怪談

「あ~、暑い~。

あたい、暑いのホンマ苦手やわ~」


真智

「ちょっと! 宙?

何こんなところですっぽんぽんになってるの!?」


「え~、だってここの部活、

お前らが実験に失敗して校内の電子機器全て爆発おしゃかにした一件以来、

生徒会に電気止められてるかられやろ?


扇風機も使えんし、暑くてかなわん」


谷先生

「宙、とにかく服着ぃ~、服!」


「へ~い」


四葉

「それにしても、今日の部活やることないよね~?

真智ちゃん~? 私帰っても大丈夫~?」


真智

「え~?

四葉ちゃんもう少し部室いようよ~!」


谷先生

「真智すまん。うちも帰るわ」


真智

「ちょ、先生まで?


…………、あっ! そうだ!


ねえ、みんな?」


谷先生

「どうした? 真智?」


真智

「夏と言えば怪談!

みんなで怖い話出し会おうよ!

きっと涼しくなるよ!」


「怖い話か~。

幽霊とかやなくても大丈夫なのか?」


真智

「大丈夫だよ。 宙は何かあるの?」


「あたいはな……、


もう何年も前のことだけど 、

両親が留守の時に家の庭で弟と花火やったんだけどな……」


真智・四葉・谷先生

「うんうん」


「花火が湿気てるみたいで、なかなか火がつかんかったんよ」


真智・四葉・谷先生

「それで?」


「弟がロケット花火やりたい言い出してな、うちが火をつけてあげたら、

なかなかつかんでな、

弟が自分でやる言い出して、

うちは、うちに出来んのに幼い弟に無理やろってたかをくくってたんや」


真智・四葉・谷先生

「うんうん、それで?」


「うちが弟が一生懸命花火に火をつけようとする弟の姿を温かく見守っていたらな、

花火に火がついたんや!


あたいは弟によかったな~って誉めてやったんやけど、弟ははしゃぎながら ロケット花火の照準をうちに向けてくるんや!


『あぶない!

わかるな?

大気たいき、もう気~済んだやろ?

それはバケツに入れて

ねえちゃんと違う花火やろ? な?』


『嫌だ~!』


弟はどうしてもロケット花火を見てみたかったらしいんや。


『大気? ホンマ危ない!危ない!

姉ちゃん死んでまうって!』


『キューン!』


『…………?』


『…………?』

ロケット花火は無情にもあたい目掛けて発射され、

次の瞬間、あたいと弟はただ呆然とするしか無かったんや……」


真智

「え? 二人に何があったの?」


「そのロケット花火がな、あたいの鼻の穴に『ズボン!』って入りやがったんや」


真智

「え~? 鼻の穴に入ったの?

宙はそのあと大丈夫だったの?」


「鼻血は出たが大事にはいたらんかった」


真智

「よかったね!!」


「でな、それからだ!

あたいは鼻の穴が気になるようになった。

だからいつもこうして鼻の穴を触っとらんと落ち着かん」


真智・谷先生

「テメェ~の鼻くそほじる癖の言い訳か~い!」


四葉

「クスクス。宙ちゃん面白~い」


真智

「じゃあ次は、え~と、

谷先生あります?」


谷先生

「うちか~。

うちは最近怖い夢を見てな」


真智

「え? どんな夢ですか?」


谷先生

「うちが小学生で、学校は木造校舎なんやけどな、

昼休みが終わったら、担任の先生が慌てた様子で教室に入って来たんや。


担任が言うには、

今学校の校舎に一匹の殺人動物が迷い込んでいるらしいんや。


みんな、教室の窓、出入口の戸を閉めて

先生の指示に従うようにって言われてな。

みんな先生の言い付けを守るんや。


でもな、殺人動物がうちらの教室に向かってきて、教室の入口に無理やり入ろうとするんや」


真智

「その動物ってどんな姿なんですか?」


谷先生

「意外と小さくて、大人のネコくらいの大きさや。

そして姿はゾウガメそっくりや。

また、そいつの首はキリンみたいに長いんや。

困ったことにゾウみたいにバカ 力で

行く手の障害物をなぎ倒しながら真っ直ぐ教室に向かってくるんや」


真智

「こ、怖いですね~!」


谷先生

「うちらは、入口の戸と窓ガラスをみんなで開けられんように押さえたんやけど、

無駄やったわ。


教室の戸は奴の怪力で簡単にけやぶられて

教室に入ってこられたんや」


真智

「ひゃ~怖~!

