二年目・後半

どんでん返しってなんだろう? ――カクヨム誕生祭2020から「5分で読書」短編小説コンテストを経てカクヨムコンへ――

   

 昨日11月25日の「カクヨムからのお知らせ」で告知されていたように、「5分で読書」短編小説コンテストの応募期間が終わりました。

 長編を書きたいと思いつつも、実際には読むのも書くのも短編が多い私ですから、今回のコンテストもたくさん応募しました。

 最初に応募要項を見た段階では、「学校の朝読で読みたい短編小説」ということなので、私の作風とは違うから無理っぽいと思ったのですけどね。でも前回「こんな長編の構想があるけれど書き始めていない」と記したように、児童文学への憧れもあったので、その意味ではチャレンジしたい気持ちもあって……。

 結局、3部門合計で15作品応募しました。ぴったり合わせたわけではないですが、各部門5作品ずつの応募です。

 といっても、15作品のうち10作品は新作ではなく、既存作をそのまま応募したり、このコンテスト用に少し書き直したりしたもの。新たに応募用に書き下ろした短編は、5作品だけでした。

 応募受付期間は10月2日から11月24日。2ヶ月弱の間に5作品。いや告知は9月18日でしたから、2ヶ月強で5作品ですかね。多いのでしょうか、少ないのでしょうか?

 短編ならば、もっとサクサク書けるはず。そう考えると少ない気もしますが、前回説明したように「少しカクヨムでの執筆時間は減りそう」という状況なので、まあ妥当な執筆数かもしれません。

 その5作品について、宣伝も兼ねて、少し具体的に……。


『膝が痛い』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054922799268

「通学路、振り返るとそこにいる(ホラー)」部門応募用です。10月1日に書いて、翌日投稿しました。

 やはり最初はホラーですね。本来ならばホラーに必須の「怖さ」を書く表現力は、自分には足りない。そう思っているのに、題材的に思いつきやすいので、ついついホラー短編を書いてしまう私です。今回も「とにかく何か書いて応募しよう!」と思ったら、ホラー部門からになりました。


『いつもテストは俺が勝つ』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054934919597

「最後はかならず私が勝つ(どんでん返し)」応募用。10月24日執筆で、翌日投稿。

 2作目はどんでん返し部門でした。せっかく3部門ある短編コンテストなので、3部門の全てに応募してみたい、でも今まで私が書いてきた作品は「最後はかならず私が勝つ」的ではないどんでん返しばかり。最終的には、それでもいくつか「一応これもそれっぽい?」と選び出して応募してしまいましたが、10月24日の段階では「どんでん返し部門に応募したければ、新作を書くしかない!」と考えていました。


『ハッピー・ハロウィン!』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935004029

「想いが通じる5分前(恋愛)」応募用。10月26日に書き始めたものの、その日は最初だけで、その後は他の執筆を優先させたため、続きを書いたのは10月30日。投稿したのは10月31日でした。

 3部門のうち2部門まで新作を用意したので、単純に「せっかくだから3部門全て新作応募しよう」と思ったのが執筆理由の一つ。もう一つは「想いが通じる5分前」の『5分』要素ですね。私は「だいたいそれくらいの時間で『想いが通じる』」と解釈していたのですが、きっちり5分でなければいけないと思っておられる方々もいるようで、応募中の既存作に「5分要素がありません」という指摘をいただきました。だからこの作品では作中に『5分』という言葉を練り込んだのですが、色々と書いていたら6,000文字に収めるのが難しくて、肝心の部分が駆け足になってしまい……。「これ本当に恋愛小説?」という感じになりました。


『おんがえし』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935552638

「通学路、振り返るとそこにいる(ホラー)」応募用。11月5日執筆で、翌日投稿。

 4作目は、ホラーふたつめ。前々から頭の中にあった没ネタというか、寝かせていたネタというか、そこに通学路要素を加えたら形になった、という短編です。

 上の方で「児童文学への憧れ」と書きましたが、この4作目からは「学校の朝読で読みたい短編小説」を強く意識して、文体を変えてみました。児童文学を書いておられる方々からは「そんな単純な話じゃない!」と怒られてしまうかもしれませんが、子供向けの教訓みたいなものが含まれていて「です・ます」調で書かれているのが、児童文学に対する私のイメージ。だから、そんな感じで書いてみました。


『花泥棒は密かに盗む』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054952038799

「最後はかならず私が勝つ(どんでん返し)」応募用。11月16日執筆で、翌日投稿。

 最後は、どんでん返しふたつめ。これも「児童文学への憧れ」で「学校の朝読で読みたい短編小説」を意識した文体ですが、子供向けの教訓みたいなものは入れられませんでした。言い訳するならば「完全な娯楽作品です」ということでしょうか。

 でも、ある意味、これが私にとっての児童文学なのかもしれません。小学校低学年の頃に読んだジュブナイル小説のイメージなのですよ、この作品。その分、思い入れたっぷりで、書いていたらドンドン長くなって……。ミステリ作品なのに終盤が駆け足。でも、おかげで解決編がクドくないかも……?

