第18話 ネコ雲母
私の職業は、「剥がし屋」である。
「先生、うちのキララちゃんが!」
今日も客がきた。数年前、突如としてネコ科の生物の皮膚が、鉱石のような膜に覆われてしまう疫病が観測された。放っておくと口腔が固まり、窒息してしまう。
「お願いします……」
飼い猫を預かる。生後一歳半のこの猫は、既に肉球部が鉱石化し、苦しそうにしている。私は専用の道具を取り、慎重に鉱石部を剥がしにかかる。雲母のように薄い鉱石の膜を一枚、また一枚と除く。時々、猫が鳴き痛みを訴える。全神経を集中させた剥がしは、二時間ほどで除去し終えた。猫を返し、私は手術台の掃除を始める。ちりとりの中に集められた雲母状の鉱石膜が、鉱脈のように煌めいていた。
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