んでいくと、


>ご存じのように、カクヨムのジャンルカテゴリーには、「恋愛」と「ラブコメ」がありますが、


 というように、ジャンルカテゴリーの話から始まっています。ジャンルカテゴリーという言い方ですが、私はこれを投稿ジャンルの話だと受け取りました。

 その後、


>具体的には、カクヨムコンでも


 というように、カクヨムコンの話に繋がっていきます。

 ですから、私が「カクヨムからのお知らせ」を読んだ印象としては、投稿ジャンルの話についての告知だと思ったのですが……。

 一方、お知らせ下部でも掲載されているTwitterのツイートの方では『目下、カクヨムコン7の準備中』という言葉から始まっています。

 どうやら話のメインはカクヨムコンの方であり、投稿ジャンルの話ではないようですね。

 どちらにせよ同じじゃないか。そう思う方々もおられるでしょうが、私としては大きく違います。

 投稿ジャンルに関しての話であれば、前々から胸に思うところがありましたし、また今回のお知らせを読んで「そういうことだったのか」と納得すると同時に、少し失望する結果にもなったからです。

 ですから、以下、投稿ジャンルの「恋愛」「ラブコメ」について少し語っていきたいと思います。



 まずは、私が前々から感じていた小さな不満について。

 カクヨムを使い始めてからどれくらいの時期だったか忘れましたが、改めて投稿ジャンルの説明を見て、愕然としたことがあります。

 以下のページです。


https://kakuyomu.jp/help/entry/genre


 だいたいは素直に理解できるものでしたが、私が引っかかったのは「ラブコメ」と「恋愛」の区別。それぞれ、次のように書かれていました。


>ラブコメ 主として男性が主人公の恋愛を中心テーマとして描かれた作品が対象のジャンルです。


>恋愛 主として女性が主人公、または同性間の恋愛を中心テーマとして描かれた作品が対象のジャンルです。


 最後の『恋愛を中心テーマとして描かれた作品が対象のジャンルです』という部分は共通です。そこは良いのですが、私が納得できなかったのは冒頭の『主として男性が主人公』『主として女性が主人公』。

 私としては「ラブコメ」の「コメ」はコメディーの意味だと思っていましたし、だから笑える要素の有無が「ラブコメ」「恋愛」の区別だと感じていました。

 ところがカクヨムの定義によれば、笑えようが笑えまいが、男性が主人公ならば「ラブコメ」、女性が主人公ならば「恋愛」!

 もちろん『主として』なので絶対的なものではないのでしょうが……

 この「主人公の性別でジャンル分けする」という点に、どうしても納得できなかったのです。

 だって、私が書く恋愛短編は、ほとんどが男性主人公。それもコメディー要素なんて皆無の、切ない系が多いはず。それを「ラブコメ」として投稿しなければならないなんて……。私には抵抗がありました。

 そう、抵抗です。大袈裟な言い方をするのであれば、レジスタンス活動です。

 カクヨムのジャンル分けの定義に気づかないわけではなく、それを知った上で敢えて逆らって、男性主人公の恋愛小説を「恋愛」ジャンルで投稿してきました。

 実際、他の方々の作品を拝見すると、男性主人公でもシリアスな恋愛ものならば「恋愛」として投稿されている作品も多いようです。やはり皆様も感覚的に「ラブコメはコメディー要素のある恋愛小説」と思っておられるのでしょうか。

 カクヨムの定義を知らずに投稿しているのかもしれませんし、私のように知った上で敢えて「恋愛」ジャンルで投稿しているのかもしれません。後者であれば、密かな抵抗運動を続ける同志ですね。

 ……今思えば、そんな抵抗運動をするよりも、カクヨムに要望を出した方が良かったのでしょうけど。



 続いて、今回のお知らせを読んで納得と失望を味わった件。

 お知らせには、以下のように書かれていました。


>もちろん、気の向くまま、ご自由に選んだり覗いていただければOK!なのですが、社内でランキングをチェックしている編集部が、微妙に違ったりしているのもこれまた事実。

>具体的には、カクヨムコンでも「恋愛部門」は、角川ビーンズ文庫や富士見L文庫といった一般的には女子向けと言われるレーベルが、「ラブコメ部門」はスニーカー文庫やファンタジア文庫、ファミ通文庫等の男子向けレーベルが選考に参加しています。


 カクヨムコンの話題だけならばレーベルが出てくるのは当然ですが、元々ふだんの投稿ジャンルの区分の話だと思って読んでいると、『社内でランキングをチェックしている編集部が』のニュアンスも変わってきます。

 KADOKAWA系列の出版社がチェックしやすいように、カクヨムでは投稿ジャンルを定義している、という意味に思えてくるからです。


 もちろんカクヨムがKADOKAWAという出版社と繋がっていることは私も知っています。でも今まで、その点に大きなメリットもデメリットも感じていませんでした。

 私も一応「自分のカクヨム投稿作品が出版社の目に留まって商業出版されたらいいのになあ」という夢を見ることはありますし、そうした夢を見られるというのが、出版社運営の小説投稿サイトのメリットの一つなのでしょう。

