プロローグ2
親睦会があったらしい日から数日が経過した。
「なあ幸介、今日も女子と遊びに行くんだけど、お前も行こうぜ」
幸介が休み時間に窓の外を眺めていると、また亮太が遊びに誘ってきた。
三上亮太は茶髪にピアスのチャラそうな見た目の男子生徒だ。彼は去年も同じクラスだったが、よく遊びに行こうと声を掛けてくる。
「女子と遊ぶなら行くしかないな。で、女子って誰?」
「愛梨とか夕菜ちゃんとか、あとは河北さんとか」
「宮里さん以外知らないんだけど」
宮里愛梨は亮太の中学からの同級生らしい。愛梨と亮太は喧嘩も多いが、基本的には仲が良いと思う。彼女とは亮太を含めて話すこともあるので、一応知っている。
「あの辺に可愛い女子がいっぱいいるからそいつらだよ。つーか同じクラスなんだから覚えろよ」
亮太が親指で差す方向を見ると、派手な女子が数人、わいわいと駄弁っている。
「あんな可愛い子たちが遊んでくれるの? マジかよ」
「クラスメイトだから別に遊ぶだろ。そんな悪い子らじゃねーし」
「それなら行こうかな。ちなみにいかがわしいことをしてもいいのか?」
「え、何かするの? クラスメイトに?」
「だ、駄目なのか?」
「……いや、まあ同意の上でならいいと思うけど。犯罪になるようなことはするなよ」
「了解」
右手を頭に持っていき、真剣な表情で敬礼する。
亮太は呆れたように溜め息を吐くと、「じゃあまた放課後な」と言い残し、自席へ戻って行った。
放課後になると、幸介は存在感を消しつつ、こっそりと教室を出た。
廊下の端の階段を降り、昇降口へと向かう。
途中、職員室の前を通り過ぎたときだ。
「おいこら! 待て奥山!」
「えっ? ……げっ、藤本!? やべっ」
後方から叫んできたのは、数学の藤本先生だった。強面の男性教師で、幸介が授業中に寝ていると、いつも起こしてくるし、睨んでくる奴だ。
そう言えばと、今日は放課後に呼び出されていたことを思い出した。
しかし、どうせろくでもない用事だろうし、そうでなくても放課後に時間を取られたくない。このままバックれて帰るに限る。
「ちょっと来い!」
「何の用なんですか!?」
捕まらないように距離を取りながら、一応用件を訊く。
「お前は補習だ!」
「何でですか!? 赤点は取ってないでしょ!?」
「いつも赤点ギリギリだろうが! その上遅刻が多いし授業で寝過ぎだ!」
「とにかく赤点は取ってないんで、補習は断ります!」
そう言い残して逃げる。補習だと放課後の時間をかなり取られるだろう。それは断固拒否だ。
「あ、待て!」
昇降口まで来ると素早く外履きに履き替え、玄関を出る。
藤本先生は諦めたのか、外までは追って来なかった。
玄関先から校門まで、両側に一定間隔で並んでいる木々の間を、溜め息をつきながら歩く。
途中、1つの木のそばで、いつも通り妹の美優が待っていた。
「あ、お兄ちゃん」
美優は幸介の姿を確認すると、ばあっと笑顔を見せる。
「お待たせ」
「全然待ってないですよ。今来たところです」
「何かデートの待ち合わせみたいなセリフだな」
「そう捉えて貰って差し支えないですよ」
美優は幸介の右腕にしがみついてくると、またにっこりと笑顔を向ける。
「とにかく帰るか」
「はい」
幸介は美優にしがみつかれたまま、自宅へと歩いた。
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