 とにかく、最初に書き上げたものは7,000文字オーバーでした。執筆量が減っている最近の私にしては、一日で一気に7,000文字は、かなりのペースです。普通は翌日まで寝かせてから推敲に取り掛かるのですが、「思い入れたっぷり」故か、そのまま推敲を始めちゃいました。「とりあえず6,000文字以下に収めないと、寝るに寝られない」という気持ちだったのかもしれません。

 文字数削減のために一度は主要キャラの人名を5文字から4文字に変更したり、他を削れば大丈夫だから、やっぱり戻したり。読み直すうちに追加記述も必要となったので、また色々と削ったり……。最終的に、なんとか6,000文字以下になりました。


 ……と、かなり楽しませていただいた「5分で読書」短編小説コンテストです。

 実は上記5作品以外にもう一つ、どんでん返し短編の構想を練ったのですが、執筆が間に合わなくて諦めました。いや短編一つ書くだけなら一日で終わるはずですけどね。最後の「7,000文字オーバー」を書いた経験から「書けるけど、その代わりその日は他が書けなくなるぞ。翌日の投稿日まで、後を引くぞ」と思い知らされたので、ちょっと腰が引けました。

 つまり、どんでん返しだけで3つ考えたことになります。今まで私が書いてきた作品は「最後はかならず私が勝つ」的ではないどんでん返しばかり、と先ほど述べたように、今回のどんでん返しテーマ、私には向いていないはずだったのですけど。

 それだけどんでん返しについて考えてしまったのは、執筆だけでなく他の方々の応募作品を読むうちに、私なりの「どんでん返しとは」が固まってきたからだと思います。


 というわけで、長い前置きでしたが、ようやく今回の本題。

「どんでん返しってなんだろう?」


 そもそも、最近カクヨムでは「どんでん返し」がブームではないですか? 某漫画の「最近私たちの周りでは箱に乗るのがブーム!」みたいなレベルで。

 いや「最近」というより、厳密には「今年」でしょうか。

 まずは、2月29日からのカクヨム誕生祭2020。最終日のお題が「どんでん返し」でした。

 続いて、今回の「5分で読書」短編小説コンテスト。3部門のうち他は「ホラー」「恋愛」なので、投稿ジャンルでもおかしくない分類の中、ひとつだけ「どんでん返し」となっているのは、異様に目立ちます。

 さらに、もうすぐ始まるカクヨムコン。今年から新設される部門「どんでん返し」。

 こうなると「最近私たちカクヨムユーザーの間では、どんでん返しでひっくり返されるのがブーム!」と言っても構わないのではないでしょうか。


 さて、この「どんでん返し」。カクヨムコンに関係して、公式的にはどういうどんでん返しが求められているのか、それなりに告知されているようですが、カクヨムコン向け新作長編の執筆予定がない私は、公式見解にあまり興味がなく……。

 むしろ私は私なりに、自分にとっての「どんでん返し」を考えてみました。

 まず大前提として、私はどんでん返しが大好きなはずです。

 読書の原点は、小学校低学年の頃に読んだ子供向けのルパンや二十面相シリーズだと思いますし、その後、十代の頃に読み漁ったのは翻訳もの海外ミステリ。どちらも推理小説です。

 執筆の原点も、プロフィールに書いてある『約30年前に一度だけ、原稿用紙に書いた短編ミステリを、何かの賞(もう名前も覚えていない)へ応募したこともありました』をスタートと考えても『個人サイト(プロバイダのサービス終了に伴い既に消滅)で推理小説のようなものを披露し始めたのが、2001年4月』をスタートと考えても、どちらも推理小説が出発点です。

 推理小説といえば意外な結末。まさに「どんでん返し」が醍醐味でしょう。

 だからこそ私はWEBで小説投稿する際もオチを重視するスタイルになっていますし、特にカクヨムに投稿する短編は、短いが故に「オチを重視」が多いと思います。そんな私にとって、カクヨム誕生祭2020最終日のお題「どんでん返し」は、まさにうってつけのはずだったのですが……。

