検査前日_2
「おっと、ここで必殺技が発動!決まったァァァッ!!」
「くっ、強い…」
「これで8連勝…次はだあれ?」
2人がプレイしているのは『バーチャルバトラー』という、有名な対戦格闘ゲームだ。かなり古いゲームだが、完成度が非常に高く、今でも人気がある。
「さあ、次の挑戦者は誰だ!?キタキツネちゃんに勝てるヤツは誰もいないのか!?」
ああ、このフレンズがジャングルエリアでミライさんが言っていたキタキツネか。本当にゲームが好きなんだな、などと考えていると、実況をしている隊員がこちらを見た。
「やあ、カワイイお耳の君も一戦どうだい?」
「あ、セーバルだ。対戦しようよ」
キタキツネも手招きし、セーバルを誘う。
「じゃあ、やろうかな」
「頑張れよ、セーバル」
「うん!」
セーバルが筐体の椅子に座ると、ギャラリーはさらに盛り上がる。
「次の挑戦者は、フレンズのセーバルちゃんだぁぁぁ!!セーバルちゃんはキタキツネちゃんの連勝を止められるのか!?レディー、ファイッ!!」
先ほどの隊員との対戦でも見ていたが、キタキツネの動きは細かいステップとダッシュなどを織り交ぜた、見ただけでわかる上級者の動きだ。
しかしセーバルも同じように、キタキツネの動きに反応してステップやガードなどを行い、互角の戦いを繰り広げている。
「すごいぞ、セーバルちゃん!相手の動きにしっかりと対応している!」
「やるね、セーバル」
「サーバルと何回もやってるからね。簡単には負けないよ?」
一進一退の攻防が続く。お互いの体力ゲージは半分程度、セーバルの方が少し多いか。残り時間も少なくなり、そろそろ勝負を決めに行きたくなる頃だろう。
「これで決めるよ!」
「ここでセーバルちゃんが必殺技を発動!キタキツネちゃん、万事休すか!?」
「うん、やっぱりここで必殺技だよね」
キタキツネの体力ゲージではガードしても耐えられない。セーバルの必殺技で勝負がついたと思ったが、キタキツネの体力は減っていなかった。
「これはスーパーガードだ!キタキツネちゃん、スーパーガードで必殺技を耐え抜いた!」
スーパーガードは、必殺技ゲージを消費することでノーダメージで攻撃を防ぐことができるテクニックだ。
「スーパーガードで必殺技ゲージは空っぽだが、セーバルちゃんは隙だらけだ!容赦ないのないコンボが!決まったぁぁぁッ!!セーバルちゃん、惜しかった!キタキツネちゃん9連勝ッ!!強い!強すぎる!!」
「負けちゃった。やっぱりキタキツネは強いなぁ」
「セーバルもかなり強かったよ。結構危なかった。また遊ぼうね」
「うん!」
対戦を終えたセーバルとキタキツネが握手をする。
「尊いッ!!!」
実況は涙すら流していた。
「キョウ、ただいま」
「おかえり。惜しかったな」
「うん。でも楽しかったよ」
戻ってきたセーバルは満足げだ。
「次の挑戦者に勝てばキタキツネちゃんは10連勝!次の挑戦者はー?」
実況がオレを見る。
「次の挑戦者はー!?」
わざとらしいアイコンタクトまで送ってきた。
わかったわかった…観念したように前へ出る。
「頑張ってね!」
「ああ、やるだけやってみるよ」
セーバルの応援をもらい、筐体へ向かう。
「10人目の挑戦者は、セーバルちゃんと一緒に来たこの男!……名前は?」
「キョウ」
「キョウだァァァ!果たしてキタキツネちゃんの10連勝を阻止できるのか!?」
まるでプロレスの入場のように捲し立てる。
「キョウ、よろしくね」
「よろしく。お手柔らかに頼むよ」
オレが選ぶのは、キタキツネが使っていたのと同じキャラクターだ。
「両者、同じキャラクターを選んだぞ!?キョウはセーバルちゃんのようにいい勝負ができるのか!?それとも消化試合になってしまうのか!?レディー、ファイッ!!」
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