第46話 まさか受けだったなんて

「大隊長」

「おう、ナドカ。見つけたか?」

「はい。引っかかりました」

「手は出してねえだろうな?」

「ええ、ご指示どおり」

「引き続き、追え。……奴らがここに来たってことは、ジェシルやムツリらは恐らくもう、この世にはいねえだろう。また、やり直さなきゃならねえ理由が増えたな」

「大隊長……」

「いい奴らだった……ムツリはあの生真面目な感じで、童貞のむっつりスケベだからな。『自分は女体を知らんのです』と、興味津々に顔を赤くしたときは、思わず噴いた。あいつが気に入ってたマナを同じ隊にしてやったのに、むしろどう接したらいいか困ってた様子だったな……はは…………悪りいこと、しちまったか」

「マナは、その不器用さも含め、ムツリ小隊長を心から尊敬しているようでした。いえ、同じ女の勘で言えば、きっと、お慕いしていたのだと」

「そうか……せめて少しでも、最期までにふたりの距離が近付いていたらと願おう」

「はい」

「ジェシルは子どもみてえな奴でさ、武器を独自に改造、つーか発明しちゃあ、目を輝かせて見せに来たな。そのせいで常に寝不足だったから酷ぇ隈だったが。部下たちにも自慢して回って……偉そうな割にあれでなかなか、部下には好かれてたよな」

「みんなの弟、みたいな感じでしたからね。色々上から目線で能書きを垂れますけど、見た目が幼いので許せるというか。隈もチャームポイント扱いでしたね。

 表立って可愛がると不機嫌になるので、みんな怖がるふりをしてましたけど。まあ、しっかり強いですし、毒にも精通してましたしね」

「でも知ってるか? あいつ、自分は毒に……つーか、刺激物に弱いんだぜ?」

「そうなんですか?」

「簡単に言や、それこそ感覚がお子様なのさ。辛い食い物とか全然駄目だったからなあ」

「辛いもの、がたまたま戦場にある可能性なんてないでしょう」

「まあな。……いずれにせよ、敵はきっちり打つ。六十人の犠牲は無駄にはしねえ」

「はい……ところでガダナバ大隊長。ひとつ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「なぜ、先程から空気椅子なのでしょう? お座りになっては」

「……いや、これは……ケツに強烈なのをぶち込まれちまってな」

「え……?」

「まだ痛むし、なんか入ってるみてえで、座るなんてとても無理だ」

「ま、まさかそれは、硬くて太いのを……?」

「おお……ナマモノなのに金属かっつーくらい硬かったな。太さは……こんくらいか」

「え……ええっ、ナマで!? 凄っ」

「ああ。血が出なかったのが不思議だぜ。あんな刺激を感じたのに」

「刺激的で、感じちゃったんだ……!」

「は? おいナドカ、お前なんか」

「私、大隊長を誤解してました。見た目どおり攻撃的な方だと思ってたのに」

「何故、身体を引いてくんだ」

「失礼しますっ」

「おい、なんでちょっと嬉しそうなんだ」

「まさか受けだったなんて……っ! あぁ、捗るわぁっ!」

「お前絶対なんか勘違いしてんだろ! おい、行くな、話を聞け! 受けってなんだ。捗るってなにがだ!? おい! おおぉおおおおいっ!」

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