これから_5

「やあ、キョウ君。そう緊張しないでくれたまえ」

「は、はい」


 そう言われても無理な話だ。

何しろ、この男性はジャパリフォースの総司令なのだ。


「まずは…そうだな、今回の君の働きの話をしよう。サーバルのことはトワ園長からよく聞いているよ。君がついていなかったら、サーバルは1人で山に向かい、セルリアンにやられてしまっていただろうな。君はサーバルを守ったんだ。よくやった」


 園長も頷いてくれている。


「しかし、そのためとは言え、自分が何をしたかはよくわかっているな?」

「はい」

「命令に背いて山へ向かったことは、作戦失敗の原因となる可能性もあった行為だ。厳しい罰則を受けなければならない。まあ、君はそれを承知の上で、サーバルとセーバルのために動いたのだろう。違うかね?」

「いえ…」

「ならば、私個人としては、不問にしたいのだがね。その姿、非常に悪い言い方をすれば、ジャパリパークに軟禁されることになったというもあるしな。だが、残念ながらそういう訳にもいかないのだ。なので、罰として君には特別な任務を与えることにする」

「任務ですか?」

「ああ、とびきりキツい任務だ。長い時間がかかるだろう。だが、それをやり遂げてもらうぞ。いいかね?」

「…はい」

「では君に与える任務は、セーバルの救出だ。ジャパリパークと協力しての、な。それと、園長や博士達の指示に従うこと。園長、彼を頼みます」

「ええ、もちろんです」


 そんなことでいいのか…!?

困惑するオレに、園長が追い打ちをかける。


「では…キョウさんには、ジャパリパークに新設する、保安維持チームのトップに立ってもらいましょう」

「ええっ!?いきなりトップですか!?ジャパリフォースのただの一隊員ですよ!?」

「ふふふ、キョウさん。ここはジャパリパークですよ?何より、トワ園長だって元はただの一般人です。一般人から一気に園長です。それに比べたらなんてことないじゃないですか」

「た、確かに…?」


 ミライさんの説得に、園長は苦笑いをした。


「しっかりこちらでアシストするので、心配しないでください。やってもらうことも、フレンズのみんなと協力してセルリアンを退治してもらうことや、現場に出る調査員や研究員の護衛などですから」

「わ、わかりました」

「私からも、いいですか?」


 カコ博士が前に出る。


「キョウさんには研究の協力もしてもらいます。ヒトとフレンズの融合なんてイレギュラーすぎて、協力してもらわないと研究が全く進まないんです!正式にパークの一員になったからには、隅々まで調べさせてもらいます」

「は、はい」

「カコ博士、言い方が…」

「え?何か変だった?」


 カコ博士はキョトンとしている。


「まあ、そういうことだ。頑張ってくれたまえ。おっと、最後に1つ。コヨミちゃんと話す…というか、意思疎通はできるのかね?」

「いえ、今はまだ…しっぽと耳は勝手に動くのですが」

「そうか。もし今後、コヨミちゃんと話せることがあったら伝えておいてくれないか?『あの時は、君を助けられなくてすまなかった』と」

「それって…」

「では、私はこれで失礼するよ。せっかく来たのだ、楽しまないとな。ああ、私のことは君のチームの隊員しか知らないからな、他の隊員には秘密だぞ?外で会っても、ただの動物好きのおじさんとして接してくれたまえ」


 そう言うと、総司令は軽い足取りで応接室を去っていった。

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