みんなは大丈夫だったんですか?」


谷先生

「大丈夫や無かった。

担任の先生がみんなを庇ってくれようとしたんやけどな?」


真智

「ゴクリ、……その先生どうなったんですか?」


谷先生

「奴がな、口から紫色の粘り気の強い胃酸を吐き、先生に飛ばしたんや!

そしたら先生は……一瞬で蒸発してしもうたんや!」


真智

「キャー!!」


谷先生

「怖いやろ?」


真智

「はい……」


谷先生

「それでな、クラスメイトのほとんどは

奴の胃酸の犠牲になったんや」


真智

「谷先生はどうなったんですか?」


谷先生

「うちと数人の女子は男子に庇われてなんとか教室から抜け出せたんやけど、

どこに行ったらいいかわからんでな……。


とりあえず、残った仲間と校門から抜け出そうとしたんやけど、

警察の仕業かどうかはしらんけど、

軍事施設にありそうな有刺鉄線で学校の敷地から出られんようにされてたんや。


結局うちらは仕方なくバラバラに解散して各々隠れたんや。


うちは中庭のジャングルジムの一番上に登ったんやけどな、他の仲間はみんな消されたらしいんや。


そしてそいつは、最後にゆっくりと

うちの方へ迫ってきた。


でもな、そいつはジャングルジムの下でなぜか動きを止めたんや。


うちは、ジャングルジムごと怪力でなぎ倒されると思ったんやけど、そんなこと無くて

少し安心したんやけど……」


真智

「やけど?……どうなったんですか?」


谷先生

「やけどな、奴はそんなに甘く無かったんや。


口から今まで見せた事がないくらいの勢いで遠くまで胃酸を吐き出し、

それが今まさにうちの身体にかかろうとしたんや!


っと、ここで夢が覚めたんや。

ホンマ死ぬかと覚悟したわ」


真智

「すっごく怖い夢ですね……?」


谷先生

「そやろ?

うちの話はここで終わりや」


真智

「じゃあ次は四葉ちゃん!

何か怖い話ある?」


四葉

「私はね~、

みんなで山にキャンプ行った時のことなんだけど~。


夕食のバーベキューの食料の具はみんなそれぞれ持ちよることになってたけど、

私は何も持ってきて無かったから、

川魚を取ってたの~」


真智

「そう言えば、四葉ちゃん。

キャンプの初日は夕方まで見かけなかったよね?

魚を釣ってたんだね? 」


「なあ四葉?」


四葉

「なあに~?宙ちゃん?」


「四葉は釣竿や餌とか持って行くとこ見て無いが、道具はどうやって用意したんだ?」


四葉

「私は釣竿なんて使わないよ~!

川に入って手掴みで沢山捕まえられたよ~」


「すげ~! 熊みたいじゃね~か?」


四葉

「その熊なんだけどね~?」


「熊?」


四葉

「そう~熊~。

私が魚を捕まえている場所はよく魚が取れるみたいで~、となりで子熊さんも魚捕まえていたの~」


「子熊か~そうか~。……?

っておい! 魚捕まえて無いで逃げろよ!」


四葉

「え~? せっかくの食料だし~、

干物やくんせいにしたらキャンプから帰ってからも食べられるから絶対譲れないよ~」


真智

「四葉ちゃん? それで大丈夫だったの?」


四葉

「それがね~、

私が捕まえたか、隣の子熊さんが捕まえたかわからない大きな魚があってね~、

私その子熊さんと魚の奪い合いになったの~」


「マジか……」


四葉

「それでね~、私悪気は無かったんだけど~反射的に私の肘が子熊さんの頭に軽く当たっちったんだよね~。

そうしたらね~、突然その子熊さんがわんわん泣き出したの~」


「子熊 弱っ!」


四葉

「それでね~、私は子熊さんに謝ったんだけど~、

子熊さんの様子を心配した子熊さんのパパさんが現れて

私お説教されちゃったの~」


真智

「四葉ちゃん……?

よく逆鱗に触れた子熊のオヤジから生きて戻ってこれたね……」


四葉

「子熊さんのパパさんは最初怖かったけど、いい人だったよ~。

私が家庭の事情で川魚を食糧として備蓄しておきたいからって話したらね~、

キャンプ場周辺の川付近の縄張りを少し分けてくれたんだ~」


真智

「四葉ちゃん……、

四葉ちゃんは本当に人間なの?」


四葉

「そうだよ~、どうしてそんなこと聞くの~?」


真智

「まあいいよ。何でもない。ゴメンね。

じゃあ最後はあたしね!」


谷先生

「真智? お前言い出しっぺなんだから

滑るなよ!」


真智

「谷先生~、ハードル上げないでくださいよ~?


