ジャングルエリア_9

「ごめーん!いつの間にか滅茶苦茶増えてたぁー!」


 横一列に並んだ隊員の間を、ゾナの声が通り過ぎていく。


「射撃開始!撃ちまくれ!」


 隊長の合図で、リョウのカービンライフル、アリサのサブマシンガン、隊長のマシンガン、そしてオレの二丁のピストルが一斉に弾丸を吐き出す。

当然石を狙う余裕などないので、ド真ん中を狙って手当たり次第に引き金を引いていく。


「うわあああ!!」

「無駄弾は撃つな!しっかり狙って撃て!落ち着いてマガジンを交換しろ!」

「はいィ!!」


 迫るセルリアンに気圧されるリョウを隊長が注意し、リロードの隙をカバーする。


「うおおおおお!!」


 アリサは雄々しく叫びながらセルリアンを蹴散らしている。


「リロード!」


 バースト射撃のカービンライフルやサブマシンガン程ではないが、やはりいつものライフルに比べて弾切れが早い。

18発×2丁を撃ち尽くし、リョウ達の射撃が続いている内にマガジンを交換する。

ポーチの中にマガジンを捨て、右手に二丁の銃をまとめて持ち、左手でマガジンを2本差し込み、一丁を左手に移して構え、親指でレバーを引いてスライドを戻す。

この面倒さが二丁拳銃が使われない理由の1つだ。


 再び左右の銃口がセルリアンを捉え、パカンパカンと弾けさせていく。

同じ対象に撃ち込むなら割と簡単だが、それぞれ別の対象を狙うのはかなり難しい。

というか本来フィクションの世界の技を、照準表示システムで無理矢理やっているのだ。

二丁拳銃が使われない理由2つ目。照準、発砲、残弾管理、再装填。すごく忙しい。

これをできる人間は限られ、アルファチームで2丁を扱えるのはオレだけだった。


 なんとか集中力を保ち、また36発を撃ち尽くす。

数える余裕などないが、7割くらいは命中したように感じる。


「よし、一旦補給だ!みんな、頼んだ!」

「任せろ!」


 頭上を飛び越え、猛獣のフレンズ達が躍りかかる。

トラが吠え、先頭にいたセルリアンを文字通り“裂い”た。

後に続いたホワイトタイガーに捻じ伏せられ、ジャガーの猛烈な連打で弾け飛び、ブラックジャガーの研ぎ澄まされた一撃に抉られ、セルリアンは次々と無残に散っていく。

さらにバリーとライオン、サーベルタイガー続く様はまさに『過剰戦力』の一言であった。


「うっわ、なんかもうセルリアンがかわいそうになってきたよ…」

「でも、こっちに来ても許しませんよ!」


 猛獣たちの蹂躙を逃れてきたはぐれセルリアンをアードウルフが弾き飛ばし、サーバルがトドメを刺す。


 その間に隊員達はオオイヌから弾薬を補給し、再攻撃に備える。

マガジンに弾を込めつつ、ヘルメットのバッテリー残量を確認する。

半分ほど減った電池のアイコンの隣に56%と表示されていた。

照準表示システムは専用のセンサーを使用するため、バッテリーに大きく負担をかける。

二丁拳銃が使われない理由の3つ目だ。

バッテリーが切れれば、セルリアンの石の表示などもできなくなってしまう。

バスの機能で充電はできるが、それなりに時間はかかる。

この戦闘さえ乗り切れば後は帰還するだけと考え、隊長は二丁拳銃を使用を許可したのだろう。


「よし、準備完了だ!もう一度攻撃するぞ!」

「了解ッ!」


 トラ達が一斉に飛び退き、射撃が再開される。

いくらトラ達でも、この量のセルリアンに完全に包囲されてしまうと危険だ。

それに、修行をしているバリーや千人組手をこなすホワイトタイガーはともかく、ネコ科のフレンズは基本的に持久力が高くない。

一旦下がって呼吸を整える方が力を発揮しやすいのだ。


 交互に繰り返されるジャパリフォースによる弾幕と、トラ達の圧倒的な攻撃(3回目からはワクチンを飲んで休憩していたゾナまで参加した)で、セルリアンの大群は数を減らしていった。

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