ジャングルエリア_16

 アードウルフ達の後ろでバリーが仁王立ちしていた。


「バリーさん!目を覚ましたんですね!」

「ああ、心配をかけてすまなかったな」


 アードウルフがバリーに抱き着き、嬉しそうにしっぽを振る。


「キョウがあのセルリアンを倒したおかげで私の治療ができたとアリサから聞いたよ。礼をいわせてほしい」

「オレは…」


 照れくさくて、できることをしたまでだ、などと言おうとしたが、バリーの目を見て、きっと素直に受け取るべきなのだろうと思った。


「いや、どういたしまして。お互い、無事でなによりだな」

「うむ!よければ後であのセルリアンの話を聞かせてもらえないだろうか?」

「ああ、構わないよ。まあそれほど話せることはないと思うが…」

「そうか…それでも、聞かせてくれ」

「了解」


 バリーがサーバル達の方に向き直り、オレは鍋をかき混ぜる作業に戻る。


「それでさっきの話だが、私は歓迎するぞ。今回の件で、私もまだまだ修行が足りないと分かったからな…共に心身を鍛えよう!」

「待って待って、これ以上バリーが修行して強くなったら、もう誰も止められないんじゃないかな?」

「確かにトラ達でも苦戦してたし、もっと強くなっちゃったら、今回みたいに暴走した時どうしようもなくなっちゃうわね…」

「うむ、今回は本当に申し訳なかった…実はあの時のことは少し覚えているんだ。体が勝手に動いて、止められなかった。皆を傷つける前に隊長が眠らせてくれて本当に良かったよ」


 サーバル達がうんうんと頷くが、しかしな、とバリーが続ける。


「もっと精神力を鍛えていれば、暴走しなかったのではないかと思うのだ。つまり、暴走しないための修行をする!」


 バリーが片手でガッツポーズをしながら宣言する。


「うん、いつものバリー。でも、どんな修行をするの?」

「問題はそこなのだ。恐らく生半可な修行では効果がないだろう…セーバル、何かいい案はないか?」

「うーん?修行したことないから、よくわかんないや。キョウは?」

「オレも修行の経験はないぞ?訓練はやっているが、バリーのトレーニングみたいなものだろうし」


<それでしたら、力を貸してもらえそうなフレンズさんを紹介できるかもしれませんよ!>


 ミライさんが操るラッキービーストがピョンピョンと飛び跳ねながら近づいてくる。


<皆さん、こんばんは。話は聞かせてもらいましたよ!このパークにはとってもすごい力を持ったフレンズさんがいるので、頼めば力を貸してもらえるかもしれません。忙しくて断られてしまうかもしれませんが…>

「なるほど、ぜひ頼みたいな。一体誰なんだ?」

<ふふふ、それは秘密です>


「あっ、ミライさんに1日もふられ倒せば精神力鍛えられるんじゃない?」


 サーバルがぼそっと呟いたのを、ミライさんは聞き逃さなかった。


<サーバルさん!>

「みゃい!?」

<すごいです!天才的な発想です!私はいつでも大歓迎ですよ!誰から修行しますか!?もう、全員まとめてでも構いませんうへへ…>

「み、ミライさん?なにか用事があったんじゃないの?」


 サーバルの声で、激しく飛び跳ねていたラッキービーストがピタリと止まる。


<…そうでした。バリーさんが目を覚ましたと聞いて、体調を聞きに来たのでした>


<バリーさん、今の体調はいかがですか?>

「ああ、問題ない。ただ―」

<ただ?>


 ぐぅぅぅ…という音が鳴り、バリーの顔が赤くなる。


「すまない、シチューの匂いをかいでいたら、お腹がすいてしまった…」


「丁度準備が終わったところです。みんなを呼んで、ご飯にしましょう」

「バリー、とりあえずコレをどうぞ」


 準備を終えたリョウと、サーベルタイガーが戻ってきて、できたての焼きジャパまんを差し出した。

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