第46話 朧、ジェレーレ火山で狂喜乱舞する 3
「ハァ、ハァッ、ハッ、ーーブハァッ!!」
俺は
確かに
既に魔力回復薬を四本空にして、死屍累々に積み上がった蜘蛛の死骸と、新しく生み出された火蜘蛛の見分けがつきにくくなっていた。
まぁ、四千匹以上は多分狩っているから当然っちゃ当然か。
「おい、グレイズ様⁉︎ もう限界じゃねぇのか⁉︎」
「大丈夫……ちょっと頭痛が激しいだけ、だ」
イゴウルが背後から声をかけてきたが、俺は振り返る事なく軽く掌を振った。
ーー何故なら、限界なのはこちらだけじゃ無いみたいだからね。
さっきから徐々に少しずつ、
それに、口元からは涎を流し、見るからに苦しんでいるのが伝わった。
どうやら
それとも、ここまでやられた事が無かったから、そんな大層な名前をつけられたのかもね。
あと、魔力回復薬を連続使用すると効果が薄まるっていうのは本当だった。
最初は二割程回復してくれたが、次からはその半分にも満たない。
これは肉体が耐性を得てしまうからなのか、使う頻度が早すぎるからか要検証だなぁ。
肝心の時に作用しないんじゃ、沢山保有しても無意味だし。
「イゴウル殿、そろそろとどめを刺して来る。倒れた者達を抱えて走れるか?」
「あぁ! お陰で儂は十分に体力を回復出来た! この程度の人数なら容易だぜ!」
「じゃあ、今から背後の壁に穴を開けて出口を作る。合図したら一気にこの巣から脱出して欲しい」
「それは良いが、グレイズ様はどうする気だ⁉︎」
「大丈夫。直ぐに後を追うし、何も問題はないよ」
眉を狭めながら、どこか納得がいかなそうなイゴウルの肩を叩くと、俺は子供ながらに無邪気な笑顔を見せた。
「俺を信じてくれよ! 一緒に帰ったら将棋でも指そうぜ!」
「ショウギ?? 良く分からんが楽しみにしてるから死ぬんじゃねぇぞ!」
俺はイゴウルの突き出した拳に拳を重ねると、一歩前に進み出て深く腰を落とした。
ーーやっぱりどう考えても蜘蛛を斬るのは嫌だ。あの液体が気持ち悪い。
「朱厭、来い!!」
俺の言葉に反応して影から赤髪を揺らした朱厭が現れ、膝を突く。
「ハッ! 呼ばれるのが遅過ぎて、カティナ様が心配しておりましたぞ主人よ!」
「まじか……悪いな。ママンに怒られる時は一緒に頼むよ?」
「本来御免被りたいですが、この惨状を見ては納得せざるを得ませんなぁ」
「あぁ、そんでこれから『アレ』をやる。親蜘蛛ごと吹き飛ばすから、その後の脱出は頼んだぞ」
朱厭の表情が途端に真っ青になる。俺の言葉の意味をしっかり理解してるみたいだ。
ーー神格スキル『
かつて五歳の頃に一度だけ使ってみた結果、暴走して周囲の森を薙ぎ払い、巻き込まれた朱厭を一度死なせてしまった事があった。
それ以来レベルが上がるまでは使用しないと封印していたが、知恵の種子のお陰なのか、さっき頭の中でパズルの
「安心してくれ。今の俺ならいける!」
「我が心配しているのは、どちらかと言うとこのダンジョンの方ですが……」
「きっと、何とかなる!」
実際は試してみたいだけだけど。だってさ、折角の異世界なんだもの。使える様になったなら色々とぶっ放してみたいよね。
「フゥ〜! イゴウル殿はもっと後ろに離れてろよ! そっち側にも穴を空けるから、朱厭はタイミングを見計らって『神爪』で防御を頼んだぞ!」
「あ、主人よ! こちら側は我が何とかするので掌を向けないで下さい!」
「いっけえぇぇぇぇっ!! 『
俺が練り上げた龍気と闘気、そして魔力が覇幻から流れ込んできた神気と融合し、巨大な嵐龍を形成する。
何度試してみても魔気融合において、三つの気と魔力を融合するには神格スキルの発動が必須だった。
朱厭達がいた方の岩壁を巨大な龍の尻尾が貫いて風穴を開け、炎楼蜘蛛の巣が張られた方を嵐龍の圧倒的なブレスが襲い、死骸や新たに生まれた子蜘蛛ごと全てを呑み込んだ。
ーーズドオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
炎楼蜘蛛は断末魔を上げる暇すらなく子蜘蛛ごと粉々に弾け飛び、ダンジョンの壁ごと吹き飛ばした。
途端に脱力して倒れ込む俺の体を朱厭が抱きかかえる。これじゃ妲己の事をとやかく言えないなぁ。
「どう、だ? 涼しくなったろ?」
「やり過ぎです。っと言いたいところですが、主人の力を見て胸が高鳴り興奮しておりますな」
俺は霞む視界の中で、レベルアップした感覚に浸っていた。
これで、シルフェと妲己のパワーレベリングの目処が立ったな。イゴウルにも十分恩は売れただろう。
「は、ははっ、こりゃあとんでもねぇな。流石は神龍様の後継者か……」
視線を流すと、イゴウルが目を見開きながら固まっていた。なんだ、まだ逃げてなかったのか?
