第15話 疾きこと風の如く

 初めて列車というものを見たのは、私が十一の頃だった。

 私の暮らしていたG村というところは、今でこそ近隣の村や町との統廃合により政令指定都市にまで発展しているが、当時は通学用のバスが二時間に一本しか通らないほどの、寒村だった。私は、特別不自由というわけでは無かったのだが、自転車を走らせて獣道を走り、友人宅に遊びに向かうことの不便さは、若い時分からどうにかならないものかと愚痴ていた。

 ある日、G村に鉄道が敷設されるという噂を聞いた。私はその噂を両親から聞くと、小躍りして喜んだ。いち早く例の列車が見たい。友人にこのことを伝えようと、逸る気持ちのままに自転車を走らせた。いつもより鋭敏に頬を撫でる風を感じる。列車はこの何倍も速いのかと思うと、体中は羽のように軽やかになった。

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