「あれ? 難しいぞ?」

 というのが、素直な感想でした。

 あらかじめ「どんでん返し」とわかっていたらネタバレになってしまうではないか、という問題です。

 それでも、カクヨム誕生祭2020では「毎回複数作品投稿」というルールを自分に課していたので、一応「どんでん返し」も2作品投稿したのですが……。

 自分で書いた作品に対して、なんだか納得いかない感じがありました。


 そして、今回の「5分で読書」短編小説コンテスト。

 自分で書くだけでなく、他の方々の応募作品を読むうちに、一つ気づいたことがあります。

 失礼な言い方になりますが、一応「どんでん返し」ではあるが私には面白くない、という作品も多かったのですよ。もちろん「どんでん返し」だから意外な結末は用意されているのですが、でも、それだけでは面白くない。読後感として、心地よくない。むしろシラけてしまう。なんだか、自分がカクヨム誕生祭2020で書いた「どんでん返し」みたいだ。なぜだろう……?

「あっ!」

 突然、閃きました。

 私にとっての「どんでん返し」は、投稿ジャンルはどうあれ、パターンとしてはミステリ作品と同じです。ならば必須なのは、結末の意外性だけではありません。その結末を示された時に「なるほど!」と思わせる感覚です。

 推理小説でいうところの手がかり、もっと広くいうならば伏線ですね。布石の方も含めた、広義の「伏線」です。推理小説で手がかりもなしに「犯人はお前だ!」をやられても興醒めするのと同じで、伏線なしの「どんでん返し」は、私には面白くないのですよ。

 私に言わせれば。

 伏線のない「どんでん返し」は「どんでん返し」ではありません。「ちゃぶ台返し」です!


 ……あれ? 上手い言い方をしたつもりが、上手くない?

 ほら、どんでん返しの「どんでん」は、確か元々舞台用語ですよね? 舞台にそういう仕掛けがある場合が多いのでしょう? 一方ちゃぶ台返しは、普通に食事していた「ちゃぶ台」をひっくり返すだけであり、それまでを台無しにする行為なので……。

 というのは、まるで滑ったギャグを解説するみたいで恥ずかしいですね。

 まあ、ともかく。

 具体的な例を出してみると、今まで自分が書いてきた短編の中で、一番「これが私にとってのどんでん返し」と思えるのは、おそらくこの作品です。


『ゾンビ vs 生存者 ――おそらく俺が最後の一人――』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889805624


 残念ながら「最後はかならず私が勝つ」ではないし、文字数的にも短い作品なので、今回のコンテストには応募できない作品でしたけれど。

 少なくとも今回応募した2作品は、どちらも伏線を作中に紛れ込ませたつもりです。

 特に『花泥棒は密かに盗む』の方ですね。おそらく大人の読者が読んだら最初からバレバレな部分はあるでしょうし、「いや子供を舐めるなよ?」と言われそうなくらい、朝読でも最初の数行で結末を予想されるかもしれません。それでも「これも一つの自信作!」と思ってしまうのは、一番の最新作だから現時点では一番思い入れも強い、ということなのでしょうか。

 ちなみに「自信作!」の割には★8なので、皆様からいただいた★の数は多くありません。それでも投稿数日後の11月22日には「ミステリーの日間ランキング」では1位になっていました。そもそもその日の「ミステリーの日間ランキング」は29作品しかありませんでしたし、いかにカクヨムではミステリージャンルが読まれていないか、という証に過ぎないのですが……。


 とりあえず。

 どんでん返しを書くのであれば、ただ意外な結末にするだけでなく、きっちり伏線を記しておくこと。

 これは『あらかじめ「どんでん返し」とわかっていたらネタバレになってしまうではないか、という問題』に対する一つの答えになる、と思っています。

 再び「どんでん返し」を推理小説と重ねてしまいますが……。

 よくできた推理小説は二度読んでこそ面白い、と言われます。真相をわかった後ならば「これも伏線だったのか! そういう意味だったのか!」という読み方が出来るからです。ならば「どんでん返し」でも「どんでん返しということは、おそらく結末は……」と読者に予想されてしまっても「おお、だから、こんな記述があるのだな。ここが伏線なのだな」と途中で読者がニヤニヤできて、楽しめるのではないでしょうか。


 現在はカクヨムコンに向けて、どんでん返しの新作長編を構想・執筆しておられる方々も多い時期かと想像します。

 皆様は私の「どんでん返し」観について、どう思いますか? それぞれの「どんでん返し」観をお聞かせ願えたら幸いです。

   

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