129話 片付け
「
放心する桀さんの背中を擦る。僕よりかなり大きい背中が今はとても小さくなっていた。
「
桀さんの様子を見ながら雷伯が呟く。潟さんは太刀を放り投げて別の空間に片付けていた。
「
部屋に残っていた薔薇の蔓が灰になっていく。
「あ」
「あ!
駆け寄って灰を掻き分ける。さっき見たときは顔も手も鉄色だったけど、今は服が黒いだけで他は健康的な顔色が見える。潟さんも手を貸してくれて
「
年齢は
「雫さま、恐らく金の王館にいる
「じゃあ、俺様が届けてやる。お前たちは処理があるだろう?後から来いよ」
雷伯が
「雷伯は何で来てくれたんだろう」
僕がポツリと漏らすと少ししてからゴロゴロと雷の音が聞こえた。雷雲が迎えに来たのかもしれない。
「さぁ……王館に戻った際に聞いてみては?雫さま、それよりもやるべきことがございます」
「花茨は廃城になるかもしれません。その前にある程度処理をしておかなければ」
「廃城?」
聞き返したのは僕だった。桀さんは一瞬驚いたように顔を上げたけどすぐに下を向いてしまった。
「当主、
「そんな……じゃあ、
うっかり潟さんに掴みかかってしまいそうだ。別に潟さんが悪いわけじゃないんだけど淡々とした潟さんと僕の気持ちに温度差がある。
「それは木理皇上がお決めになることです。……とは言え木理皇上から理力を奪い続けていた木偶を倒したわけですから何らかの優遇措置はあるかもしれません」
桀さんのことは僕たちにはどうしようもないのか。すべては木理王さまの判断にかかっている。
「雫さま、お、お気遣い恐れ入ります。某は平気です。元々城外の生まれですので野に帰ることも出来ますから」
何故か
「じゃあ、僕たちも片づけをして早く王館に戻りましょう」
そう言った瞬間、桀さんが少し困ったような顔をした。違和感を覚えつつもなくなった壁の残骸を跨いで部屋を後にする。片付けと言っても通り道の邪魔になった倒れた家具や装飾品を端へ避けるだけらしい。後で王館から被害状況の確認に来るので、緊急を要しない物はそのままだそうだ。少し屈んで廊下真ん中に落ちていた絵画に手をかけた。
「雫さま、桀は一緒には行けません」
「え?」
背中越しに声を掛けられてせっかく拾った絵を落としそうになった。廊下の端では桀さんは僕では絶対動かせない大きさの飾り棚をひとりで抱えている。
「桀は
「え、で、でも」
今まで沸ちゃんだって、滾さんだって王館に入っている。あのときは淼さまはお会いにならなかったけど。その前に美蛇の兄は淼さまに会っている。
「低位は謁見が出来ないだけですよね? 入るのは……」
「数日の滞在なら許可は出るでしょうが、火精に到っては十年ほど前から低位の出入りそのものが制限されています」
そういえば焱さんが怪我をしたとき、叔位はここで待ってみたいなこと言われたっけ。でもここに置いていったら桀さんがひとりになってしまう。
「木の王館は木偶の糸を切ったとは言え、木理皇上はまだ回復していないでしょう。いつ譲位が行われるかと木精はピリピリしています。そこへ桀を連れていけますか?」
王館の事情に詳しい潟さんに
上階を整理して一階まで降りると倒した木精がゴロゴロ転がっていた。そのまま放置していたことをすっかり忘れていた。致命傷はなかったみたいだ。
「桀さん、大丈夫ですか?」
「そそそそそそそ」
吃音がひどくなってしまった。悪いことを聞いただろうか。潟さんに軽く背中を小突かれてハッと息を吐き出した。それから深い呼吸をひとつしてゆっくり口を開く。
「某は……とっくの昔にひとりになっていたはずなのです。それを
桀さんの後ろには荒れた城内が見える。とてもじゃないけど温かさなんて感じない。穏やかだった頃の様子を見てみたかった。
「だ、大丈夫ですっ! 某は高原の
桀さんは僕たちに僕たちに深々と頭を下げる。潟さんが黙って桀さんの肩に手を置きゆっくり距離を取った。
「この城を
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