第3話

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 合計で九枚のくじを手に入れた星とルナ。

 星はくじを手に持ち、再びテントに戻ってきた。


「……これ」

「お、さっきの嬢ちゃんやないか! おー! 早速、券持ってきたか! なんや、えらい早いなぁ!」


 テントのおじさんは、星から券を受け取るとペロっと指先を舐め枚数を数え始めた。


「えーと……。一枚、二枚、三枚、四枚……あーと…ん、九枚やな! ほな、三回それを回してくれるか?」

「………ん」


 星は頷くと、ゆっくりと回した。

 回して1周するとコロッと玉が1つ出てくる。星は内心ワクワクした気持ちで白い玉をおじさんに渡した。

 しかし、おじさんは残念そうな顔をしていた。


「あちゃー、白やな〜」

「……??」


 星は白=外れということを知らなかったので首を傾げる。


「白い玉は、ポケットティッシュをプレゼント! 残念やな〜。でも、後、二回あるから頑張れ!」

「にゃー!」

「……ん。……頑張る」


 受け取ったポケットティッシュを菓子折りの紙袋に入れ再び挑戦し、ゆっくりと回す。


 ――コロコロ。


 今度は一気に2回連続で回してみた。

 色は――見事に、全てが真っ白だった。


「あらら〜。はい、ティッシュ」

「……ティッシュ……いっぱい」

「あははは、まぁ、そんな直ぐに当たらん当たらん!こりゃ運やからな!」

「……運……なかった」


 3回とも白で、ポケットティッシュで少々しょんぼりする星とルナ。おじさんは、そんな1人と1匹を見かねて溜め息を吐き頭を無蔵座に掻いた。


「あ~……なんや、ほら。残念やったとしか言えんけど――」

「???」

「にゃ?」

「ほれ、おじさんが買い物したくじ券」

「……こんなに、いいの?」


 おじさんは星に自分のくじ券を渡し、星の手には、また九枚のくじ券が増えた。


「ええよ、ええよ。どうせ、この景品も残ったら次回に持ち越しやからなぁ。それに年々回す人も減ってきてるし。あ!! でも、この事は、二人の秘密やで?? ええな? ほんまはこれはやったらあかんことやからな」

「わかった……約束」

「よし!! そうとなれば、再チャレンジや!!」


 星は頷くと、貰った券をおじさんに渡した。


「よっしゃ! ほな、後、三回! 頑張れや嬢ちゃん!」

「………ん」


 またゆっくりと回す。


 ――コロコロ。


 出てきた色は白と赤だった。


「お、今度は赤も出たやん!」

「……?」

「えーと、白のティッシュと赤は〜……ほれ、図書券二千円分」

「……っ!!」

「お、なんやなんや! 嬉しそうやないか〜。お嬢ちゃんは本好きか?」


 星はコクリと頷いた。


「よかったな〜。後一回残ってるで。最後の一回や、頑張れ!」

「……ん」


 再び回そうとした瞬間、隣にいたルナが「にゃー」と鳴く。星は手を止めルナを見下ろした。


「……え?……やるの?」

「にゃー!」

「ん? なんや、なんや??」


 星は足元にいたルナをひょいっと抱えはじめる。


「ほぉ〜。この猫も両方目の色違うんかー。変わっとるなぁ〜」

「……はい」

「にゃー!」

「って、猫が回するんか?! 嬢ちゃん?!」

「……うん」

「にゃー!」


 ルナは「まかせて!」と、言った感じで強く鳴くと、器用に前足で回し始めた。

 その奇妙な猫の行動に目が点になるおじさん。


「……す、すげーな。この猫……」


 そして、コロッと玉が出てきた。ルナと星とおじさんは、出てきた玉を同時に見る。


 ――カランカラン!カランカラン!


「大当たり〜!!」


 おじさんがハンドベルを鳴らして大きな声で叫び始めた。玉の色は、銀だった。


「いやー、この猫は運持っとるなぁ〜! 銀色の玉は二等賞!! ほれ、持って行き」


 そう言うと、おじさんは賞品を紙袋に入れると星に手渡した。


「……ありがとう」


 当たって嬉しかったのか、ハニカミながらおじさんにお礼を言ってテントを去ったのだった。


「にゃーにゃー?」


 どうやら、ルナは中身が気になるらしい。

 星とルナは、テントの近くの階段を降りバス停のベンチにちょこんと腰を下ろす。ルナも星に続きぴょんと飛び、隣に座る。

 星は紙袋から景品を取り出し、箱の文字を読んだ。


「にゃ??」

「……るん、ば?」


 一人と一匹は同時に首を傾げる。


「……るんばって……何だろ?」

「にゃー?」

「……えっと……掃除機……って、書いてある」

「にゃー」

「うん……ビックリだね。今は……勝手に掃除をしてくれるんだね」

「にゃー♪」

「うん……楽しかった」

「にゃー?」

「これ……?……菖蒲さんに……あげる」

「にゃー」


 景品の中身を見て満足しお互いの話が終わるとルナは星の肩へとよじのぼった。

 そして、ベンチから立ち上がり自分達の帰りを待ってくれている場所へと向かったのだった。


 この時、星とルナは知らなかった。


 バスを待っている間、大人しそうな女子高校生が目を惹くような容姿をした一人と一匹の様子を何げに観察し、内心身悶えしている事に。


(な、何あれ!? も、萌ぇーっ(p〃д〃q)!!)

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