プロローグ2

 親睦会があったらしい日から数日が経過した。


「なあ幸介、今日も女子と遊びに行くんだけど、お前も行こうぜ」


 幸介が休み時間にぼーっと窓の外を眺めていると、また亮太が遊びに誘ってきた。


 三上亮太は茶髪にピアスのチャラそうな見た目の男子生徒だ。彼は去年から同じクラスだったが、よく遊びに行こうと声を掛けてくる。


「女子と遊ぶなら行くしかないな。で、女子って誰?」

「愛梨とか夕菜ちゃんとか、あとは河北さんとか」

「宮里さん以外知らない」


 宮里愛梨は亮太の中学からの同級生だ。愛梨と亮太は喧嘩も多いが、基本的には仲が良いと思う。彼女とは亮太を含めて話すこともある。


「あの辺に可愛い子がいっぱいいるからそいつらだよ。つーか同じクラスなんだから覚えろよ」


 亮太が親指で差す方向を見ると、派手な女子が数人、わいわいと駄弁っていた。


「あんな可愛い子たちが遊んでくれるの? マジかよ」

「いや、クラスメイトだから別に遊ぶだろ。そんな悪い子らじゃねーし」

「ふむ、それなら行こう。ちなみにいかがわしいことをしてもいいのか?」

「え、何かするの? クラスメイトに?」

「だ、駄目なのか……?」

「……いや、まあ同意の上でならいいと思うけど。犯罪になるようなことはするなよ」

「了解!」


 右手を頭に持っていき、真剣な表情で敬礼した。


 亮太は呆れたように溜め息を吐くと、「じゃあまた放課後な」と言い残し、自席へ戻って行った。



※※※



 放課後になると、幸介は存在感を消しつつ、こっそりと教室を出た。


 階段を降り、玄関へ向かう途中、職員室の前を通り過ぎたときだった。


「おいこら! 待て奥山!」

「げっ! 藤本!? やべっ!」


 後方から叫んできたのは数学の藤本先生だった。彼は強面の男性教師で、幸介が授業中に寝ていると、いつも起こされ、恐い目で睨まれるのだ。


 声を掛けられたことで彼に呼び出されていたことを思い出したが、放課後に時間を取られるのは面倒臭いので、このままバックれて帰ることにした。


「ちょっと来い!」

「何の用なんですか!?」


 捕まらないように距離を取りながら一応用件を訊く。


「お前は補習だ!」

「何でですか!? 赤点は取ってないでしょ!?」

「いつも赤点ギリギリだろうが! その上遅刻が多いし授業で寝過ぎだ!」

「とにかく赤点は取ってないんで、補習は断ります!」


 そう言い残して逃げる。


 補習だと放課後の時間をかなり取られるだろう。それは断固拒否だ。


「あ、待て!」


 昇降口まで来ると素早く外履きに履き替え、玄関を出た。


 藤本先生は諦めたのか、外までは追って来なかった。


 両側に一定間隔で並んでいる木々の間を溜め息をつきながら歩く。


 校門まで行く途中、いつも通り妹の美優が待っていた。


「あ、お兄ちゃん」


 美優は幸介の姿を確認すると、ぱあっと笑顔になった。


「待たせたな」

「全然待ってないですよ。今来たところです」

「何かデートの待ち合わせみたいなセリフだな」

「そう捉えて貰って差し支えないですよ」


 彼女は幸介の右腕にしがみついてくると、またにっこりと笑顔を向けてくる。


「まあ、とにかく帰るか」

「はい」


 幸介は美優にしがみつかれたまま、校門を出て、自宅へ向かって歩き始めた。

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