SIGHGO

エリー.ファー

SIGHGO

 カタリさんがいた。

 カタリさんが増えた。

 カタリさんでいっぱいになった。

 カタリさん、カタリさんばかりになった。

 それは、意思のないカタリさんの集合体。

 大いなる宇宙の意思を受け継ぎし、すべての生命に対する挑発であり、深刻な地球への警告。

 増えすぎたカタリさんたちは一か所に集合し、そして巨大な影となった。

 ジャイアントカタリさんである。

 ジャイアントカタリさんになると、今まではただの活字中毒の怪物だったにも関わらず、人間を食べ始める、そのことは前々から分かりきっていた。しかし、そのその増え始めていたカタリさんへの対策が遅れたのは大きな問題となっていく。

 私たち人間になすすべなどなかった。

 人間に手を出されないようにするためにジャイアントカタリさんに活字を与え続けなければならない。そうしなければジャイアントカタリさんの手は人間に向かって伸びてくる。

 これは、討伐ではない。

 共存なのだ。

 そして、カタリさんによる地球の植民地化だった。

「読めば分かるさ。」

「読めば分かるさ。」

 どことなくこの言葉が響いたときに、ジャイアントカタリさんの欲する分量の活字が用意できなかった場合、人が連れていかれる。

 咀嚼音が響くのである。

 不快だった。

 精神を病んでしまう者も多く出た。

 これは。

 悲劇である。

「よぉぉぉおめぇぇばぁぁぁぁっ、わぁぁぁかぁぁぁるぅさぁぁぁぁっ。」

 太くそして低い、咆哮のように伸びきった声。

 人類は頭を抱えた。

 その時、また新たな怪物が生まれた。

 カタリさんに続く、第二の怪物。

 そう。

 ちゃんねえ、である。

 当然、彼女はねえちゃん、ではない。

 ちゃんねえ、である。

 そのため。

 テッペンぎりぎりでシースーをギロッポンで食べたりする。

 まさにケツカッチンである。

 活字を食べさせる以外に、今度は映像を食べさせなければいけない、特殊な怪物ちゃんねえ。

 彼女の怒りも同時に納めなければいけないと、皆は頭を抱えた。

 そこで考え出されたのが。

 字幕付き映画、である。

 それであれば、映像と活字、その両方を一気に作り上げることができるため、一つの芸術作品で、ジャイアントカタリさんと、ちゃんねえの二人を満足させることができる。

 画期的な発明だった。

 実際、そのようにしていく中でジャイアントカタリさんと、ちゃんねえは大人しくなっていき、最後には石化して、白く崩れ去っていった。

 気が付くと、人類には多くの芸術作品が溢れており、皆がそれを見て心が豊かになっていることを感じた。

 今になれば、ジャイアントカタリさんもちゃんねえも、芸術という分野の底上げに現れた一種の幻のような存在だったのではないか、とそう語っている。

 それから何十年、何百年、何千年と経った。

 それでも、皆はその時のことを語り継ぎ、誰一人として忘れるようなことはなかった。

 悲劇としてではなく、一つの答えとして人類の指針となったその動きはこうして幕を閉じた。

 そのはずだった。

「ねぇ、昔カタリさんっていう生き物が大量繁殖して、少しずつ人類を滅ぼしていったって聞いたことがあるの。」

「えぇ、超怖い。」

「でもね、それっていいことも多かったんだって。」

「おばば様もそう言ってた。」

「だからね、あたし、もう一回呼び出してみようと思うの。」

 そう言って笑顔で走り出した女の子の名前はバーグ。

 のちのジャイアントバーグちゃんになる最初の一人である。

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