 ただし私の作品の出来具合から考えても、また「昨今の売れ筋を狙わず、むしろ一昔前の自分が好きだったラノベに寄せて書いている」という作風からしても、私の作品が拾い上げられる可能性は極めて低く、しょせん夢に過ぎないと理解しています(「ノベリズム」から声をかけていただいたのは、新興の小説投稿サイト運営会社であり、出版社ではないからこそ。あれは例外中の例外なのだ、と認識しています)。

 ですから、実質的にメリットはないに等しく、逆にデメリットを感じることもなかったのですが……。


 今回の「出版社がチェックしやすいように投稿ジャンルを定義している」という話。なるほど、出版社が運営に関わる小説投稿サイトなのですから、出版社の都合が優先されるのは、当然の話です。

 角川ビーンズ文庫や富士見L文庫といった女性向けレーベルが「恋愛」をチェックしやすいように「恋愛」ジャンルにはそうしたレーベルに合う作品を投稿してもらい、スニーカー文庫やファンタジア文庫、ファミ通文庫のような男性向けレーベルがチェックしやすいように「ラブコメ」ジャンルにはそれっぽい作品を投稿してもらう。

 レーベル側の都合を考えるのであれば、納得できる話です。

 なぜコメディー要素皆無の男性主人公の恋愛小説は適切な投稿ジャンルが設定されていないのか、という点も含めて納得できます。

 出版社のレーベル側で、そんな作品は必要ないからですよ!


 ……というのは、私の穿った見方でしょうか?

 男性向けレーベルは男性読者のために男性主人公の小説がほしい。特に恋愛ものであれば、男性読者は真面目な恋愛よりコメディーを好むからジャンル名は「ラブコメ」。

 女性向けレーベルは女性読者のために女性主人公の小説がほしい。特に恋愛ものであれば、女性読者にはコメディー要素はいらないからジャンル名は「恋愛」。

 そう言われている気がしました。

 コメディー要素皆無の男性主人公の恋愛小説なんて、読者需要がなくて売れないからいりません、という宣言です。

 まあ出版社が「そんな作品は売れないから」とおっしゃるのは結構です。でも商業化できないような作品だとしても、個人の趣味として好きに書いて投稿できるのが小説投稿サイトの楽しみ方だと思っていたのですが……。

 今までの「感覚的にしっくりくるような、適切な投稿ジャンルがない!」という理由。その理由が、今回納得できたようにレーベル側の都合、つまり「売れない作品はチェックする必要ないから、それ用に投稿ジャンルを設定しておく意味がない」という話であったならば。

 ああ、結局のところカクヨムは、KADOKAWAが商業化する作品を探すためのサイトであって、商業化には向かない作品を趣味として読み書きするようなサイトではなかったのか。

 そんな失望を感じてしまったのでした。


 もちろん「KADOKAWAのため」「個人の趣味のため」というのは二極分化できる話ではないので、これは極端な言い方に過ぎません。

 それに、私たちユーザーは無料で遊ばせてもらっているのです。カクヨムは個人が趣味で開設しておられるサイトではなく、企業運営のサイト。運営会社に利益があるからこそ存続しているのであり、それを思えば「KADOKAWAのため」が優先されるのも当たり前です。

 それはわかっているのですが、それでも今回「出版社にとって意味のない作品は、本来カクヨムには場違いなのですよ」と言われたような気分になって、初めて「出版社経営の小説投稿サイトであること」のデメリットを感じてしまったのでした。



 ……と、これで終わってしまったら暗い感じなので、少し前向きに。

 今回のお知らせやツイートにあった、そもそもの問題。「恋愛」と「ラブコメ」の区分についての提案です。

 男性主人公のシリアス恋愛がラブコメ扱いになる違和感は、やはり主人公の性別による区分から生まれるのでしょう。

 私は「男性が主人公なのはラブコメで、女性が主人公なのは真面目な恋愛だ」と言われると抵抗ありますが、もしもこれが「男性が好んで読むのはラブコメで、女性が好んで読むのは真面目な恋愛だ」と言われたら、まだ納得できるような気がします。

 例えば、私が「行き場がない!」と感じていた、男性主人公の真面目な恋愛もの。男性主人公なので男性が読んでも楽しめますが、真面目に恋愛感情がどうのこうの、という内容は、むしろ女性向けなのかもしれません。

 また逆に、たとえ自分とは異なる性別であっても、女性を主人公としたラブコメは、お笑い要素が強ければ強いほど、男性でも楽しめる作品になるはず。

 レーベル側としては「売れる作品」の要因として、読者と主人公の性別は一致させたいのかもしれません。それでも、せめて主人公の性別ではなく読者の性別で「恋愛」「ラブコメ」を分けていただけたら、今よりは遥かに違和感が少なくなると思うのでした。


 この「主人公ではなく読者の性別で」という分け方は、こうしてエッセイに記すだけでなく、Twitterでもカクヨムに届く形で――公式ツイートへのレスという形で――ツイートしています。しかも同様のツイートは私だけではなく、複数ありました。

 Twitterを見る限り、今回のお知らせも、カクヨムとしては「次のカクヨムコンのために」という意味合いが強いようですが……。

 カクヨムコンだけでなく、ぜひ日頃のジャンル分けについても改善していただきたいものです。

   

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