検査_3
白衣を着た長い髪の女性。作戦前のブリーフィングでセルリアンの説明をした人だ。
「ようこそ、私は―」
「カコはかせー!」
カコ博士が名乗る前にセーバルが飛びついた。
「わっ!?セーバル!?ちょ、ちょっと待って…」
「えへへー」
カコ博士はなんとかセーバルを受け止め、優しく頭をなでた。
「今から説明するから、大人しく聞いてね?」
「はーい」
「…えーと、ごめんなさい。私はカコです。このラボ、『ジャパリパーク動物研究所』の副所長、です。今日の検査は私が担当させていただきます。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
随分若く見えるが、副所長か…少し緊張する。
「では、全員揃っているようなので、早速始めましょう。まずは採血からです」
ブラックジャガーのしっぽがビクッと跳ねる。
「キョウ、採血って…」
「まあ、注射だな」
「うう…」
「ブラックジャガー、ごめんね、あなたたちが安全に過ごせるように、この検査は必要なことなのよ。すぐに終わらせるから、少しだけ我慢してね?」
「…わかった。い、一撃で決めてくれ」
ブラックジャガーが恐る恐る椅子に座り、机に右腕を乗せる。
カコ博士がその腕に駆血帯を巻き、消毒して注射器を用意した。
「力を抜いて。怖かったら目を瞑ってもいいから」
「わ、わかった」
ブラックジャガーが目をギュッと瞑ると、カコ博士は素早く、丁寧に注射器を刺し、採血を終えて絆創膏を貼った。
「はい、おしまい。よく頑張ったね」
カコ博士がブラックジャガーの頭をなでる。
「え、もう終わったのか?」
ブラックジャガーはきょとんとした顔をしていた。
「ええ。今絆創膏を貼ったところを5分くらい押さえておいてね」
「わかった!」
採血を終えたブラックジャガーは安心した様子で戻ってきた。
「次はホワイトタイガー、いらっしゃい」
「うむ」
ホワイトタイガー、バリー、セーバルとスムーズに採血は進み、オレの番が来た。
「ここに腕を出してください」
駆血帯を巻かれ、カコ博士が腕を消毒する。
注射は苦手ではないが、やはり緊張する。
「はい、チクッとしますよ」
ほとんど痛みはなく、採血が終わった。
確かにセーバルが言う通り、カコ博士は注射が上手い。
「これで採血終了です。キョウさんも5分くらい注射したところを押さえていてください」
「はい」
カコ博士はそれぞれの血液が入ったボトルをまとめたケースを、傍に控えていたスタッフに渡す。
「これ、検査してデータをまとめておいてね」
「わかりました」
ケースを受け取ったスタッフが退室していく。
「セーバル達は、あれから何か体調に変わったことはない?」
「わたしはないよ!」
「私もないな。2人はどうだ?」
ブラックジャガーとホワイトタイガーも首を振る。
「そう、よかった。じゃあ、セーバル達はもう帰っていいよ。あ、今日のお礼をいくつか用意してあるから、忘れずに持って行ってね。さあ、この子達を案内してあげて」
もう1人いたスタッフがセーバル達を連れて行こうとする。
「カコ博士、今日の『ご褒美』は?」
セーバルが小さな声で聞く。
「ごめんね、今日はとっても忙しいから、別の日でもいい?」
「うー、わかった。約束だからね!」
「うん、約束」
スタッフについていくフレンズ達をカコ博士は小さく手を振って見送った。
そして、こちらに向き直る。
「キョウさん、ごめんなさい。あなたにはまだいくつか検査が残っているんです…」
「はい、大丈夫ですよ」
元からそうすんなり終わるとは思っていなかった。
時間はたっぷりあるのだ。サーバル達と遊ぶ時間が惜しくない訳ではないが、今日1日は検査で潰れると見ていたので問題ない。
「では、次の検査は別の部屋で行いますので、移動しましょう」
「了解です」
少しわざとらしく敬礼し、カコ博士についていく。
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