じゃああたしの話。


今年の夏休みの事だよ。

あたしはね、お父さんに一眼レフカメラを借りたんだ。

嬉しくていろんな物、いろんな場所を撮ってたんだけどさ、

身近な場所だけじゃつまらないと思って

バスを使って鍾乳洞に行ってきたんだ。


そしてね、鍾乳洞の中を一人でカメラのファインダーを覗きながら沢山写真撮ってたんだけどさ~、

突然頭上に続いていた蛍光灯の明かりが一斉に消えちゃったの!!

だから当然……辺り一面真っ暗よ!」


四葉

「え~怖~!」


真智

「続けるね。

それであたしは怖くなってすぐに撮影を止めて引き返そうとしたんだけど、

真っ暗で何も見えないし、

道もいりくんでいたの。

おまけにあたしはカメラの撮影に夢中でずっとファインダーを覗いてたから

帰り道もわかんない。


あたしはそれでもなんとか必死に出口を探そうとしたけど、進む度に足元の水かさが増えてくるわけ」


『あれ? 鍾乳洞にこんな水が深いところあったかな?』


あたしは怖くなって引き返したけど、

そっちにも深い水たまり。


あたしにとって

その孤独で真っ暗な鍾乳洞の中での時間は

実際の時間の何十倍も長く感じたわ。


『グスン。

あたし、このまま一生ここから出られず、

ここで死ぬのかな』


『うえ~ん! うえ~ん!』

あたしは怖くて不安で押し潰されそうになってその場で泣きわめいちゃった。


あたしが泣くのにも疲れて泣き止もうとしていたちょうどその時のことだよ。


あたしのいる場所の近くから聴こえる

水面を歩く2つの足音。


あたしは誰かが助けに来てくれたのかと思って、すがる思いでその足音のするほうへ走って向かったんだけどさ……。


そうしたらね……、

動物を食べている2つの人影が見えたわけ!!


あたしはもちろん、はっきりと見て確認した訳じゃなかったけど、

あれは絶対間違いないよ!」


四葉

「え~? 怖いわね~?

それで……、何だったの~?」


真智

「あれはね、

鍾乳洞であたしみたいに迷った人間を食べる


人喰い地底人だったのよ!!」


「怖っわ!」


谷先生

「真智? お前よく無事だったな?」


真智

「もちろんあたしはその二つの影とは反対方向に全速力で逃げたよ。

そして必死に逃げてる途中にね、

偶然!!

チカチカと不安定ではあったんだけど、

今まで消えていた頭上の蛍光灯の一つが点灯したの。

あたしは大急いで入口に向かって結局助かったんだけど、

あたしはそのときはじめて自分が迷子になった理由がわかったんだ」


四葉

「理由は何だったの~?」


真智

「理由はね、あたしが撮影に夢中で立ち入り禁止の場所に入って行ってしまってたことが原因だったんだ」


谷先生

「はは~、成る程な!」


真智

「それでね、あたしが鍾乳洞から無事出ると、あたりはもうすっかり暗くなっていて

家に帰ったらあたしの両親の他にお巡りさんとご近所の人達があたしを探してくれてたみたい。

あたしその日の夜、お父さんにこっぴどく怒られちゃいました。


あたしの話はここで終わり」


谷先生

「うぁ~、怖かったよ、真智」


真智

「谷先生の話も怖かったですよ」


四葉

「ねえ、真智ちゃん~?」


真智

「どうしたの? 四葉ちゃん?」


四葉

「もしかして……なんだけど~、

その2つの人影から女の子の声と

大人の男の人の声しなかった~?」


真智

「え~と、あたしそのとき

気が動転してたからはっきりは覚えて無いけど……、

言われてみれば確かそんな声してたような気がするー!!」


四葉

「実はね~、私もね~、

夏休みですごく暑かった日にね~

私とお父さんと二人で、

真智ちゃんが行ったっていう鍾乳洞の近くにある冷たい洞窟に入ったの~。

涼しい場所で食糧調達したかったから、

コウモリの狩りをしていたの~」


真智

「…………」


四葉

「あれ~? 真智ちゃん~?

急に黙って大丈夫~?」


真智

「人喰い地底人はお前か~い!」





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