「早く逃げろよ。見ての通り、俺はもう動けない」
「馬鹿野郎! グレイズ様……いや、もうグレイズで良いか? お前さんが全部吹き飛ばしちまった所為で、どっちに行ったらいいかなんてわからねぇぞ!」
「あっ……本当だ」
イゴウルの指差した先には俺の開けた大穴が広がっていて、徐々にマグマが流れ混んでいた。地形を一部変化させてしまったみたいだ。
「んじゃ、こっちの穴から帰れば良いだろ。頼んだぞ朱厭。俺は少し眠る」
「お任せください!」
「ちょっ! 俺は人を抱えてんだぞ⁉︎」
「それは我も一緒だ」
「子供じゃねぇか! 一人くらい持ってくれよ⁉︎」
「こういう時、主人ならばこういうだろう。『だが、断る!』っとな!」
その後、俺が気絶している間に火の縄張りは大騒ぎになっていたらしく、無事に鍛冶の街マッテンローにイゴウルが戻った事で事態は収束したと、目覚めてから説明された。
カティナママンのお説教タイムは二時間程続き、同じくベタ甘タイムが二時間程続いた後、漸く俺は解放された。
ーーうん。今日も幸せだな。
__________
【グレイズ・オボロ】
種族:竜人族
年齢:7歳
Lv:52
HP:51050(820)
MP:44452(710)
力:9801(190)
体力:9463(185)
敏捷:8983(197)※風烈龍のブーツ装着時補正。
魔力:14370(140)
精神力:10445(161)
【スキル】:知恵の種子、鑑定(中)、縮地、無詠唱、魔気融合、龍眼、剣術、体術、豪腕、狙撃、魔力解放、魔力収束、威圧、統率、弓術、料理、並列思考、分解、解体、気配感知、気配察知、会心の一撃、遠当て、不屈、教導、薬物耐性。
【称号】:天衣無縫の剣士、神龍の加護、嵐龍の加護、転生神の加護、武神の加護、神殺し、龍殺し、貧乏神の想い人、殲滅者、神獣の契約者、導く者、次元魔法の継承者、隠れた
【装備】
『慈愛のネックレス:自動物理障壁(極)自動魔法障壁(極)神話級』
『輝天龍のサークレット:状態異常無効化(極)伝説級』
『闇隠龍のマント:認識阻害(極)国宝級』
『覇幻:???』
『大地龍の鞘:物理攻撃ダメージ上昇(極)国宝級』
『風烈龍のブーツ:敏捷1.2倍、敏捷のステータス成長補正(中)国宝級』
【神格保有数】:2
『
『
【神獣契約】
『
『
『神龍の加護』→レベルアップ時の必要経験値減少、ステータス成長補正(極)
『嵐龍の加護』→風属性の攻撃耐性上昇(極)、風魔法の習得補正率上昇(極)、スタータス成長補正(大)
『転生神の加護』→獲得経験値増(大)、ステータス成長補正(中)
『武神の加護』→武具、防具の強化補正上昇(極)、強化成功率百%、ステータス成長補正(大)、物理耐性上昇(中)
『神殺し』→魔法攻撃ダメージ2倍、聖属性攻撃耐性上昇(極)
『龍殺し』→物理攻撃ダメージ2倍、物理防御上昇(極)
『貧乏神の想い人』→強くなれば強くなる程、武神の愛が深まり自身の持てる所持金が減少する。周囲の者への影響は皆無。
『殲滅者』→威圧のスキルを発動時、自分よりも弱い敵を恐慌状態に陥らせる。
『神獣の契約者』→神の加護を授かった者が名付ける事により、五体の専属神獣を生み出して契約を成せる。神獣は死んでも一定の神気を注げば復活する。契約主が死ぬまで破棄は不可。残り三体。
『導く者』→教えを施した者の経験値、理解力が向上する。その際、一部がマージンとして自身に返還される。
『次元魔法の後継者』→先代から知識を引き継がれた証。次に知識を引き継ぐ者を見つけ出すまで、次元魔法の習得補正率上昇(極)
『隠れた
『蜘蛛の天敵』→あらゆる蜘蛛から畏怖される存在。蜘蛛と名のついた魔物への物理攻撃ダメージ2倍。
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